研究課題/領域番号 |
21K06976
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
越後谷 裕介 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90609950)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 筋ジストロフィー / 筋強直性ジストロフィー / 加齢 / 核酸医薬 / アンチセンス核酸 / アンチセンス人工核酸 / CTGリピート / 老化 / モデル動物 |
研究開始時の研究の概要 |
筋強直性ジストロフィー(MyD)は骨格筋のこわばりや筋萎縮を特徴とする進行性の遺伝性疾患である。MyDは毒性RNAの過剰な産生が原因で発症し、症状は成人以降に顕著となり中年期において重篤化する。加齢性に進行するMyDの発症メカニズムの解明は本疾患に対する根治的な治療法の開発に不可欠である。本研究では、MyDモデルマウス症状の加齢変化を解明する。さらに他の筋ジストロフィーにおいて治療薬として認可された実績のあるアンチセンス人工核酸の技術を用いて、MyDの毒性RNAを標的とした治療法の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、変異遺伝子から産生される異常伸長した3塩基繰り返し配列(CUGリピート)を持つ機能獲得型mRNAの核内蓄積が原因で発症する遺伝性筋疾患である。DM1は成人で最も頻度が高く、加齢に伴い筋強直や筋力低下が進行するなど老化と共通する表現型を多く示すが、その発症メカニズムについては不明な点が多い。本研究では、DM1に対するRNA標的アンチセンス核酸療法の開発基盤情報を得ることを目的に、DM1モデルマウスを用いてCTGリピートに障害される骨格筋の加齢病態メカニズムを明らかにする。 本年度は、DM1モデルマウスにおいて、加齢に伴う筋強直症状の検出を可能にする新たな評価法を確立した。握力測定装置を用いた自発的運動による四肢骨格筋の連続握力測定法を考案し、筋強直症状を非侵襲的に定量評価することが可能となった。具体的には、最大握力値では2から24ヶ月齢のいずれの月齢でも野生型マウスと比べて有意な筋力低下が認められない一方、一回目と二回目の握力差を評価する連続握力測定法ではDM1モデルマウスの骨格筋機能の障害が顕在化され、加齢に伴い進行する筋強直症状の再現に成功した。また、CTGリピートに障害される骨格筋病態と諸臓器への影響を反映するバイオマーカーの探索を目的に複数の関連項目の血液生化学検査を実施したところ、加齢に応じて変化する項目は認められず、これまで明らかにしてきた尿中タイチンが異常伸長CTGリピートに影響される骨格筋の損傷マーカーとして最も有力であることが支持された。現在までにDM1モデルマウスにおいて加齢と関連する筋強直関連病態を針筋電図検査、尿中タイチン、および連続握力測定の多角的解析から明らかにしているため、今後は引き続き、加齢と筋強直発症を繋ぐ分子メカニズムの解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異常伸長CTGリピートに影響される骨格筋の分子病態解析については、RNAスプライシング異常および核内RNA病巣の評価方法を確立し、若齢、高齢、および老齢群のDM1モデルマウス(HSA*LRマウス)を用いた解析を進めている。若齢・高齢・老齢群のモデルマウスのサンプリングは概ね予定通りに実施できている。現在までにDM1モデルマウスの骨格筋損傷に対する非侵襲的な病態マーカーとして尿中タイチンを候補分子として見出しているが、24ヶ月齢の老齢群における準備と解析に時間を要しており、尿中タイチンの老化骨格筋に対する反応性についての解析が予定より遅れている。加齢に伴う尿中タイチン量の増加が実際の骨格筋組織の損傷として観察されるかを調べるため病理組織解析を実施したところ、若齢群と比べて高齢群または老齢群において骨格筋損傷の亢進を示す結果が得られたため、現在本結果を結論づけるための実験を実施している。新たなDM1モデルマウスの確立を目的とした戻し交配については、元のFVB/N系統を遺伝的背景に持つHSA*LRマウスの繁殖効率が低下し、オリジナルマウスの次世代を十分に確保すること難しい状況であった。現在、ホモ接合体であるHSA*LRマウスと同じ遺伝的背景を持つ野生型マウスを交配し、ヘテロの産仔を得て再度新たなホモ接合体HSA*LRマウスを導入するなど、本実験と共に繁殖効率の改善対応を計画・実施している。
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今後の研究の推進方策 |
DM1モデルマウス骨格筋における加齢と機能変化を結ぶ分子メカニズムを明らかにするため、老化骨格筋におけるRNAスプライシング異常や核内RNA病巣の解析を中心に実験を進める。DM1モデルマウスを用いて、異常伸長CTGリピートが骨格筋組織の損傷と再生を誘導することを明らかにしているが、他の筋ジストロフィーで観察されるような重度な筋線維の変性が認められていない。しかし、尿中タイチンおよび病理組織解析から加齢と関連する筋線維損傷が起きていることは明らかである。異常伸長CTGリピートが筋線維にどのような損傷をもたらしているのか明らかにするため、電子顕微鏡等を用いて微細な損傷の解析を予定している。また、病原RNAを標的とするアンチセンス核酸を設計し、異なる月齢、すなわち病態が異なる骨格筋に対する治療効果をミオトニー放電および筋線維損傷等の観点から調べる。戻し交配による新たなDM1モデルマウス系統の作製については、引き続き繁殖効率向上の対策を講じながら継続して実施する。
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