研究課題
基盤研究(C)
病原性原虫の寄生胞膜破壊機構を原子レベルで解明するために、トキソプラズマ寄生胞膜の破壊を先導するIRGB6とGBPの高分解能分子構造を構造生物学的手法(X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡構造解析)によって解明し、得られた分子構造からIRGB6とGBPによる寄生胞破壊時の反応機構を明らかにする。その成果は、病原性原虫に対する宿主の感染防御機構の解明を推進するのみならず、新たな原虫感染阻害薬の開発に繋がるものである。
Irgb6はトキソプラズマが形成する寄生胞膜(PVM)の破壊を先導するタンパク質である。Irgb6の結晶構造を明らかにした。得られた分子構造と既知の研究結果からPVM結合部位を予測し、ドッキングシミュレーションと細胞を使った検証実験を行なった結果、Irgb6がPVM特異的リン脂質と結合してPVMに蓄積し、他のPVM破壊に関わるタンパク質を効率よくPVMに導いてトキソプラズマ殺傷に大きく貢献していることを明らかにした。さらに、Irgb6擬似リン酸化変異体の結晶構造を決定し、ドッキングシミュレーションなどから、トキソプラズマがIrgb6からの攻撃を回避するためのIrgb6不活化機構を提唱した。
Irgb6がトキソプラズマ寄生胞膜を認識する機構と(おそらくトキソプラズマによって)Irgb6が不活化される機構を共に分子レベルで解明し、免疫系を理解する上で重要な新しい知見を得られた。これらの研究結果は、寄生虫感染症に対して生体に本来備わる防御機構をうまく利用した新たな治療法の開発につながるものと期待する。
すべて 2024 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Genes Cells.
巻: 29 号: 1 ページ: 17-38
10.1111/gtc.13080
Life Science Alliance
巻: 5 号: 1 ページ: e202101149-e202101149
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