研究課題/領域番号 |
21K07006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 佳司 九州大学, 医学研究院, 講師 (60706216)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 大腸菌 / O抗原・H抗原 / 血清型変換 / Sequence type / 比較ゲノム解析 / 志賀毒素産生性大腸菌 |
研究開始時の研究の概要 |
グラム陰性菌の菌体表層にはリポ多糖や鞭毛タンパク質が存在し、血清型別に利用されている。血清型は菌株の生態学的ニッチやヒト・動物に対する病原性をある程度反映するため、例えば大腸菌では、血清型別が検査法として臨床的・疫学的に広く活用されている。大腸菌の血清型のバリエーションは著しく多様であるが、その理由のひとつとして、水平伝播と組換えによる血清型変換が知られている。 本研究では、10万を超える大腸菌のゲノム情報を活用して、大腸菌で生じた血清型変換の頻度とタイミング、変換を引き起こした組換え領域の多様性、変換が多発する系統のゲノム特性を解析することにより、大腸菌における血清型変換の全貌解明を目指す。
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研究実績の概要 |
大腸菌の血清型別に利用されるO抗原とH抗原は、合成遺伝子領域の組換えによって抗原型が変化すること(血清型変換)が知られている。本研究では、大腸菌における血清型変換の全貌解明を目的として、公共データベースに登録されている大腸菌をClonal complex (CC)ごとに分類し、系統解析と血清型変換の解析を行っている。 令和5年度では、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の主要血清型のひとつである、O103:H2を対象として解析を行なった。系統解析の結果、合計2,701のゲノム情報が利用可能なO103:H2菌株のうち、Sequence type (ST)のST1146 (8株)とST2307 (27株)の菌株がO103:H2の主要STであるST17とは明らかに異なる遺伝系統に属していることが明らかとなった。また、ST1146およびST2307菌株は、1株の志賀毒素(stx)遺伝子陽性株を除いてSTECの主要病原遺伝子を保有していないことから、これらの菌株はSTECではないことが明らかとなった。次に、STを定義する塩基配列を基準として、公共データベースからST17の近縁菌株を収集した。計4,452株の菌株セットには、O抗原が31種類、H抗原が4種類含まれており、各菌株の系統関係と血清型との関連を解析した結果、O103はO128から変換されたこと、その後の進化の過程で様々なO抗原の血清型変換を起こしたことが明らかとなった。また、stx遺伝子の解析から、主要サブタイプであるstx1aおよびstx2aは、O抗原がO103に変化した後で獲得されたことが分かった。以上の結果は、STEC O103:H2の情報基盤の高度化あるいは病原性進化にとって重要な知見であると考えられた。現在、O103:H2菌株の解析に関する研究成果を原著英語論文として報告する準備を進めている。
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