研究課題/領域番号 |
21K07010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 惠三 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90254490)
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研究分担者 |
矢野 寿一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20374944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | メタロ-β-ラクタマーゼ / 基質特異性 / X線結晶構造解析 / β-ラクタマーゼ / X線結晶構造解析 / 複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においては、IMP-1 (IMP-6)とカルバペネム系抗菌薬との複合体の構造を、X線結晶構造解析の手法を用いて決定し、L3ループと基質との相互作用に関する距離情報を原子レベルで決定するとともに、L3ループ内に存在するTrp64をAla, Leu, Glu, Lysに置換した変異型酵素を作成し、実際にこの残基がどのように基質と相互作用して結合に関与しているかを構造学的に明らかにする。また、IMP-1(IMP-6)のL3ループと基質との相互作用をさらに詳しく調べるために、各種β-ラクタム系抗菌薬とのドッキングシミュレーションを行って、L3ループと基質との相互作用について解析する。
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研究実績の概要 |
令和4年度については、令和3年度において行ったIMP-6とIMP-1の基質特異性を決定している要因を探るために行ったX線結晶構造解析の結果を基にして、さらに詳細な解析を行った。 前年度のX線結晶構造解析の結果、IMP-6とIMP-1の基質特異性を決定している要因は、基質結合に関与する、フレキシブルループ(L1)と呼ばれる部分の構造の柔軟性の違いであることを明らかにした。そこで、すでに構造が明らかになっているIMP型β-ラクタマーゼ(IMP-2, IMP-13, IMP-18)に対し、L1部分の柔軟性の指標となる温度因子と、メロペネム、イミペネムに対する基質特異性の指標となる酵素学的性質(Km)とを比較した。すると、L1部分の温度因子の平均値とそれ以外の部分の温度因子の平均値の比が大きい、すなわちL1の柔軟性がより高い酵素ほど、メロペネムに対するKmが低く、特異性が高い傾向があることが明らかになった また、IMP-6にメロペネム、イミペネムを結合させた状態の構造を分子動力学的シミュレーションにより決定し、L1部分と2つの基質との相互作用の違いを解析した。その結果、イミペネムに比べてメロペネムの方が基質のR2側鎖が大きく、L1の動きが大きくないと基質が結合、脱離できないことを推測した。さらに、L1が動く際のヒンジとなるPro68をGlyに置換した変異型酵素を作成し、68位のアミノ酸がより動きやすいことが、L1のフレキシビリティーを拡大することを酵素学的に証明した。 以上の結果をまとめ、Structural insights into the substrate specificity of IMP-6 and IMP-1 metallo-β-lactamases. J. Biochem. 2023;173(1):21-30に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度においては、IMP-1とIMP-6のメロペネム、イミペネムに対する基質特異性の違いをX線結晶構造解析のデータを基に議論することができた。IMP-1とIMP-6の立体構造は、令和3年度にそれぞれ1.94Å、1.70 Å分解能で解析した。ところが、両者の構造には有意な差が見られなかった。そこで本年度は、①基質結合に関与するフレキシブルループ(L1)の柔軟性を表す温度因子の値を、既に構造が解明されているIMP型メタローβ-ラクタマーゼを含めて比較する。②IMP-6に対し、メロペネム、イミペネムが結合した状態の構造を分子動力学的シミュレーションにより推定し、L1と基質との相互座用について考察する。③L1の柔軟性を増大させるアミノ酸置換を導入した変異型酵素を作成し、L1の柔軟性と基質特異性との間に相関関係があることを明らかにする。の3項目の詳細な考察を行った。 以上の結果を、Structural insights into the substrate specificity of IMP-6 and IMP-1 metallo-β-lactamases. J. Biochem. 2023;173(1):21-30として報告することができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までに、IMP-1、IMP-6とイミペネム、メロペネムをはじめとする抗菌薬との複合体のX線結晶構造解析ができていない。令和3年度に、IMP-6とメロペネムとの共結晶が15 mg/mL IMP-6, 40 mM meropenem, 20 % PEG3350, 0.1% n-octyl-glucoside, 0.1 M sodium citrate pH 5.5において析出することを報告したが、令和4年度にさらに結晶化条件を検索した結果、15 ℃において、15 mg/mL IMP-6, 20 mM meropenem, 0.1 M sodium citrate pH 5.0, 25 % polyethylene glycol monomethyl ether 550の条件で構造解析可能な大きさの柱状結晶が得られている。 そこで令和5年度においては、放射光実験施設(SPring-8)を使用してこの複合体結晶のX線回折データを収集し、実際にIMP-6にメロペネムがどのように結合しているのかを明らかにして、前年度のシミュレーションの結果と比較する予定である。また、引き続き、IMP-6とイミペネム、IMP-1とメロペネム、イミペネムとの複合体の共結晶が得られるような結晶化条件の検索を続行する。以上の結果を合わせ、IMP型メタロ-β-ラクタマーゼのk室特異性についての構造学的解明を進める予定である。
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