研究課題
基盤研究(C)
本研究においては、IMP-1 (IMP-6)とカルバペネム系抗菌薬との複合体の構造を、X線結晶構造解析の手法を用いて決定し、L3ループと基質との相互作用に関する距離情報を原子レベルで決定するとともに、L3ループ内に存在するTrp64をAla, Leu, Glu, Lysに置換した変異型酵素を作成し、実際にこの残基がどのように基質と相互作用して結合に関与しているかを構造学的に明らかにする。また、IMP-1(IMP-6)のL3ループと基質との相互作用をさらに詳しく調べるために、各種β-ラクタム系抗菌薬とのドッキングシミュレーションを行って、L3ループと基質との相互作用について解析する。
IMP-6とIMP-1の構造をX線結晶構造解析により明らかにした。さらに、すでに構造が明らかになっている3種のIMP型β-ラクタマーゼに対し、基質結合に関与する、フレキシブルループ(L1)と呼ばれる部分の柔軟性と、酵素学的性質(Km)とを比較した。その結果、L1の柔軟性がより高い酵素ほど、メロペネムに対するKmが低く、基質特異性が高い傾向があることを明らかにした。また、IMP-6にメロペネム、イミペネムを結合させた状態の構造を分子動力学的シミュレーションにより決定し、基質との相互作用の違いを解析した結果、R2側鎖が大きい基質だと、L1の動きが大きくないと結合、脱離できないことを推測した。
本邦で問題となっているカルバペネマーゼ産生菌の多くはIMP-6 メタロ―β―ラクタマーゼを産生する。本酵素はIMP-1と1アミノ酸しか異ならないにもかかわらず、治療に使用されるメロペネムに対する活性が高いことが問題である。本研究の学術的意義は、この基質特異性の違いの原因をX線結晶構造解析により明らかにしたことである。また、分子動力学的シミュレーションにより、基質結合に関与するループの柔軟性が大きくないと、メロペネムのようなR2側鎖の大きな基質に対する活性が低いことを明らかにした。社会的意義は、今後R2側鎖の大きな抗菌薬の開発が、IMP-6産生菌に対して有効である可能性を示唆したことである。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件)
One Health
巻: 16 ページ: 100524-100524
10.1016/j.onehlt.2023.100524
Open Forum Infect Dis
巻: 10 号: 12
10.1093/ofid/ofad634
J Biochem
巻: 173 号: 1 ページ: 21-30
10.1093/jb/mvac080
J Med Microbiol
巻: 71 号: 6 ページ: 0001557-0001557
10.1099/jmm.0.001557
Microbiol Spectr
巻: 6 号: 4
10.1128/spectrum.01204-22
Journal of Infection and Public Health
巻: 14 号: 2 ページ: 271-275
10.1016/j.jiph.2020.11.018
JMM Case Report
巻: 10 号: 10
10.1099/jmmcr.0.005123
Antibiotics
巻: 10 号: 12 ページ: 1537-1537
10.3390/antibiotics10121537
人工血液
巻: 29 ページ: 50-56