研究課題/領域番号 |
21K07018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
尾花 望 筑波大学, 医学医療系, 助教 (00722688)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ウェルシュ菌 / バイオフィルム / 遺伝子発現の不均一性 / 温度応答 / 不均一性 / 細胞外マトリクス / クロストリジウム属細菌 / 転写後制御 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では嫌気性細菌集団の不均一性形成メカニズムの解明を通して、細菌の集団生存戦略機構の理解を目指す。これまでにウェルシュ菌バイオフィルム中で細胞外マトリクス遺伝子発現が空間的に不均一に発現していることを見出した。セルソーターによる細胞分取とRNA-seq解析を実施することにより、バイオフィルム中の不均一性形成メカニズムに迫る。また、嫌気ライブセルイメージング系を駆使して、バイオフィルム中の一細胞解析を実施し、嫌気性細菌バイオフィルム形成機構の解明を目指す。これらの解析を通して、本菌の病原性や環境残存性に集団の役割分担/両賭戦術がどのように寄与するかを検証する。
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研究実績の概要 |
偏性嫌気性細菌であるウェルシュ菌集団中からは、細胞外マトリクス遺伝子の発現がONの亜集団とOFFの亜集団が出現する。それぞれの亜集団をセルソーターによって分取し、RNA-seq解析を実施したところ、細胞外マトリクス遺伝子とその下流の遺伝子群が同時に発現変動していることが明らかになった。下流の遺伝子および各遺伝子間領域の変異株を作製し、各株の細胞外マトリクス遺伝子の発現を解析することによって、細胞外マトリクス遺伝子発現の不均一性形成に関与する配列を同定した。 また先行研究より、培養温度に応答して細胞外マトリクス遺伝子の発現量が変動し、それに伴いバイオフィルム形態が変化することが明らかとなっている。温度は宿主内外を認識する環境シグナルの一つであり、温度に応答した遺伝子発現制御は本菌の病原性の理解にも貢献すると考えられる。そこで、宿主内温度37°Cと宿主外温度25°Cに応答して変動する遺伝子群をRNA-seq解析によって網羅的に探索したところ、25°Cでは宿主成分の利用性に関与する複数の遺伝子群が発現上昇することが明らかとなった。個々の遺伝子に関してレポーター解析およびmRNA安定性解析を実施したところ、これらの遺伝子の多くは転写活性ではなくmRNAの安定性が温度によって変動していることが示された。ウェルシュ菌においては、転写後レベルの遺伝子発現制御機構が温度応答に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜集団形成に関与する遺伝子配列が同定できたため、概ね順調に進展していると考えられる。 また、セルソーターによる亜集団の分取とRNA-seqを組み合わせた方法を応用して、Streptococcus mutansにおける細胞死に関わる新たな因子の同定に成功した。さらに、本研究で確立した嫌気性細菌における蛍光タンパク質レポーター株構築技術を応用し、Clostridioides difficileの抗生物質耐性に関与する遺伝子の発現制御機構を明らかにした。本研究で確立した技術を基盤とすることで、様々な病原細菌の集団形成・病原性の理解に繋がったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きバイオフィルムマトリクス遺伝子発現の不均一性形成のメカニズムの解析とともに、温度に応答して変動する遺伝子群の転写後制御機構についても解析を進める予定である。
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