研究課題
基盤研究(C)
ボツリヌス症の治療薬としては、唯一、ウマ抗毒素製剤が有効であり国内備蓄されているが、血清病等の副作用の問題や製造過程におけるコストの問題がある。これらの問題点を克服するために我々はヒト型抗体製剤に着目し、これまでに血清型B型毒素に対するヒト型抗体の開発に成功している。本手法および知見はヒトに中毒を起こす他の血清型 (AEF型) に対するヒト型抗体作製に応用が可能であり、効率良くヒト型抗体を作製することができると考えられる。本研究ではヒトに中毒を起こす全ての血清型毒素を中和する先進的なヒト型抗体セットの作出を目指す。
ボツリヌス毒素は自然界において最も活性の高い毒素として知られ、血清型A-Gの内A、B、E、Fがヒトにボツリヌス症を引き起こす。本疾患の治療には副作用のない高い活性を持つ中和抗体の開発が求められている。本研究では、B型ボツリヌス毒素を中和するヒト型抗体の機能解析を行い、その中和機構を明らかにした。一方で、A型ボツリヌス毒素特異的ヒト型抗体に関しては、候補となる3種抗体の特異性および結合ドメインの解析を行い、それぞれが異なるエピトープを認識することを明らかにした。さらに、各抗体はBoNT/Aに対して単独で中和活性を示し、3種を組み合わせることにより高い中和効果を示すことを明らかにした。
本研究では、当研究室において開発したB型ボツリヌス毒素を中和するヒト型抗体2種の作用機序を明らかにした。本結果より、少ない抗体数で効率よく毒素を中和することのできる機構の一端が明らかとなり、今後新しい抗体を開発する際の重要な知見となった。さらにA型ボツリヌス毒素を認識するヒト型抗体3種の結合および中和活性を解析し、最も高い中和活性を示す組合せを決定した。本研究成果によりA型B型毒素に対する抗体セット候補が得られた。今後はヒトに中毒を起こすE型F型についても本研究で得られた知見を参考に抗体を開発し、ウマ抗毒素に替わる安全で生産効率の優れたヒト型抗ボツリヌス毒素抗体セットの開発に繋げたい。
すべて 2024 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件)
mBio
巻: 15 号: 3
10.1128/mbio.03106-23
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 号: 3 ページ: 102944-102944
10.1016/j.jbc.2023.102944
J Infect Chemother
巻: 29 号: 12 ページ: 1172-1176
10.1016/j.jiac.2023.08.009
J Infect Chemother.
巻: 28 号: 5 ページ: 651-656
10.1016/j.jiac.2022.01.015
Microbiol Immunol.
巻: 65 号: 10 ページ: 432-437
10.1111/1348-0421.12928