研究課題/領域番号 |
21K07022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
寺島 浩行 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60791788)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | べん毛 / 走化性 / III型分泌装置 / 腸炎ビブリオ / 乳酸 / 病原性 / 粘性表面 / 細菌べん毛 / 感染 / c-di-GMP |
研究開始時の研究の概要 |
腸炎ビブリオ菌は、汚染された魚介類を原因とした食中毒を起こす。病原性の発揮には、III型分泌装置(T3SS2)を適切な場所とタイミングで使用する必要がある。そのため、腸管上皮への移動・定着・細胞形態の変化といった「感染の前提条件」について解き明かす必要がある。本研究では、腸炎ビブリオ菌が環境に応じて自身の形態的特徴・生理活性をどのように変化させ、腸管に定着・感染拡大するのか明らかにし、運動性と病原性を連結させた包括的な感染メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
腸炎ビブリオは、魚介類を汚染しヒトに炎症性の下痢を引き起こす病原細菌である。III型分泌装置が病原性に深く関与しており、これを使って宿主腸管細胞内へ直接病原タンパク質を送り込むことができる。このような感染様式を持つため、病原性の発揮には上皮細胞の表面まで移動することが重要となる。そこで、腸炎ビブリオの運動・生理活性の変化のような「感染の前提条件」について解析し、腸炎ビブリオ感染症の分子メカニズムでの理解を目指す。本年度は、側べん毛の発現を制御するscrAscrBscrCの解析を行った。ScrBおよびScrCのペリプラズムドメインの過剰発現系を作成し、タンパク質精製を行った。多量のタンパク質の精製に成功し、結晶化を試した。ScrBの微結晶を得ることができた。今後、ScrAとシグナル分子の同定を視野に入れ、機能・構造解析を進める。走化性は、好ましい物質・環境へ近づき、好ましくない物質・環境から遠ざかる能力のことである。そのため、走化性が機能し、腸管上皮細胞へ導かれるのではないかと考えられる。そこで、腸内に存在する様々な代謝物や構成要素に対して走化性を示すかどうか解析した。キャピラリーアッセイで評価した結果、乳酸などの代謝産物・中間代謝物などに対して誘引応答あるいは忌避応答を示した。次に、受容体のメチル化修飾アッセイによって、走化性物質と走化性受容体のペアの同定を行った。VP183とピルビン酸・乳酸の組み合わせなど、複数の認識ペアを同定することに成功した。今後さらに詳細な応答プロファイルの一覧を作成し、腸内での腸炎ビブリオの環境応答について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、腸炎ビブリオの環境応答と病原性の包括的な理解を目指している。2年目の研究では、粘性表面で働く側べん毛の発現を制御するシグナル伝達系ScrABCの解析をした。X線結晶構造解析用のタンパク質大量発現系を作成し、高い純度で精製することに成功した。また、ScrBの微結晶を得ており、今後解析を順調に進めていけると考えている。また、腸管上皮細胞の表面まで到達するためには、走化性によって適切な環境へと移動することが重要である。そこで、腸炎ビブリオの走化性の解析を行った。乳酸などのいくつかの腸内代謝物に対して走化性を示すことを明らかにすることができ、また、認識受容体も同定することができた。現在、網羅的な走化性物質ー走化性受容体ペアの同定と機能解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ScrABCシステムにおいて一番の問題は、シグナル分子が未同定である点である。そこで、ScrABCによって応答するレポーターアッセイ系を作成し、培養上清の分画化などを行い候補物質の絞り込みを行う。また、構造解析を進めることで、分子レベルでのシグナル伝達メカニズムの理解を進める。走化性の研究については、これまでに複数の走化性物質やそれを認識する受容体を見出した。しかしながら、受容体が30種類存在するため、リダンダントな物質認識により明確な表現型が見られない場合もある。そのため、還元的方法により個々の受容体の物質認識を明確にし、構成的方法により表現型を再構成することを目指す。これまでの研究をさらに推し進め、網羅的な走化性物質ー走化性受容体ペアの同定を行う。
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