研究課題/領域番号 |
21K07031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
多田 達哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00624644)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | エリザベスキンジア属菌 / 高度多剤耐性菌 / カルバペネム耐性 / アミノグリコシド耐性 / カルバペネマーゼ / rRNAメチラーゼ / 新規薬剤耐性因子 / 新規病原因子 |
研究開始時の研究の概要 |
高度多剤耐性エリザベスキンジア属菌が先進国を中心に開発途上国においても院内感染起因菌として医療安全を脅かすようになってきた。申請者らはネパールおよびミャンマーの医療施設から分離されたエリザベスキンジア属菌の薬剤耐性プロファイルおよびゲノム解析を実施した。その結果、本菌は治療に有効な薬剤すべてに耐性を示す汎薬剤耐性であり、未知の薬剤耐性因子を保有していることが示唆された。さらに、カイコを用いた病原性解析の結果、本菌は極めて強い病原性を有していることが明らかとなった。本研究では、エリザベスキンジア属菌における新規薬剤耐性因子および病原因子を同定し、その機能を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、ネパールおよびミャンマーで分離されたエリザベスキンジア・アノフェリス(EKA)における新規薬剤耐性因子および病原因子を同定し、その機能を明らかにすることを目的とした。 まず、我々はネパールおよびミャンマーの医療施設から分離されたEKAの薬剤耐性プロファイルを決定し、比較的耐性度が低いEKAタイプストレインとの比較ゲノムを実施した。途上国で分離されたEKAは治療に有効な薬剤すべてに耐性を示す汎薬剤耐性であったが、カルバペネム耐性因子以外は不明であり、未知の薬剤耐性因子を保有していることが示唆された。エリザベスキンジア属菌は染色体に3つの内在性β-ラクタマーゼblaB, blaCMEおよびblaGOBを保有する。その内、blaGOBはカルバペネムを分解するカルバペネマーゼとして、blaCMEは基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)として機能しており、カルバペネム系薬を含むすべてのβ-ラクタム系抗菌薬は高度耐性となる。本研究から、メタロ-β-ラクタマーゼとしてカルバペネム耐性に寄与しているblaGOBにおいて、123番目及び133番目のアミノ酸変異がカルバペネムの加水分解活性に関与していることが分かった。また、アミノグリコシド耐性に関しては特定のマクロライド耐性因子がアミノグリコシド耐性にも影響を及ぼしていることが分かった。 病原性に関しては、カイコを用いた病原性解析の結果、本菌は緑膿菌の100倍、大腸菌の1,000万倍という極めて強い病原性を有している。解析の結果、これらの強い病原性は本属菌が保有するtype 6 secretion system及びtype9 secretion systemがカイコ病原性に関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではネパールで分離された高度多剤耐性エリザベスキンギア・アノフェリスにおけるカルバペネム耐性因子とアミノグリコシド耐性因子を同定することができた。さらに、本菌では独自のtype 6 secretion systemとtype9 secretion systemを保有しており、これらが本菌の高い病原性に関与していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はEKAが他の蚊から分離されるのか、蚊から分離されるのであれば蚊からヒトへどのように伝播しヒトで病原性を引き起こすのかを解明する。具体的には①日本由来蚊からエリザベスキンジア属菌を分離し、その特性を解析する。蚊から分離されたエリザベスキンジア属菌の全ゲノム解析及び薬剤感受性試験を実施し、菌種同定・薬剤耐性因子の同定を行う。さらに、GenBankのヒト臨床分離株のゲノムと比較し、分子系統解析を行う。新菌種や新規薬剤耐性因子が同定された場合、その生化学性状を明らかにする。②EKAにおける蚊媒介感染症メカニズム及びEKA病原性を解析する。蚊にEKAを接種させ、免疫を人為的に低下させた敗血症モデルマウスを用いた感染実験を実施する。感染が成立した場合、蚊の中腸及び唾液腺を分離し、蚊におけるEKAの分布を明らかにする。さらに、EKAのヒト病原因子を明にするため、大腸菌を用いたEKAゲノムライブラリーを作製し、ヒト細胞に感染させる。病原性が高い遺伝子をスクリーニングした後、マウス感染実験により病原性を確認する。③EKAにおける蚊の中腸定着因子・増殖因子を同定する。蚊の中腸細胞におけるEKAの定着因子・増殖因子を同定する。予備的解析よりEKAが他の腸内細菌科細菌と比較して蚊の中腸細胞存在下で有意に増殖することが分かっている。同定された因子に関してはEKA標準株を用いた欠損株を作製し、中腸細胞とEKAとの相互作用を確認する。
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