研究課題/領域番号 |
21K07032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
村上 泰介 岐阜医療科学大学, 薬学部, 准教授 (40384135)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 抗菌ペプチド / NETs / LL-37 / 好中球細胞外Traps / 好中球細胞外トラップ |
研究開始時の研究の概要 |
好中球によって放出されるNETsは、DNAの足場にヒストンや抗菌ペプチドなどが絡みついた、殺菌性のある「投網」であり、病原体を絡めとって殺菌するだけでなく、免疫担当細胞の機能を調節すると考えられる。一方、ヒト抗菌ペプチドであるLL-37は好中球NETs産生を誘導することが報告されているが、その機序や、産生されたNETsの敗血症モデルの病態形成への影響などは不明である。本研究では、LL-37による好中球NETs放出に関わる受容体・シグナル伝達機構、さらに、敗血症モデルマウスの好中球のNETs産生能、LL-37応答性を解析することで、LL-37によるNETs調節を応用した敗血症治療法開発を目指す。
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研究実績の概要 |
LL-37 は、マウス骨髄由来好中球に対しNETsの放出を誘導することが報告されているが、そのメカニズムについては不明である。 現在までに、マウス好中球をLL-37で刺激する際に、プリン受容体のP2X7受容体antagonistである oxidized ATP (oATP)、KN-62、ホルミルペプチド受容体FPR2 antagonistであるWRW4で前処理したところ、oATP、KN-62によって強く抑制されること、WRW4によっ て部分的に抑制される傾向にあることを見出した。また、ATP分解酵素であるApyrase処理によってLL-37によるNETs産生が抑制される傾向を見出した)を受けて、LL-37刺激におけるApyrase、oATPがNETs放出に必要なPAD4の発現とHistone-H3のシトルリン化に与える影響などを検討した。PAD4の発現量はPMA刺激により未刺激に比較して低下したが、LL-37刺激群では発現が増強された。H3シトルリン化はNETs放出が観察される3時間では今回は検出できなかった。Apyrase、oATPは今回の条件では、LL-37によるPAD4の発現増加を弱く抑制した。 NETsの放出に関与するシグナル伝達研究にはヒト末梢血好中球やマウス骨髄細胞由来の好中球が使用されることが多い。このため、本年度は動物愛護の観点から、従来反応性に乏しくNETsの産生がほとんど起こらないと言われていたHL-60細胞を分化誘導することで本実験に使用できないか検討を行った。LL-37はPMAと比較して弱いながら、All-transレチノイン酸(ATRA)で好中球用に分化したHL-60からのNETs産生を誘導することができた。このATRA分化HL-60を使用して更に詳細なLL-37によるNETs産生における受容体やシグナル伝達系について解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年、一昨年の研究エフォートが当初予定より十分に確保できなかったことによる遅れを十分に取り戻すに至っていない。また上記研究実績の概要については、得られた結果のいずれも質・例数が不十分であり、したがってやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験について、十分な例数を確保し、検証を行うとともに、当初の研究計画の内容を時間を確保し、着実に進めていく。また、実験を効率的に進めるために動物細胞を使用しない、培養細胞を用いたアッセイ系を確立した。これを用い、研究を推進してゆく予定である。細胞内部のシグナル伝達系の測定系については、概ね本年度までに確立でき、更に詳細に調査を行う予定である。しかし、LL-37が細胞表面で何らかの受容体を介して作用を示すのか、あるいはその両親媒性を用いてダイレクトに作用するのかの詳細はまだ不明である。LL-37の受容体になりうる候補の阻害剤等を用いてどのような作用機序でLL-37が働くかの詳細を検討する予定である。
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