研究課題/領域番号 |
21K07050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
星野 忠次 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (90257220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 抗ウイルス薬 / 計算機スクリーニング / X線結晶構造解析 / 薬物有機合成 / 阻害活性 / 新型コロナウイルス感染症 / 阻害剤 / ウイルスプロテアーゼ / 計算機薬物設計 / 結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルス感染症は、現在、人類にとって大きな脅威となっており、SARS-CoV-2増殖阻害剤の開発は喫緊の課題である。本研究では、理論計算・タンパク質生化学実験・X線結晶構造解析・有機合成・ウイルス感染実験を融合させた研究を遂行して、SARS-CoV-2に有効な抗ウイルス薬を創出する。新規薬物の創出において、構造情報を生かした効率的な研究を行う。既に、SARS-CoV-2の3CLプロテーゼ、PLプロテアーゼ、ポリメラーゼの3つを標的タンパク質として、認可薬ならびに臨床試験薬のデータベースを用いて、計算機スクリーニングを実施している。計算結果より幾つかの候補薬物を選定している。
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研究実績の概要 |
SARS-CoV-2に有効な抗ウイルス薬を創出するために、理論計算・X線結晶構造解析・有機合成・タンパク質レベルの生化学実験を融合させた複合的な研究を遂行した。これまでの研究で高度情報科学技術研究機構(HPCI)の新型コロナウイルス感染症対応臨時課題により、東京大学情報基盤センターのスーパーコンピューター(Oakbridge-CX)を用いて、3CLプロテーゼ、PLプロテアーゼ等の標的タンパク質に対して効果があると期待される薬物を選定し、57種類を購入した。 SARS-CoV-2の3CLプロテーゼならびにPLプロテアーゼを、組み換えタンパク質として発現精製した。精製した酵素タンパク質を用いて、3CLプロテーゼならびにPLプロテアーゼに対する購入薬物の阻害活性を測定した。その結果、3CLプロテーゼに対しては、5種の化合物に明確な阻害効果が認められた。PLプロテアーゼに対しては、4種類の化合物で阻害効果が認められた。3種類の化合物については、3CLプロテーゼおよびPLプロテアーゼの両者に対して阻害活性を示した。 3CLプロテーゼに対する5種の化合物のうち、最も阻害効果の高い化合物(Endovion)については、過去に抗ウイルス活性報告例がない。そこで計算機を活用して、活性を向上させるための薬物設計を進めた。今後、改変設計化合物の有機合成を進める予定である。協力研究者が行ったウイルス活性測定では、Endovionに関しては、顕著な阻害活性は認められなかった。細胞への透過性などを考慮した化合物構造の改変が必要であることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機スクリーニングの結果に基づいて、認可薬あるいは臨床検査薬でSARS-CoV-2の有する酵素タンパク質について、阻害活性を示す薬物が選定できた。この中には既に活性阻害の報告がされているいるものもあり、インシリコ・スクリーニングの精度は、満足できるおのであった。さらにEndovionなど、未だ阻害能が報告されていない薬物もあり、今後の研究において、改良の足掛かりとなる薬物が見いだせた意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
阻害活性のある有望な薬物を同定できたこと、ウイルス酵素の組み換え体を発現精製できたことを受け、阻害薬物と標的タンパク質の結合構造について、X線結晶構造解析を試みる。結合構造予測を計算機で行っている。結合阻害を増強するための化合物改変設計を行っているので、今後は実際に有機合成にて新規の化合物を得る予定である。X線結晶構造解析による結合構造の解明が進んだ段階で、より緻密な薬物設計が可能になる。標的タンパク質の発現精製、酵素活性阻害評価、化合物と標的タンパク質との共結晶化など、研究は十分に進み、有効な阻害薬が創出できる可能性は高い。薬物設計では、化合物の改変設計においては、官能基付加や官能基置換をした修飾化合物など、活性増加の見込める改変分子構造を、数千種類程度、考案する。考案した化合物と標的タンパク質との相互作用を計算機で解析して、改変構造の有効性を評価する。独自ソフトウェア「Orientation」により結合構造と結合親和性を算出する。計算機解析により有望と判断された化合物構造とその誘導体の有機合成を行う。必要に応じて、薬物動態を考慮した官能基修飾を施して、候補化合物の合成を進める。同定された薬物は骨格構造の大規模な変換は避けて、まずは官能基置換などでの活性の向上を目指す。合成化合物について、酵素レベルの測定ならびにウイルス感染実験により、SARS-CoV-2増殖阻害活性の評価を行い、増殖阻害活性測定・酵素阻害活性測定を実施する。測定結果を、化合物の設計と合成に反映させ、候補薬物の最適化を行い、有望なリード化合物を得る予定である。
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