研究課題
基盤研究(C)
関節リウマチなどの炎症性疾患では左右対称性の病変が起こる。その原因の一つとして神経回路の関連が示唆されているが、左右対称性炎症を誘導する神経回路や炎症に関連する分子機構についてはほとんど解明が進んでいない。申請者らは、左右対称性関節炎モデルマウスにおいて、ATPを介した感覚神経回路の活性化が左右対称性炎症を誘導することを明らかにした。本研究では同神経回路の特異マーカーを同定し、その機能を明らかにすることにより、左右対称性炎症の病態発生の分子機構を解明する。また、関節局所における感覚神経回路の活性化を制御することにより、左右対称性炎症性疾患の治療法開発へとつなげる。
関節リウマチなどの炎症性疾患では、遠隔部位に左右対称性、多発性に炎症病変が形成される。私たちは、神経回路の活性化により遠隔部位に左右対称性、多発性に炎症を誘導する分子機構を発見し、「遠隔炎症ゲートウェイ (G) 反射」として報告した (Hasebe et al., J Exp Med 2022)。本G反射では、関節局所での炎症により生じたATPが感覚神経を活性化し、第5腰髄 (L5) 後根神経節 (DRG) を介してL5神経細胞を活性化、L5から下部胸髄のプロエンケファリン陽性介在神経ネットワーク活性化を介し、逆行性に反対側のL4-L6 DRGに伝達し、足関節にて逆行性感覚神経活性化からATPが放出され、滑膜線維芽細胞や血管内皮細胞で、非免疫細胞における炎症誘導機構であるIL-6アンプが活性化し、反対側足関節で関節炎を誘導した。R4年度は、遠隔炎症G反射を誘導する介在神経機能マーカー候補分子 (R3年度の成果)の機能解析を行うために、オプトジェネティクス・ケモジェネティクスの実験系を立ち上げた。Cre依存的にtdTomatoを発現するAi14マウスのL5脊髄に機能マーカー候補遺伝子プロモーター下にCreリコンビナーゼを発現するカセットをAAVにより導入し、tdTomatoが発現することを確認した。また、機能マーカー候補遺伝子プロモーター下にCreリコンビナーゼを発現するカセットとCre依存的に興奮性DREADDを発現するカセットを標的部位に導入し、標的神経細胞の活性化と病態の一部が再現されることを確認した。今後は、AAVと遺伝子改変マウスを組み合わせて、オプトジェネティクス・ケモジェネティクスを行い、遠隔炎症G反射モデルの神経回路の詳細を解明する。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、左右対称性(遠隔)炎症ゲートウェイ反射の神経回路の機能マーカーを同定し、その機能を明らかにすることで、左右対称性(遠隔)炎症の病態発症機構を解明することを目的としている。R3年度にL5脊髄のシングルセルRNAseq解析を行い、介在神経の機能マーカー候補遺伝子を抽出した。R4年度はケモジェネティクスの実験系を立ち上げ、機能解析に着手することができた。オプトジェネティクスに必要な機器の購入やCre依存的に変異型チャネルロドプシンを発現するAi32マウスの分与を受け、オプトジェネティクスを行うための環境を整えた。マーカー遺伝子プロモーター下にCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスも分与、または購入準備中である。左右対称性(遠隔)炎症ゲートウェイ反射により活性化する神経回路を組織透明化法により可視化するためのF759-TRAP2-Ai14マウスも、TRAP2マウスとAi14マウスを掛け合わせて作製し、現在はF759マウスと交配させている段階である。
R3,R4年度で、本研究課題の遂行に必要な実験系を立ち上げることができた。今後は、特に左右対称性(遠隔)炎症ゲートウェイ反射の神経回路の機能マーカー分子が病態に与える影響を解析し、左右対称性(遠隔)炎症ゲートウェイ反射の分子機構を解明する。その結果を受けて、左右対称性(遠隔)炎症性疾患の治療法開発にむけて、関節局所における感覚神経回路の活性化制御法を検討する。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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