研究課題
基盤研究(C)
性別不一致造血細胞移植(特に女性ドナー・男性患者の場合)は、慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)の危険因子とされている。申請者は6種類の抗Y染色体抗原抗体(HY抗体)に着目し、慢性GVHD発症および重症度に相関することを報告した。しかし、多様化する移植治療の中で抗HY免疫応答の獲得や制御のメカニズムは不明である。本研究では、実患者検体を用いて、 (a) HY抗原特異的B細胞同定システムの開発、(b)微量免疫細胞の異性間キメリズム解析法の樹立、(c)HY抗原特異的B細胞のレパトア動態解析を目的とする。同種移植後に獲得されたHY抗原特異的免疫の動態解析を行うことでリスク層別化による先制治療へつなげる。
#1 Y染色体上抗原(HY抗原)の中から、UTY、SMCY、DBY、SRYを選択し、それぞれのX染色体上のcounterpartと比較し、相違部を同定し、20-30アミノ酸配列による同種免疫標的抗原ペプチドを同定。これらペプチドに蛍光色素を修飾したものをカスタム合成した。現在、性別不一致移植検体を用いて、HY抗原ペプチド反応B細胞の検出が可能かについて検討し、現在も症例を蓄積している。#2 同様に、各HLAと、HY抗原ペプチドとの結合親和性予測を行い、HLA-A02およびHLA-A2402におけるUTY、SMCYのペプチドを標的としたテトラマーを作製し、性別不一致移植検体を用いて、HY抗原ペプチド反応T細胞の検出可能かについて検討し、現在も症例を蓄積している。#3 2021年度は性別不一致移植において、腫瘍のY染色体欠損症例では再発リスクが増加し全生存率が不良となることを明らかにした。2022年度は、性別不一致造血細胞移植において、抗胸腺グロブリン抗体(ATG)の使用により、女性ドナー・男性レシピエントの予後への悪影響を克服することができるかを、多数例の症例で検証し、ATG使用により性別一致移植とそん色ない成績が得られることを明らかにした。2023年度は臍帯血移植より非血縁者間性別不一致骨髄移植の成績が良いことが判明した。特にリンパ性腫瘍で明らかであり、腫瘍におけるY染色体抗原の発現違いがあることが示唆された。期間を通じて、マイナー抗原であるY染色体抗原欠失が性別不一致後の抗腫瘍効果の減弱・腫瘍免疫回避に関わる可能性を臨床的に初めて示し、抗HY免疫による移植片対白血病効果の存在を示すことができた。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Cytotherapy
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