研究課題/領域番号 |
21K07077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 啓 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80771196)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 制御性T細胞 / TSDR / DNA脱メチル化 / CRISPRスクリーニング / TCR刺激 |
研究開始時の研究の概要 |
転写因子Foxp3を発現した制御性T細胞(Treg)はさまざまな過剰な免疫応答を抑制することから、治療への応用が期待されている。しかしながら、試験管内で誘導されたTreg(iTreg)はFoxp3発現が不安定であること、さらにその免疫抑制活性の抗原特異性が不明であるという問題が、治療応用の大きな障壁となっている。申請者は、iTregのFoxp3発現の安定性とその抑制活性が抗原刺激の強さ依存的に顕著に増加することを見出した。そこで、本研究は抗原刺激の強さ依存的にFoxp3発現の安定性制御を担う分子を同定し、認識抗原特異的な免疫抑制活性能を獲得したiTregを誘導することを目指す。
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研究実績の概要 |
転写因子Foxp3を発現した制御性T細胞(Treg)は広範な免疫抑制機能を示し、自己免疫寛容と免疫恒常性の維持に必須の役割を担っている。これまでにTregへの運命決定はFoxp3発現の有無ではなく、Foxp3遺伝子座のTreg-specific demethylation region[TSDR]と呼ばれる発現制御領域のDNA脱メチル化により補完されることが分かってきた。しかしながら、現時点でこのエピゲノム形成の分子基盤はほとんど明らかにされていない。そのため、例えばin vitroでナイーブT細胞からT細胞受容体(TCR)刺激とサイトカインTGF-βを与えることで誘導されるiTreg(in vitro-induced Treg)の培養系では、安定的なFoxp3発現を獲得した細胞を誘導することが出来ず、Tregを用いた細胞療法にとって大きな障害となっている。本研究はiTreg培養系において、TSDR脱メチル化に重要な分子をCRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーによる網羅的なスクリーニングで同定することを目指す。そして、同定した標的因子を介して安定的にFoxp3発現を獲得したiTregを誘導し、治療応用への可能性を探索する。 2023年度は、昨年度に引き続きCRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーによるスクリーニングを可能にするiTreg培養条件の確立と、その培養系がTSDR脱メチル化に寄与する因子をスクリーニングする方法として適切かの検証を行った。具体的には、TSDR脱メチル化に寄与する因子のシングルgRNA(sgRNA)を作製し、上記培養系に導入した。結果、sgRNA導入依存的に、再刺激後のFoxp3陰性細胞と陽性細胞の割合が変化した。従って、本培養系を用いてCRISPRスクリーニングが可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、CRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーを用いたスクリーニングを実施可能にするためのiTreg培養条件の確立と、その培養系がTSDR脱メチル化に寄与する因子をスクリーニングする方法として妥当か否かの検証を行った。まずTSDR脱メチル化の負の制御因子と考えられているDNAメチル化酵素(DNMT1)に対するsgRNA を5種類作製し、DNMT1ノックアウト効率を確認したところ、5つのうち2種類で顕著な低下が見られた。次にCas9ノックイン x Foxp3hCD2レポーターマウス由来のナイーブT細胞に、上記2種類のDNMT1 sgRNAをそれぞれレトロウイルス(RV)感染により導入して、iTreg培養を行い、再刺激後のFoxp3陰性細胞とFoxp3陽性細胞の割合をコントロールgRNA導入細胞と比較した。その結果、コントロールと比べて、DNMT1 gRNAでFoxp3陰性細胞に比べてFoxp3陽性細胞の割合が増加した。このことから、DNMT1をノックアウトした細胞でTSDR脱メチル化が促進した結果、再刺激後のFoxp3陽性細胞の割合が増加したことが示唆された。すなわち、再刺激後のhCD2発現の有無によりTSDR脱メチル化をレポート可能であることが確認でき、本培養系を利用してTSDR脱メチル化に重要な因子をCRISPRスクリーニングで探索することが可能になると考えられる。以上の進捗状況から、本研究は概ね当初の計画通り、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
TSDR脱メチル化のCRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーによる全ゲノムスクリーニングが適切に実施される培養系を確立・確認できたため、実際のスクリーニングを行う。スクリーニングの見積もりとしては、Cas9ノックインマウス由来のナイーブCD4+T細胞3x10^7個にsgRNAライブラリー(addgeneより購入済み)をRV感染で導入して、iTreg培養と抗原提示細胞での再刺激を行い、再刺激後のhCD2陽性細胞とhCD2陰性細胞それぞれ1x10^7個を次世代シークエンス解析する。これを3回繰り返すことで、網羅的なスクリーニングを実施する予定である。
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