研究課題/領域番号 |
21K07088
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
木村 彰宏 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 室長 (20533318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | NQO1 / Th17 / 多発性硬化症 / 活性酸素 / 酸化ストレス / IL-10 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請者らは多発性硬化症に大きく関与しているIL-17産生性ヘルパーT細胞(Th17細胞)において抗酸化酵素NAD(P)H quinone dehydrogenase 1(Nqo1) が特異的に誘導され、Nqo1欠損マウスでは多発性硬化症が誘導されないことを世界に先駆けて発見した。本研究ではNqo1によるTh17細胞の分化メカニズムを解明するとともに、Nqo1と多発性硬化症の関係性を明らかにしていく。さらに、Nqo1活性を阻害する低分子化合物による多発性硬化症に対する新規治療方法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本申請者らはこれまでに抗酸化酵素NQO1がTh17細胞において特異的に誘導されていることを発見していた。NQO1欠損Th17細胞ではIL-17産生が低下し、逆にIL-10産生が更新していたことから、NQO1欠損Th17細胞におけるIL-17産生の減弱がIL-10の高産生によるものなのかを調べるためにNQO1/IL-10二重欠損マウスを作成した。NQO1/IL-10二重欠損Th17細胞ではNQO1欠損Th17細胞で見られたIL-17産生の減弱がキャンセルされていた。このことからNQO1はTh17細胞においてIL-10の産生を抑制することで、IL-17産生を促進させていることが判明した。さらに、NQO1欠損マウスではコントロールマウスに対してEAEが顕著に抑制されていたが、NQO1/IL-10二重欠損マウスではこの抑制がキャンセルされEAEの症状が悪化した。さらにEAEを誘導した際、NQO1欠損マウスでは血中IL-17量は低値を示したが、NQO1/IL-10二重欠損マウスでは血中IL-17量は高くなっていた。この結果からin vivoにおいてもNQO1欠損におけるIL-10産生の亢進がIL-17産生を抑制し、EAEを抑制していることが示唆された。 T細胞におけるIL-10産生にはc-Mafが関与しているという報告があることから、NQO1欠損Th17細胞におけるIL-10産生の亢進がc-Mafに依存しているかを検討した。その結果、コントロールに比べNQO1欠損Th17細胞においてc-Mafの発言が高くなっていることが明らかになった。また、NQO1/c-Maf二重欠損Th17細胞ではNQO1欠損Th17細胞にみられたIL-10産生の亢進がキャンセルされたことから、c-MafがNQO1欠損Th17におけるIL-10賛成を促進させていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NQO1欠損T細胞におけるIL-17産生の更新がIL-10産生増加によるものであることが、NQO1/IL-10二重欠損細胞およびIL-10中和抗体の実験により明らかになった。また、活性酸素阻害剤で処理することにより、NQO1欠損T細胞におけるIL-10産生の促進が阻害されたことから、活性酸素がTh17細胞においてIL-10産生に大きく関与していることも判明した。以上のことから、NQO1はTh17細胞分化時に誘導され、活性酸素を除去することで、IL-10産生を抑制し、結果としてIL-17産生の促進に関与していることが判明し、Th17細胞の新たな分化制御機構が明らかになった。また、NQO1欠損Th17細胞においてみられたIL-10産生の促進はc-Mafに依存していることを明らかにした。 in vivoにおいても、NQO1欠損マウスではコントロールマウスに対してEAEが顕著に抑制されていたが、NQO1/IL-10二重欠損マウスではこの抑制がキャンセルされEAEの症状が悪化することが判明した。さらにEAEを誘導した際、NQO1欠損マウスでは血中IL-17量は低値を示したが、NQO1/IL-10二重欠損マウスでは血中IL-17量は高くなっていた。この結果からin vivoにおいてもNQO1欠損におけるIL-10産生の亢進がIL-17産生を抑制し、EAEを抑制していることが示され、自己免疫疾患 とNQO1の関係が明らかにされた。これらの結果成果はPLoS ONEに発表した(PLoS One. 17(7):e0272090, 2022. doi: 10.1371/journal.pone.0272090)。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞におけるNqo1の役割とMSとの関連を明らかにするために、T細胞、B細胞、NK-T細胞を欠損するRAG-2 KOマウスにNqo1欠損T細胞を移入し、WTのT細胞を移入したマウス群とともにEAEを誘導し、クリニカルスコアや抹消Th17細胞の割合、血中IL-17濃度を比較することで、T細胞固有のNqo1とEAE誘導との関連を明らかにする。Rag2 KOマウスにWT、Nqo1欠損T細胞を移入してEAEを誘導した際に、NACをさらに投与することでEAEに対する酸化ストレスの影響を調べる。さらに、T細胞特異的にNqo1を欠損させたcKOマウスを用いてEAEを誘導しコントロール群と比較することで、T細胞由来Nqo1とそれにより制御されているIL-10がEAEにどのように関与しているのかを明らかにする。 また、NQO1阻害剤がEAEにおいて治療効果を示すかを検討していく。EAEを誘導した際にNQO1阻害剤を投与し、治療効果を確認していくとともに、中枢神経系などの病変部位におけるTh17細胞の浸潤などを調べることで、治療効果と作用機序を明らかにしていく。
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