研究課題/領域番号 |
21K07090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
栗山 正 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30398226)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | メカノタクシス / 線維化 |
研究開始時の研究の概要 |
一般にがんはより硬い足場を好むと言われている。胃・肝臓・肺がんなどではがん周辺の間質が増加し線維化が起きているのが観察される。間質性肺炎が肺がんの発生母地になるなど発がんとも関係が深いが、線維化の亢進とがんの転移にも関係がある事が示唆されている。がんにとって周辺が硬くなる事にどのようなメリットがあるのだろうか? ①硬い基質を好む細胞がより転移しやすいのか?②間質の変化とがんの変化はどちらが先に起こるのか?さらに③がんが好まない間質に置かれた時、生体内から排除する事は可能か?について細胞骨格が作る力である細胞内張力を測定する事によって明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究は一般に広く知られるがんが硬い組織を好む、という事象をがん細胞から見て周辺組織の硬化を細胞自身が感知しているのかどうかを検証する研究である。前年度までにヒト乳がん細胞高転移株から作成したFRETテンションセンサー細胞を使って実験を進めていたが、前年に引き続き発現するセンサー分子の不安定性が問題になっていた。また細胞を固定する場合と異なり、生体内の転移がん細胞から得られるシグナル強度に問題があったため今年度にプローブを再設計し、ベクターシステムを刷新した。FRETセンサーに6-8pN(ピコニュートン)と9-11pNの力で伸展するユニットを予てから使っていたアクチニンテンションセンサー分子に挿入して作成した。EGFPとmCherryタンパク間のFRETの代わりにYPetとmCherryタンパクというより近接した波長のタンパクを用いる事によりin vitroのFRET効率が2~3倍、生体内でも十分な感度を示した。ゲノム編集によるインサートよりもエピソーム型ベクターを用いる事で比較的大きなテンションセンサーの発現量が安定して高発現になった事も伴って測定システムは大幅に改善された。これまで明らかになっていなかったがテンションセンサーの減衰曲線の書ける範囲が明確に決まっており、測定可能レンジを超えると予想しない挙動を見せる。2つないし3つの測定範囲の正確な設定が必要である。またメカノセンシタイザー分子候補である遺伝子Xもノックアウト、ノックダウンにより予想に近い挙動を見せており、測定可能範囲からの逸脱を以てセンシタイズ機能を示せないかを模索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲノム編集によるセンサー分子の挿入は結局あまりうまく行かなかった。やはりプロモーターの干渉を避ける配列を挿入する必要があった。その代わりにエピソーム型ベクターを用いて染色体に組み込まれないように複製されるシステムを用いたところ、発現が安定した。測定に使っていたメカノゲルは研究協力者からも得られるのだが、頻度やクオリティにばらつきがあるので市販の製品で補完していた。しかしながらコロナ禍を経てアメリカの企業が撤退してしまい、アジアでは同じ製品を手に入れる事が出来なくなった。このため新たに自作のメカノゲルを作成するシステムを導入する必要が生じた。プローブを再設計した事もあり、これまでのデータをアップデートする必要があるので時間がかかると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
技術的トラブルはかなり克服できたのでデータを集める事に専念する。何度も作成と修正を繰り返した事で時間を取ってしまい、発展的展開に到達する事は難しい。また諸般の理由から研究材料を自作する事になったので、それに合わせ購入するものも増えた。全般的な試薬・機器の価格の高騰から、次に発展させるための網羅的遺伝子解析などの予算が確保できない。まとめて論文を作成することに集中する。
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