研究課題/領域番号 |
21K07103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 雅達 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (40404537)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | がん微小環境 / TGFシグナリング / 浸潤性小葉癌 / RNAseq / 好中球 |
研究開始時の研究の概要 |
ANKRD35は浸潤性小葉癌患者において高発現群が予後良好を示す機能未知の遺伝子として同定された。先行実験ではANKRD35を強制発現する乳がん細胞はマウス移植モデルで増殖抑制を示し、その腫瘍組織ではTGFβ1の発現が減少し、抗腫瘍活性を示すI型好中球(N1)の浸潤が確認された。本研究はANKRD35の機能解析と腫瘍移植モデルにおけるANKRD35発現株の腫瘍抑制メカニズムについて解析を行なう。さらに腫瘍においてANKRD35-TGFβ1シグナリングを制御することで、N1優位のがん微小環境を誘導し、免疫チェックポイント阻害療法などの治療成績が向上するかどうかをマウス移植モデルを用いて検討する。
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研究実績の概要 |
がん微小環境は腫瘍細胞が増殖・転移する上で重要な運命決定を担う免疫応答や間質を構成する細胞や液性因子からなり、それらはがん治療の標的となる性質を有している。ANKRD35は浸潤性小葉癌患者において高発現群が予後良好を示す機能未知の遺伝子として同定された。先行実験において、ANKRD35を強制発現する乳がん細胞はマウス移植モデルで増殖抑制を示し、その腫瘍組織ではTGFB1の発現が減少し、抗腫瘍活性を示すI型好中球(N1)の浸潤が確認された。本研究はANKRD35発現株においてなぜTGFβ1の発現が減少したのか、そのメカニズムついては未だ不明であることから、特にTGFβ1の発現抑制に注目してANKRD35の機能解析と腫瘍移植モデルにおけるANKRD35発現株の腫瘍抑制メカニズムについて詳細な解析を行なうことを目的とする。さらに応用研究として、腫瘍においてANKRD35- TGFB1シグナリングを制御することで、N1優位のがん微小環境を誘導し、免疫チェックポイント阻害療法などの治療成績が向上するかどうかをマウス移植モデルを用いて検討することを目的としている。 本年度においてはANKRD35発現株のRNAseq解析からTGFβ1の発現抑制に注目して様々な培養条件下においてANKRD35発現株におけるTGFβ1の発現低下メカニズムを検討した。また先に得られたANKRD35発現株のRNAseq解析から、TGF関連分子のへ発現が減少することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、ANKRD35発現株のマウス移植片においてTGFB1の発現が抑制されたことについて、培養条件におけるANKRD35発現株のTGFB1の発現抑制機構について検討を重ねているが、通常培養ではANKRD35発現株にTGFB1の発現が抑制されないことから、スフェア培養や栄養飢餓、または低酸素条件下の培養サンプルからTGFB1の発現に変化が生じるかどうかを検討した。 しかしながら用いた細胞株やANKRD35のバリアント(Truncation Type:ANKT 、Full length:ANKFとする)によっては半分程度までのTGFB1の発現抑制は認められたが、移植片に見られたほど顕著な差は認められなかった。 また細胞増殖抑制についてアポトーシス経路、ERストレス経路、フェロトーシス経路、パラトーシス経路誘導条件下に関連する因子の発現動態を解析したが、どれもANKRD35の発現に影響される因子は見られなかった。 一方で、コントロールベクターを導入した株(ANKC)に対してANKT やANKFのRNAseq解析からTGFB1誘導性のCDH19(NCad)やVIMENTINなどEMT促進因子の発現が減少していた。さらにRNAseq解析からGSEAを行った結果、HLA類やRPL関連遺伝子の発現が抑制されていた。これらのEMT促進因子やHLA類やRPL関連遺伝子に共通する転写因子をCHIPAtrasなどを用いて絞り込んだ結果、30個程度の転写因子に関連性を見い出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に作製したドキシサイクリン誘導発現株を用いた移植実験が動物実験施設の縮小や当分野での人員確保が困難であったため実施できていない。来年度に向けてANKTおよびANKFの発現誘導後に腫瘍縮小を示せば、その過程におけるサンプリングを行い、TGFB1の発現調節のメカニズムに関して解析を行う。 また、ANKRD35発現株に見られたEMT促進因子やHLA類やRPL関連遺伝子の発現変化に共通する転写因子の制御機構を解明する予定である。
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