• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

液-液相分離を介したがん悪性化におけるLATSキナーゼの新たな機能

研究課題

研究課題/領域番号 21K07122
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分50010:腫瘍生物学関連
研究機関大阪大学

研究代表者

藪田 紀一  大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (10343245)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードがん悪性化 / 液-液相分離 / LATS / キナーゼ / Hippo経路 / 核小体 / DNA損傷 / リン酸化 / LATSキナーゼ
研究開始時の研究の概要

高分子の相分離凝集で起こる液-液相分離(LLPS)現象は、中心体や核小体などを含む非膜性細胞内小器官の形成と維持やヘテロクロマチンの形成などに重要な役割を担っており、LLPSの異常ががんを含む複数の疾病発症に関連することからその重要性が注目されている。特に最近、我々はLATS2キナーゼのリン酸化標的として核小体構成因子PHF6を新たに同定したので、本研究ではLATS1/2やそれらの標的因子群が中心体や核小体を含む非膜性細胞内小器官に集積するメカニズムとLLPSの関係を明らかにし、がん悪性化におけるLLPSの新たな機能を解明することを目指す。

研究実績の概要

がんを含む複数の疾病発症に関連する液-液相分離(LLPS)現象は、高分子の相分離凝集で起こるとされ、核小体や核スペックルなどの非膜性の細胞内小器官および構造体(MLOs: membraneless organelles)の形成や維持などに重要な役割を担うと考えられている。我々はこれまでに、核小体構成因子であるPHF6がLATS2キナーゼの新規のリン酸化標的であることを見出した。本研究では、UV照射におけるDNA損傷後にLATS2やPHF6を含むリン酸化標的タンパク質群が核小体などのMLOsに集積する生理的意義とLLPSとの関係を明らかにし、がん悪性化におけるLLPSの新たな機能を解明することを目指す。本年度もほぼ計画どおり順調に実験が進み以下の研究成果を得た。(1)PHF6は核小体におけるrRNA合成(リボソームRNAの転写)に関与することが報告されているので、ゲノム編集によりLATS2を欠損させた子宮頸がん由来HeLa-S3細胞株(LATS2-KO)においてFUrdの取り込み実験を行ったところ、核小体および核質におけるFUrdの取り込みは阻害された。この結果は、LATS2の機能阻害がrRNAやmRNAの転写を抑制することを示唆している。(2)LATS2の全長あるいは断片化した部分欠失変異体を蛍光タンパク質GFPとの融合タンパク質としてHeLa-S3細胞に発現させたところ、全長LATS2は細胞質で無数の点状の局在を示す一方で、部分欠失変異体は核内で点状に分布し核スペックルと共局在した。これらの点状局在は、LLPS阻害剤で消失した。これらの結果は、LLPS現象の影響下でLATS2がPHF6の転写抑制能を制御している可能性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LATS2はHippoシグナル経路で働く中心的なキナーゼの一つであるが、我々はこれまでにLATS2が細胞周期チェックポイントにおいても機能していることを幾つか報告してきた。その過程において、UV照射に応答して核内で特異的にリン酸化されたLATS2、PHF6、p21/CDKN1の3者がいずれも部分的に核スペックルに局在することを見出した。また、PHF6は核小体におけるrRNAの転写抑制に寄与しているとされるので、FUrd取り込み実験を行いLATS2がPHF6を制御してrRNAおよびmRNAの転写抑制を制御している可能性を見出した。一方で、UV照射後のDNA損傷に応答してLATS2が細胞質でリン酸化したp21は自己分解が促進し、caspase依存的なアポトーシスを誘導することを報告しているので(Suzuki et al., 2013)、核内でリン酸化されたp21と核スペックルの関係も明らかにして成果をまとめていく。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後は、本研究の目的を達成して、これまでの成果をまとめていくために、不足している実験を追加することを含めて研究計画どおり推進する。がん悪性化におけるLLPSの新たな機能を解明するために、LATS1/2キナーゼあるいはそのリン酸化標的因子群(PHF6やp21)が核小体や核スペックルのような非膜性細胞内小器官(MLOs)に集積する分子メカニズムとその生理的意義を明らかにしていく。具体的には、HeLa細胞以外のがん細胞株を使用した実験やp21の分解が誘導するアポトーシスへの影響などを調べる。また、本研究の成果をまとめた論文を学術専門誌に投稿する予定であるが、その審査後の改訂(リバイス)のために要求されるであろう必要不可欠な追加実験を行っていく。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] LATS kinases and SLUG regulate the transition to advanced stage in aggressive oral cancer cells2022

    • 著者名/発表者名
      Fujibayashi Emi、Mukai Satomi、Torigata Kosuke、Ando Yumi、Uchihashi Toshihiro、Nozaki Masami、Tanaka Susumu、Okada Masato、Kogo Mikihiko、Nojima Hiroshi、Yabuta Norikazu
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 号: 1 ページ: 12363-12363

    • DOI

      10.1038/s41598-022-16667-5

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Hippo経路の破綻した悪性中皮腫におけるO-GlcNAc修飾異常を介した腫瘍進展メカニズムの解明2021

    • 著者名/発表者名
      向井 智美, 佐藤 龍洋, 三城 恵美, 青木 正博, 藪田 紀一, 関戸 好孝
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi