研究課題/領域番号 |
21K07130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
北嶋 洋志 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90777971)
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研究分担者 |
鈴木 拓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 胃がん / long non-coding RNA / ストレス顆粒 / アポトーシス / lncRNA / 長鎖non-coding RNA / 免疫応答 |
研究開始時の研究の概要 |
長鎖non-coding RNAはタンパク質をコードしない200塩基以上の長さを持つnon-coding RNAであり、近年がんなどの疾患との関わり数多く報告される。申請者は慢性胃炎・胃がんに関連する長鎖non-coding RNAを同定し、さらにストレス顆粒様構造の形成を促すことを見出した。本研究の概要は、新規長鎖non-coding RNAによるストレス顆粒を介した発がんおよび免疫応答の分子メカニズムを明らかにすることであり、炎症と発がんをつなぐlncRNAの分子機能に基づく予防・診断・治療へ応用することを目指している。
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研究実績の概要 |
胃がんにおけるTM4SF1AS1の作用機序を解明するために、RNA pull-down-MSやChIRP-MSによる網羅的な相互作用因子の同定を行い、結果的にTM4SF1AS1がストレス顆粒の形成促進に関与することを見出した。相互作用因子の一つRACK1は、MTK1とp38/JNKの活性化を介してアポトーシスを誘導する一方、ストレス顆粒内に隔離されアポトーシスが抑制される。申請者は、TM4SF1AS1がRACK1の顆粒内への隔離を促進し、ストレスのない状態で胃がん細胞のアポトーシスを抑制する可能性を示した。一方でTM4SF1AS1と相互作用するPur-αとYBX1にも着目した。Pur-αとYBX1はTM4SF1-AS1とストレス顆粒に共局在し、TM4SF1-AS1低発現の胃がん細胞株SNU638ではPur-αまたはYBX1の過剰発現は顆粒構造体を形成するものの、ストレス顆粒ではないことが確認された。Pur-αまたはYBX1ノックダウンはTM4SF1-AS1の過剰発現によるストレス顆粒形成を減弱し、またp38のリン酸化やアポトーシスの亢進、TM4SF1-AS1依存的なcell viabilityの抑制を示した。以上から、Pur-αとYBX1はTM4SF1AS1と協調的にストレス顆粒形成に関与すると考えられた。 先のChRIP RNA-seqで得たTM4SF1-AS1と結合しうるmRNAにアポトーシス促進因子Bim (遺伝子名BCL2L11)があり、RIPアッセイによりPur-αやYBX1、ストレス顆粒形成因子G3BP1/2と結合することが示唆された。ウェスタンブロットによりTM4SF1-AS1の過剰発現がBimの発現量を減弱することが示されたため、TM4SF1-AS1はPur-αやYBX1と共にストレス顆粒を介してBimを翻訳抑制し、アポトーシスを抑制することが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TM4SF1AS1の新たな相互作用因子としてPur-αとYBX1を同定し、TM4SF1AS1と協調的にストレス顆粒形成の促進やアポトーシスの抑制に関与することを明らかにした。TM4SF1AS1がアポトーシス促進因子BimのmRNAを標的とし翻訳抑制をするという、RACK1に対する機能抑制とは異なる方法でアポトーシスの抑制に寄与する可能性も示唆された。またTM4SF1AS1によるストレス顆粒の形成促進とアポトーシスの抑制に関する論文は、2023年6月に国際誌にアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
胃がん細胞におけるTM4SF1AS1によるストレス顆粒の機能を、in vivoで検証する。shRNAによるTM4SF1AS1の安定ノックダウン胃がん細胞株などを用いて、TM4SF1AS1ノックダウンによるアポトーシスやストレス顆粒への影響をマウスゼノグラフトモデルで評価する予定である。また、TM4SF1-AS1やPur-αやYBX1によるBimの翻訳抑制の詳細なメカニズムの解析を試みる。
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