研究課題/領域番号 |
21K07150
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
慶田城 迅 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (00754558)
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研究期間 (年度) |
2022-11-15 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ネクチン-4 / ErbB2 / p95-ErbB2 / SOX2 / がん / 血清 / ネクチンー4 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、日本では二人に一人はがんになるおそれがあり、がんの発症や、がん細胞の生存・増殖や転移の仕組みの解明は非常に重要である。研究代表者は、血中を循環しているがん細胞が、通常とは異なる仕組みで生存して増殖している可能性を見出した。さらに、この機構には乳がんの原因遺伝子ErbB2の一種であるp95-ErbB2、細胞同士の結合に機能するネクチン-4、がん細胞の生存や増殖に深く関わるSOX2が関与する可能性も見出した。これらを調べることで、特に血中におけるがん細胞の生存・増殖や転移の仕組みの解明を目指す。その仕組みを解明することは、新たな抗がん剤の開発に役立つと期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、がんの発症と転移の過程におけるがん細胞の増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構を解明することを目的とし、細胞接着分子ネクチン-4、成長因子受容体ErbB2、ErbB2のバリアントであるp95-ErbB2この機構に果たす機能の解析を行い、本年度は以下の結果が得られた。 (1) がん細胞とその幹細胞の増殖の停止・再開のスイッチ機構: ネクチン-4とp95-ErbB2を共発現させたT47D細胞特異的に血清が無い条件下の培養で多層化がみられ、足場非依存的な細胞増殖が亢進した。この細胞でSOX2をノックダウンすると、多層化が抑制された。一方で、血清の有無に関わらず、SOX2、ネクチン-4、ErbB2、p95-ErbB2の発現量に変化はなかった。これらの結果から、SOX2が足場非依存的な細胞増殖に重要であることが示唆された。 (2) がん細胞とその幹細胞の新規シグナル伝達機構: ネクチン-4とp95-ErbB2を共発現させたT47D細胞を用い、SOX2の発現に関与する因子を特定する目的でRNAシークエンスを行った。その結果、がん細胞において抗酸化ストレスに機能するイオンチャネルTRPA1と、多くのがん種で発現が亢進している転写因子FOXR2の発現がタンパク質レベルで上昇していた。また、SOX2ノックダウンでFOXR2の発現は変化しなかった。この結果から、SOX2はFOXR2の上流因子ではないことが明らかとなった。 (3) がん細胞とその幹細胞の足場非依存的な細胞増殖における血清因子の作用機構: ネクチン-4とp95-ErbB2を共発現させたT47D細胞では血清が無い状態では細胞が多層化し、足場非依存的な細胞増殖が亢進した一方、血清が有る状態では細胞は多層化しなかった。これらの結果から、血清中にある成分が多層化を抑制し、足場非依存的な細胞増殖を阻害する効果があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展している。細胞接着分子と膜受容体が制御するがん細胞の増殖と停止、その再開のスイッチ機構の解析を検討していく上で、当初の計画から想定される範囲において十分な研究結果が得られており、新規性や重要性も担保されている状態であることから、上記の判断に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、細胞接着分子と膜受容体が制御するがん細胞の増殖と停止、その再開のスイッチ機構の解析を遂行する。 (1)がん細胞とその幹細胞の増殖の停止・再開のスイッチ機構: SOX2と同様に、足場非依存的な細胞増殖を制御する因子の探索を進める。種々の因子の阻害剤を用い、この表現型において重要な機能をしている因子を同定する。また可能であればそれらがどのような機構で足場非依存的な細胞増殖を制御し、増殖の停止・再開のスイッチ機構に関与するか検討する。 (2)がん細胞とその幹細胞の新規シグナル伝達機構: RNAシークエンスにより同定した、ネクチン-4とp95-ErbB2を共発現させたT47D細胞特異的に発現上昇しているTRPA1とFOXR2をノックダウンして、SOX2の発現や足場非依存的な細胞増殖がどのような影響を受けるか検討する。また、可能であればTRPA1とFOXR2を制御するシグナル伝達経路の特定を試みる。 (3)がん細胞とその幹細胞の足場非依存的な細胞増殖における血清因子の作用機構: 血清が細胞の多層化を抑制したことから、血清中にある多層化抑制成分の同定を行う。血清中には様々な成分が存在するが、脂質に着目した解析は多くはないため、新規性の観点からまずは脂質を血清から精製して検討を行う。
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