研究課題/領域番号 |
21K07157
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
出口 敦子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (10422932)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肝転移 / がん微小環境 / S100A8 |
研究開始時の研究の概要 |
がんによる死亡の主な原因は、遠隔臓器の転移によるものと考えられている。そのため、転移性がんに対する治療が臨床上重要な課題となっているが、現在までのところ、薬剤耐性の獲得の課題も含め、転移性がんに対する有効な化学療法等は存在せず、転移性がんに対する治療薬の開発が望まれている。本研究では、新規治療法の確立と転移予測バイオマーカーの樹立を目指し、これまでに同定した転移前微小環境形成因子を誘導するがん細胞由来液性因子の特定と転移前肝微小環境形成や転移前微小環境形成因子による転移幹細胞維持の分子機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
がんの転移の過程において、がん周辺部に存在するがん微小環境と類似した環境、転移前微小環境が転移先臓器に形成され、転移を促進する可能性が示唆されている。これまでに研究代表者は、肝転移における転移前微小環境形成に関わる因子として同定した転移前肝微小環境形成因子によって肝転移促進することを見いだしてきた。本研究は、転移前微小環境形成因子が腫瘍細胞自身にも作用し、肝転移能を獲得するという仮説を検証することを目的として、転移先に依存しない転移先微小環境形成因子であるS100A8に対する阻害薬の開発と、転移前肝微小環境形成因子欠失マウスを用いた転移前微小環境形成因子による肝転移促進の分子機序の解明を目指し、当該年度中に下記1.~2.の研究成果を得た。 1. S100A8多価型阻害ペプチドによる抗腫瘍活性---S100A8多価型阻害ペプチドはS100A8とその受容体であるToll様受容体4(TLR4)との結合に競合的に抑制する多価型のペプチドであり、S100A8によって誘導されるインターロイキン8やVEGFの発現を抑制する。大腸がんSW480細胞を皮下移植したXenograftモデルにおいて、S100A8多価型阻害ペプチドは抗VEGF抗体との併用投与により抗腫瘍作用を増強することが示唆された。また、Syngeneicマウスモデルを用いてペプチド単剤の腫瘍抑制作用に加えて、抗PD-1抗体併用により抗腫瘍活性を増強することを見いだした。 2. 転移前肝微小環境形成因子による肝転移---前年度までに、転移前微小環境形成因子の刺激によりがん細胞において誘導される遺伝子群を同定した。それぞれの候補因子に対し、shRNAにより候補因子を人工的に枯渇した細胞を樹立し、肝転移能に対する作用を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに開発したS100A8多価型阻害ペプチドの投与は、担がんマウスの皮下腫瘍内の血管新生を抑制した。S100A8多価型阻害ペプチドによる抗腫瘍活性には、血管新生抑制と腫瘍血管正常化が関与していることを示唆した(論文受理済み)。
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今後の研究の推進方策 |
肝特異的転移前微小環境形成因子トランスジェニックマウスを用いた解析では、2種類のがん細胞の移植により、野生型と比較して肝転移を促進することを見いだしている。さらに、前年度中に得られたシングルセル解析を引き続き検証する。
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