研究課題/領域番号 |
21K07163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
小幡 裕希 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20609408)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 消化管間質細胞腫 (GIST) / KITチロシンキナーゼ / ゴルジ体 / PKD2 / マスト細胞白血病 (MCL) / 急性骨髄性白血病 (AML) / FLT3チロシンキナーゼ / 受容体型チロシンキナーゼ / がん / 分子標的薬 / オルガネラ / 細胞内トラフィック / 異常局在 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、申請者は、血液がんや消化管間質細胞腫において、受容体チロシンキナーゼ (RTK) であるKITの活性化変異体が、エンドソームやゴルジ領域に異常局在し、そこをシグナルの場とすることを発見した。現在、他の変異RTKもオルガネラに停留することを確認し、その原因マシナリーの同定を試みており、ゴルジ潜伏については、小胞輸送のキー分子群の重要性を予想させるデータを得ている。本課題では、RTKのゴルジ潜伏機構の解明とその理解に基づく新規治療戦術の開発を目的に、「① RTK-キー分子群の相互作用の解析」, 「② 分子機構 (エフェクター) の解明」, 「③ 停留解除を機序とした治療薬の開発」 を試みる。
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研究実績の概要 |
複数種の化合物スクリーニングによって、消化管間質細胞腫 (gastrointestinal stromal tumor: GIST) のKIT変異体のゴルジ領域停留が、protein kinase Dに対するインヒビター (CRT0066101: CRT) で有意に解除されることを見出した。さらに、ノックダウンにより、哺乳細胞で確認されているPKD1-3のうち、PKD2のノックダウンのみが、CRT処理のフェノコピーとなることを明らかにした。即ち、GISTのKIT変異体のゴルジ停留は、PKD2の活性化が原因であることを見出した。ゴルジ領域において、KIT変異体は、PKD2およびエフェクター (PI4KIIIB等) を活性化し、自身を停留させていることを示唆するデータを得た。見出した分子群をインヒビターやノックダウンで機能阻害すると、KIT変異体はゴルジ領域からリリースされ、シグナル発信することができなくなることを示唆するデータを得た。さらに、ゴルジ領域からリリースされたKITは、細胞膜を経由して速やかにリソソーム内腔に移行し、分解されることを明らかにした。マスト細胞白血病 (mast cell leukemia: MCL) や急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia: AML) のKIT変異体は、ゴルジ体に停留せず、エンドソーム-リソソーム系に局在するが、それらの細胞では、PKD2とKITの機能的な相互作用および物理的結合は認められなかった。さらに、PKD2の阻害は、AMLのFLT3変異体のゴルジ停留には影響しないことが確認され、即ち、KITとPKD2の機能的相互作用は、GISTに特徴的であることが示唆される。今後、GISTのKITとPKD2の仲介分子の解析およびPKD2エフェクターの結合の詳細を明らかにし、それらがMCL, AMLではKITと相互作用しない理由についての解析に取り組みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GISTのKIT変異体のゴルジ停留の原因分子の候補としてPKD2を見出し、機能阻害実験および共免疫沈降実験を実施し、確証的なものとした。さらに、フェノコピー探索により、KITとPKD2の仲介分子, エフェクター分子群も見出しつつある。血液がんのレセプターキナーゼ変異体の局在およびシグナルにPKD2が関与しないことは意外だったが、GIST選択的な分子メカニズムの一つを明らかにできたのは意義深いものであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
GISTのKIT変異体とPKD2の仲介分子の解析およびPKD2エフェクターの結合の詳細を明らかにする。また、分子標的薬耐性GISTにおける解析を進める。さらに、それらがMCL, AMLでは変異レセプターキナーゼと相互作用しない理由についての解析に取り組みたい。
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