研究課題/領域番号 |
21K07199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
大多 茂樹 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (20365406)
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研究分担者 |
三沢 彩 国際医療福祉大学, 基礎医学研究センター, 講師 (20598453)
岩田 卓 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30296652)
河上 裕 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害剤 / シングルセル解析 / Tステムセルメモリー細胞 / 腫瘍浸潤T細胞 / CAR-T / CD8陽性T細胞 / Tステムメモリー細胞 / Tステムセル / NELL2 / 腫瘍免疫 / 免疫チェックポイント阻害薬 |
研究開始時の研究の概要 |
末梢血CD8陽性T細胞中に存在するTscm(T stem cell memory)様細胞集団において高発現する分子として同定されたNELL2が、免疫学的に如何なる役割を果たしているのかを解明する。また、免疫チェックポイント阻害剤の奏効性とNELL2の分子機能がどのような関連性を有しているのかを解明する。最終的には、NELL2の発現をTIL(Tumor infiltrating cells)において人為的に操作することにより、TIL療法細胞製剤の改良を目指す。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤応答性細胞集団に発現する新規機能分子の解析を目的として、悪性黒色腫および肺がんにおいて、抗PD-1抗体投与患者の末梢血サンプルを用いて、シングルセルRNAシークエンス解析を実施し、免疫チェックポイント阻害剤応答性細胞集団の解析や、当該細胞集団に発現する因子の解析を行っている。悪性黒色腫では、末梢血中CD8陽性T細胞においてSMART-seq解析を、肺がんでは末梢血単核球を対象にCITE-seq解析を行い、in silico解析を実施している。悪性黒色腫では、抗PD-1抗体奏効患者治療前末梢血中CD8陽性T細胞に存在するTSCM(T memory stem cells)様細胞集団の発現頻度が、治療効果と相関することを見出した。そこで、TSCM様細胞集団に発現する複数の遺伝子に着目して解析を行うことにした。それらのうちTSCMのマーカーの一つとして知られるTCF7との発現相関がTSCM中で高いNELL2に最初に着目し、CD8陽性T細胞での機能解析を行うことにした。当該機能解析のために、独自にNELL2ノックアウトマウスを、ゲノム編集技術を用いて作出した。最初に、NELL2ノックアウトマウスCD8陽性T細胞の遺伝子発現解析を行い、その機能解明を試みている。さらに、NELL2ノックアウトマウスとOT-1マウス(OVA-TCR 発現)の交配を行い、B16-OVA細胞に対する抗原特異的CD8陽性T細胞の有する細胞傷害性能へのNELL2の寄与の検証等を行っている。NELL2ノックアウトマウスを用いた、NELL2機能解析を行うとともに、NELL2以外のTSCM様細胞集団に発現する液性因子にも着目して解析を行うことにした。それら因子の抗PD-1抗体効果予測バイオマーカーとしての意義等を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
悪性黒色腫および肺がん抗PD-1抗体投与患者末梢血サンプルを用いたシングルセルRNAシークエンス解析を実施した。悪性黒色腫ではCD8陽性T細胞のみを対象として解析を行ったが、肺がんでは末梢血単核球すべてを対象として、CITE-seq解析をTCRレパトア解析とともに実施した。独自に作出したNELL2ノックアウトマウスCD8陽性T細胞の遺伝子発現解析により、NELL2がTSCM(T memory stem cells)関連遺伝子の発現と相関していることが明らかとなった。一方で、OT-1細胞にNELL2をレトロウィルスで過剰発現させ、そのB16-OVA細胞に対する細胞障害性をin vitroで調べたところ、細胞傷害能の亢進が認めらた。NELL2KO・OT-1マウスを用いても、T細胞の細胞傷害能に対するNELL2の寄与を検証している。これらとは別に、ヒトMART-1抗原認識T細胞を用いたin vitro細胞傷害能アッセイにおいても機能評価を行っている。In silicoデータ解析によると、ヒト肺がん腫瘍浸潤T細胞において、NELL2が活性化CD8陽性T細胞においても発現していることが認めれた。これらのことから、NELL2が多様な機能をT細胞で持つ可能性が生じた。そこで、NELL2ノックアウトマウスを用いて、さらなる詳細な検証を計画している(ノックアウトマウスにおけるがん細胞移植実験など)。これらとは別に、TSCMに発現する液性因子に着目し、ELISA系を確立して、肺がん等での抗PD-1抗体効果予測バイオマーカーとしての意義を検証している。CITE-seq解析により、CD4陽性T細胞中に、抗PD-1抗体の奏効と相関する細胞集団を新たに見出したために、それら細胞集団に特異的に発現する因子の性状解析に着手した。ただし、NELL2KOマウスコロニー拡大に時間を要し、進捗が遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
1)in vitroにおけるNELL2の機能解析。ヒトおよびマススCD8陽性T細胞を用いた抗原特異的細胞傷害性モデルを用いて(MART-1 TCR-T, OT-1, CAR-T系)、T細胞にNELL2を遺伝子工学的手法で過剰もしくは抑制発現させ、その細胞障害能への寄与度を評価する。 2)NELL2 KO・OT-1 マウスの脾臓・リンパ節よりT細胞を回収したのち、B16-OVA細胞に対する細胞傷害性を検証する。また、B16-OVA細胞担がんマウスモデルにおいて、NELL2 KO・OT-1 マウス CD8陽性T細胞(もしくはNELL2過剰発現OT-1細胞)の養子免疫療法を行う。NELL2 KOマウスにおける、NELL2の機能解析をCD8陽性T細胞でより詳細に行うとともに、NELL2 KOマウスにMC38マウスがん細胞を移植し、腫瘍形成能を野生型マウと比較し、システミックなNELL2の抗腫瘍効果を検証する。 3)ヒトTSCMに発現する分泌蛋白に着目し、肺がん抗PD-1抗体投与患者の血液でELISAを行い、その抗PD-1抗体奏効予測バイオマーカーとしての意義を検証する(追加検体での検証)。必要に応じて、新規測定系を構築する。 4)肺がんにおいて、抗PD-1抗体治療奏効患者に相関して発現するCD4陽性T細胞集団(あらたに、CITE-seqで同定)に特異的に発現する分子群の性状・機能解析に着手する。また、それらのバイオマーカーとしての意義も検証する。
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