研究課題/領域番号 |
21K07201
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
川村 宏樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20333495)
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研究分担者 |
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80377192)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 抗CD38 抗体 / 分子標的試薬 / 多発性骨髄腫 / 輸血検査 / ダラツムマブ / CD38 / 分子標的薬 |
研究開始時の研究の概要 |
再発・難治性の多発性骨髄腫の治療薬として2017年に臨床許可されダラツムマブ(DARA)は、腫瘍化で細胞上に発現するCD38をターゲットとする分子標的薬で、その効果から需要が高まっている。CD38は赤血球にも発現していため、DARA投与患者の輸血検査に干渉して偽陽性となり結果判定に影響を与え問題となっている。対処法として血球試薬のDTT処理が推奨さているが課題もあり、更なる改善が求められている。そこで本研究ではDARAがCD38の分子標的薬であることを逆手にとる発想から、CD38陽性の骨髄腫細胞株を用いて血漿からDARA(抗CD38抗体)を吸収処理で取り除く新規除去法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
【目的】多発性骨髄腫に発現するCD38の分子標的治療薬であるダラツムマブ(DARA)は、赤血球にもCD38が発現していためにDARA投与患者の輸血検査で偽陽性となり問題となっている。そこで本研究は、CD38陽性骨髄腫細胞株を用いてDARAの吸着法の確立を目指す。令和5年度は全ての検討をカラム凝集法に変更して骨髄腫細胞株の洗浄方法と吸着法の見直しを血漿にDARAを加えた模擬検体を用いておこない、その後に不規則抗体陽性FFPを加えたDARA模擬検体で検出に与える影響を検討した。 【成果】初めにカラム凝集法で抗IgGカセットをDARA陽性模擬検体で使用した結果、クームスカセットより安定してDARA濃度0.1μg/mL~100μg/mLで1+~2+の凝集強度が認められたので、研究では抗IgGカセットを使用することにした。 次に昨年までは吸着するための加温時間が3~6時間かかったので、吸着法の再検討をおこなった。その結果、CD38陽性骨髄腫細胞株(α細胞またはβ細胞)の洗浄法を変え、0.1μg/mLと10μg/mLの模擬検体量に対して同量の吸着用細胞の沈査容量を見直したところ、1時間の加温時間で1+がW+以下に凝集強度が低下した。 次にPBSで1+に調整した抗Eまたは抗Diaの陽性FFPに10μg/mLになるようにDARAを加えて作成した検体に吸着法を実施して、不規則抗体検査に与える影響を検討した。その結果、吸着法実施後にPBS-DARA(+)の対象と抗E-DARA(+)または抗D-DARA(+)を比べたところ、抗E-DARA(+)または抗D-DARA(+)に凝集強度の増加が確認され不規則抗体陽性と判定できた。 現在、予備実験の結果ではあるが低イオン強度液を使用してDARAの吸着効率および時間短縮が可能な結果を得たため、条件検討とCD38陽性骨髄腫細胞株の保存法の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画がやや遅れている原因は3つある。1つ目は昨年度に引き続きCD38陽性骨髄腫細胞株に模擬検体中のDARAの吸着条件が確定できていないことであった。「5.研究実績の概要」に記入したように令和5年度は抗ヒトIgGカセットに変更して基本的な吸着法の見直しをおこなった結果、吸着時間の短縮と安定性が大幅に向上した。しかしながら吸着効率を考えるとDARA全量を腫瘍細胞株に全て吸着でき安定性しているとは言えず、更なる検討が不可欠である。これが本研究の最重要項目なので、吸着法の検討とCD38陽性骨髄腫細胞株の改良の2面から検討をおこなう。前者は吸着率を増加させる低イオン強度液などの反応増強剤の検討をおこない、後者はCD38陽性骨髄腫細胞株の中で、更にCD38強発現の細胞の樹立を目指している。 2つ目は、CD38陽性骨髄腫細胞株の保存法の確立がされていないことである。臨床現場において、CD38陽性骨髄腫細胞株を常時培養して吸着細胞として使用するのは困難である。また細胞培養の状態によって病院ごとに差が出る可能性も高く、吸着率の低下も考えられる。そこで腫瘍細胞株を固定・保存して供給して、均一に使用できる方法を模索する。 3つ目は昨年実施予定であった吸着率の定量または半定量ができていないことである。これは1つ目と関係性が強く、吸着法の確立後でないと実施しても意味が無いと昨年度までは考えていた。しかしながら、今年度は考え方を修正する必要性がある。本研究の最重要課題の吸着率の向上、特にDARAを完全に除去できているかの確認である。そこで今年度は、吸着後の回収した上清中のDARAの抗体価の測定を凝集強度の強さ(スコア値)を求めてDARAの除去状況を判定する予定である。 以上のことより、本研究はやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の進行状況や結果を踏まえて来年度は、1.ヒト血漿中のDARAの吸着法の条件検討、2.CD38陽性骨髄腫細胞株の保存法の確立、3.骨髄腫細胞株にDARA以外の不規則抗体が吸収するか否かの検討の3つを中心に研究に取り組む。 1.ヒト血漿中のDARAの吸着法の条件検討: 吸着法の検討とCD38陽性骨髄腫細胞株の改良の2面から検討をおこなう。前者はこれまでは腫瘍細胞容量とDARA陽性模擬検体容量の比と加温時間を変更して吸着法の条件検討をおこなってきたが、これだけでは吸着に限界があるので効率が上がらず研究が進まない原因と考えた。そこで吸着を増加させる低イオン強度液などの反応増強剤の添加する検討をおこなう。後者はCD38陽性骨髄腫細胞株の中で、更にCD38強発現の細胞を樹立するためリミッティングダイリューションをおこない、フローサイトメトリーを用いて選別する予定である。 2.CD38陽性骨髄腫細胞株の保存法の確立: 臨床現場に安定的に供給できるように、腫瘍細胞株を固定・保存して使用できる方法を模索する。最も一般的に使用されている固定剤は4%パラホルムアルデヒドで、その他の一般的な溶剤には、有機溶媒のメタノール、アセトン、エタノールがあるのでCD38の抗原性が保たれる固定液があるかを明らかにする。 3.骨髄腫細胞株に対するDARA吸着率の定量または半定量の検討: 吸着法の条件検討をおこなっても吸着率を数値化しなければ、DARAが全て骨髄腫細胞株に吸着したか否か判定できない。そこで吸着後の回収した上清を用いて、DARAの抗体価の測定を抗IgGカセットでIATを実施する。その凝集強度の強さ(スコア値)を求めて、DARAの除去状況を判定する予定である。また同様の上清を新しい骨髄腫細胞株に吸着後、抗マウスIgG抗体で染色してフローサイトメトリーで未吸着のDARAがあるかを検討する。
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