研究課題/領域番号 |
21K07203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 進 愛知医科大学, 研究創出支援センター, 准教授 (70518422)
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研究分担者 |
シバスンダラン カルナン 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30557096)
小川 徹也 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40334940)
土本 純 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 助教 (70632868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | TGF-β / CCR4 / 制御性T細胞 / 細胞傷害性T細胞 / モガムリズマブ / トラメチニブ / MEK / ADCC / CTL / Treg / M2マクロファージ / CAF / TGF-b / RNAscope / regulatory T-cell / immunotherapy / cytotoxic T-cell |
研究開始時の研究の概要 |
免疫療法は、がんに対する新たな治療法として認知されるに至ったが、奏効率が20-30%と限定的であり、更なる改良や新規開発が求められている。申請者らは、主に頭頸部がん標本を用いた研究から、がん免疫抑制環境の形成に制御性T細胞(Treg)に加えてTGF-bが強く関与することを見出した。がん免疫治療のポイントは、がん免疫抑制環境の改善であり、従って、Treg制御とTGF-b阻害による併用療法が、がん治療に効果的である可能性がある。申請者らは、本研究において、がん免疫の増強に効果的なTGF-b阻害剤標的分子の探索と、阻害剤の開発を行い、さらにTreg制御との併用効果について検討する。
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研究実績の概要 |
初年度の研究で、細胞傷害性T細胞(CTL)の機能(細胞傷害,増殖,サイトカイン産生)が、TGFβ1,β3によって直接抑制されること、またTGFβR1阻害剤(SB525334)が、CTLの機能を回復させることから、TGFbリッチな腫瘍局所において、TGFbを阻害することはがん治療において効果的と考えれた。しかしながら、TGFβ存在下に抗原刺激を受けることにとって、CTL上にCCR4が強く発現することが明らかとなった。このことから抗CCR4抗体(モガムリズマブ)が制御性T細胞(Treg)除去の際、CTLも除去してしてしまう可能性が高いと思われた。今年度においては、CTL上のCCR4発現を抑制しつつ、CTLの抗腫瘍効果は減弱させない薬剤について検討した。サイトメガロウイルス(CMV)pp65抗原を疑似がん抗原として発現させた口腔癌由来細胞株HSC-3(HSC-3pp65)とpp65-CTLを様々な阻害剤及びTGFβ1存在下に共培養し、CTLの機能及びCCR4の発現を解析した。SB525334はCTL上CCR4の発現を抑制するが、部分的であり、CTLがモガムリズマブを介した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を部分的に受けることが明らかとなった。そこで、TGFβ下流非古典的経路上分子(MEK,PI3K等)に対する阻害剤を試したところ、MEK阻害剤であるトラメチニブがCCR4の発現をほぼ抑制することが見いだされた。一方、Treg上のCCR4発現は抑制しなかった。MEK経路は、T細胞受容体下流に位置することから、トラメチニブは、T細胞機能も同時に抑制される傾向にあったが、サイトカイン産生を除いては、細胞増殖、細胞傷害に対しては軽微であった。モガムリズマブとトラメチニブの2剤併用は、Tregの除去効果を保ちつつ、活性化CTLへの影響を最小化でき、より効果的なTreg標的療法となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においてTGFβが細胞傷害性T細胞機能を顕著に抑制することを示し、学会報告、論文報告を行い当初の目標を達成した。今年度は、T細胞におけるTGFβ下流経路においてT細胞機能と強く関連する分子の探索を主な目標とした。当初リン酸化解析をベースとした検討を予定したが、TGFβ存在下に細胞傷害性T細胞(CTL)を抗刺激すると、モガムリズマブの標的分子であるCCR4が活性化CTL上に高発現することが明らかとなったため、研究の中心をCTL上のCCR4発現メカニズムに移し、CCR4発現に関わるTGFβ下流分子とその阻害効果について検討した。少し研究の方向性に変更はあったものの、TGFβ下流の情報伝達経路とT細胞機能の検討という方針の流れの中での変更であり、また、今年度の成果は、学会、論文発表へとつながり、ほぼ当初の目標を達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)現在、TGFβ存在下に活性化させたT細胞において特徴的に発現が変動する分子の探索を遺伝子発現マイクロアレイにより行っており、CCR4の発現上昇とともに、数十種類の分子の発現変動が確認されている。3年度はこれら分子の中から、T細胞機能の抑制に関わる分子を特定し、阻害剤の探索を行う。
2)質量分析計(Zeno-TOF)を用いた網羅的リン酸化解析と遺伝子マイクロアレイ発現解析によりT細胞におけるTGFβ下流経路に関わる分子群を明らかとし、TGFβによるT細胞機能抑制を阻害する効果的な標的分子と阻害剤について候補をスクリーニングする。
3)2年度目の研究成果としてトラメチニブが活性化CTL上CCR4の発現を制御することによりモガムリズマブのTregに対する選択性を向上させることが示された。そこで3年度においては、この知見に基づき、まずIn vitroでトラメチニブとモガムリズマブ併用における使用濃度の最適化を図り、その上で、モデルマウス治療実験によるトラメチニブとモガムリズマブ併用によるTreg標的免疫治療の有効性について評価する。
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