研究課題/領域番号 |
21K07204
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
米阪 仁雄 近畿大学, 医学部, 准教授 (30330260)
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研究分担者 |
寺村 岳士 近畿大学, 大学病院, 准教授 (40460901)
鈴木 慎一郎 近畿大学, 大学病院, 助教 (60823614)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | KRAS / ソトラシブ / EGFR / PTPRR / MET / MEK / AKT |
研究開始時の研究の概要 |
AMG510の耐性機序の解明、さらに耐性克服治療の開発につなげることが目的。研究方法としてKRAS変異陽性でAMG510感受性肺癌細胞株H23及び同耐性株H23ARC10を用いて耐性の原因遺伝子の探索を行う。すでに網羅的な遺伝子解析によって耐性株でMET遺伝子増幅の出現を確認した(未発表データ)。現在MET遺伝子増幅が同剤への耐性をもたらすか検証中である。siRNAによるMETの選択阻害やMET阻害剤を用いた研究、In vivoでのMET阻害剤等による耐性克服治療の検討を行いたい。またKRAS変異陽性患者由来の腫瘍組織を用いてAMG510の耐性とMET遺伝子の増幅との関連も評価する予定。
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研究実績の概要 |
KRAS阻害剤ソトラシブ(AMG510)の耐性機序の解明、さらに耐性克服治療の開発につなげることを目的に本研究を継続している。第一にKRAS変異陽性肺癌細胞株H23を用いたソトラシブ耐性株の樹立、及び耐性機序の解明、耐性克服治療の研究を進めた。結果、cMET遺伝子増幅が耐性の原因であることを同定した。そしてcMET阻害剤クリゾチニブとの併用によりソトラシブ耐性が克服できることを前臨床試験で確認できた(後述のように論文発表済み)。 第二にKRAS変異陽性肺癌細胞株H2122を用いてソトラシブ耐性株を樹立。次世代シークエンサーによる遺伝子解析ではcMETを含めた二次的遺伝子変異を認めず。一方で同耐性株では親株と比べEGFR蛋白のリン酸化が亢進していた。この耐性株を用いたin vitro薬剤感受性試験を行ったところ、EGFR阻害剤セツキシマブの併用によってソトラシブへの耐性が克服された。さらにin vivoマウス移植モデルでの感受性試験においても両剤の併用はそれぞれの単剤投与と比べ、有意に腫瘍縮小効果を示した。 次にマイクロアレイによる発現解析を行ったところ、ソトラシブ感受性株H2122と比べ耐性株H2122AR14、AR30では脱リン酸化酵素であるPTPRR遺伝子の顕著な発現低下を認めた。免疫沈降実験ではPTPRR蛋白はEGFR蛋白と結合し、EGFR蛋白の脱リン酸化をもたらすことが確認できた。従ってソトラシブ耐性細胞株ではPTPRR遺伝子発現低下がEGFRの2次的な活性化をもたらし、ソトラシブ耐性の原因となっていると考えた。 以上のようにソトラシブの耐性に関する研究実績がすでにあり、以下に記述するような研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
その後にPTPRR遺伝子の発現の制御法について検討した。PTPRR遺伝子のプロモーター領域の構造から発現制御に関連するメチル化部位が同定された。このためソトラシブ感受性株、耐性株を用いて同部位についてバイサルファイト法でメチル化の評価を行った。同部位はソトラシブ感受性株H2122ではメチル化に乏しく、一方で耐性株(H2122AR14、AR30)では亢進していた。さらに追加でのクロマチン免疫沈降試験の結果、同部位にはソトラシブ感受性株H2122では転写因子FOXA1がより優位に結合しておりPTPRR遺伝子の転写を促していると考えた。また感受性株H2122でFOXA1の遺伝子をRNAi法でノックダウンするとPTPRR遺伝子の発現が抑制された。 一方、ソトラシブ耐性株H2122AR30では感受性株H2122に比べプロモーター領域のメチル化部位への転写因子TCF7L2の結合が亢進していた。このため転写促進因子FOXA1の結合が阻害されていると考えた。耐性株H2122AR30でRNAi法によりTCF7L2遺伝子をノックダウンするとPTPRR遺伝子の発現は有意に亢進した。さらにソトラシブへの感受性も高まった。追加でKRAS G12C変異を有しPTPRR発現の乏しい他の細胞株(MiaPaCa2、H358、SW1573、SW837)で同部位のメチル化を評価したところ、やはりメチル化が亢進していた。 これらの結果、肺癌ではPTPRR遺伝子のプロモーター領域のメチル化がPTPRRの発現を規定していると考えられる。現在、肺癌でソトラシブ治療症例について治療前と治療耐性後の腫瘍組織を用いてPTPRRの発現レベルの変動をmRNA ISH法、及びメチル化についてバイサルファイト法で評価を進めている。またTCGAのデータベースを用いてプロモーター領域のメチル化とPTPRR発現の関係も評価中である。
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今後の研究の推進方策 |
EGFR/PTPRR依存的なソトラシブ耐性研究は、ここまで主に細胞株を用いておこなってきた。今後は臨床での耐性克服治療への応用(診断法、治療法の開発)を目指し、臨床検体を用いた研究も進めている。臨床ではソトラシブ耐性獲得後の腫瘍組織の入手は容易ではなく、腫瘍組織だけでなく血中cfDNAも用いた研究も検討中である。将来の臨床でのソトラシブ耐性克服治療への橋渡しとなることを念頭に研究を進める。また研究論文の執筆にもとりかかっており、前臨床研究についてはすでに図表を作成済み。臨床検体を用いた研究の結果を併せて今年度中の論文投稿・発表を目指し進めている。
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