研究課題
基盤研究(C)
遺伝子変異に応じたゲノム医療は癌患者に最適な個別化治療を提供することが期待される。しかし、KRAS/p53変異膵臓癌への治療法は未だ確立していない。申請者は癌特異的にp53遺伝子を誘導するアデノウイルス製剤OBP-702を開発し、KRAS/p53変異膵臓癌細胞の腫瘍増殖を抑制することを明らかにし、臨床応用を進めている。しかし、膵臓癌細胞は解糖系と非解糖系の代謝サブタイプが存在し、非解糖系の膵臓癌細胞はOBP-702抵抗性を示すことを確認した。本研究では、OBP-702抵抗性に関与する代謝因子を網羅的に探索し、代謝調節薬剤を併用してOBP-702の治療効果を高める最適な個別化治療の開発を目指す。
遺伝子変異に応じたゲノム医療は癌患者に最適な個別化医療を提供することが期待される。しかし、KRAS/p53変異膵臓癌への治療法は未だ確立していない。本研究では、解糖系代謝の膵臓癌細胞が癌特異的に制限増殖するp53誘導性アデノウイルス製剤OBP-702に高感受性を示すことを明らかにした。さらに、ミトコンドリア代謝阻害剤の併用が非解糖系代謝の膵臓癌細胞に解糖系代謝を誘導してウイルス感受性を増強することを確認した。ミトコンドリア代謝はウイルス抵抗性を改善する治療ターゲットとなる可能性が示唆された。今後は膵臓癌の解糖系代謝を評価するバイオマーカーの開発が個別化治療の実現に重要である。
本研究の成果は、解糖系代謝が亢進した膵臓癌に対して癌特異的に制限増殖するp53誘導性アデノウイルスOBP-702を用いたp53遺伝子治療が抗腫瘍効果を発揮することを明らかにした。さらに、代謝調節剤を併用して解糖系代謝を誘導することでウイルスへの抵抗性を改善できる可能性も示した。膵臓癌に対する個別化治療の開発は膵臓癌患者の生命予後の改善につながることが期待される。
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