研究課題/領域番号 |
21K07227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
藤澤 聡郎 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (50627346)
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研究分担者 |
伊佐山 浩通 順天堂大学, 医学部, 教授 (70376458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | IL-13Rα2 / 膵癌 / 浸潤 / 転移 / 神経浸潤 / Gemcitabine / EUS-FNB / 超音波内視鏡 / 術前化学療法 / EUS-FNA / 代謝経路 / 化学療法抵抗性 / IL13Ra2 / 抗癌剤抵抗性 / 膵臓癌 / ポリフェノール |
研究開始時の研究の概要 |
我々はIL-13Rα2に注目し、本抗原が高発現している膵臓癌は抗癌剤抵抗性が高いことを突き止めた。IL-13Rα2がどのような機序で抗癌剤抵抗性を増強しているのかという問いに対して膵臓癌細胞株や動物モデルを用いてIL-13Rα2による抗癌剤抵抗性の獲得機序を検討し、ポリフェノール等のHistone acetyltransferase inhibitorを用いてIL-13Rα2の発現を抑制することにより抗癌剤抵抗性が改善するかを研究する。また、針生検で得られた膵臓癌組織検体を用いてIL-13Rα2の発現を評価することにより抗癌剤の効果を推定し、それぞれの腫瘍にあった抗癌剤の選択を提案する。
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研究実績の概要 |
我々はこれまで癌特異抗原であるIL-13Rα2をターゲットとした癌治療を開発しその効果を検討してきた(Int J Cancer. 2011 Mar 1;128(5):1221-31)。またIL-13Rα2自体が癌において浸潤や転移を促進し腫瘍の進展を助ける働きがあることを見出し報告している(Cancer Res. 2009 Nov 15;69(22):8678-85)。続けてIL-13Rα2の臨床的な影響を検討するため、膵癌手術検体でのIL-13Rα2の発現を評価し予後との相関を調べた。膵癌におけるIL-13Rα2の発現が高い群では有意に生命予後が短くなっており、IL-13Rα2が膵癌の神経浸潤と関連があることを発見した(Cancers. 2020 May 20;12(5):1294.)。これらの検討で得られた独自の知見と現在までに分かっているIL-13Rα2と悪性腫瘍の関連性をまとめて報告している(Diagnostics (Basel). 2021 Jun 23;11(7):1140)。手術前の膵癌と診断した段階でIL-13Rα2の発現を検討できないか検討するため、超音波内視鏡下針生検(EUS-FNB)で得られた生検検体を用いてIL-13Rα2の発現を評価した。微小な検体であってもIL-13Rα2の発現が評価できることを確かめた後、化学療法に与える影響を検討し、Gemcitabine-baseの化学療法を行った症例でIL-13Rα2の高発現群で有意に抗癌剤に対する反応が悪いことを見出した。(Pancreas. 2022 Oct 1;51(9):1133-1139)。膵臓癌が浸潤転移して引き起こされる閉塞性黄疸に対して効率的に治療が行える超音波内視鏡システムを開発し、その治療効果も検討して報告した(J. Clin. Med. 2024, 13(10), 2840)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの検討でEUS-FNAで得られた生検検体を用いてIL-13Rα2の発現が化学療法に与える影響を検討し、Gemcitabine-baseの化学療法を行った症例でIL-13Rα2の高発現群で有意に抗癌剤に対する反応が悪いことを見出した。更に切除標本からmRNAを抽出し、IL-13Rα2の高発現群と低発現群で浸潤・転移に関連する遺伝子発現の違いを網羅的に解析したところ、Epithelial-to-mesenchymal transition (EMT)に関わる因子のいくつかがIL-13Rα2の発現と強い相関を示すことを見出した。この解析によって得られた因子がIL-13Rα2による浸潤・転移の促進と深い関連があると考え、それぞれ因子とのの相互作用を現在検討しており、令和6年度からの新たなプロジェクトが開始された。膵臓癌の治療は従来手術が第一選択であったが、最近では術前化学療法を行い腫瘍が縮小した症例に対して手術を行う方が治療成績が良いことが分かってきた。そのため我々はIL-13Rα2の発現を膵癌診断時に評価し術前化学療法で用いる抗癌剤の選択の判断材料に使えないかを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの検討で膵癌においてIL-13Rα2が抗癌剤の効果を左右することが明らかとなっており、その機序も徐々に解明されてきた。令和6年度はこれまでの検討で得られた知見を臨床にFeedbackし術前化学療法の効果を増強し、術後の再発を抑制しうるか検討する。前年度に行った網羅的解析にて得られた結果から、IL-13Rα2に関連のある因子を絞り込んであり、それらの因子とIL-13Rα2との相互関係を検討している。また、EUS-FNAで得られた検体においてIL-13Rα2の発現を迅速に解析し、その発現量に応じて化学療法の種類と量を選択する臨床試験が進行中である。この試みにより膵癌の術後再発を減らす結果が得られることを期待している。
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