研究課題/領域番号 |
21K07255
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長田 貴宏 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00456104)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 機能的磁気共鳴画像法(fMRI) / 経頭蓋磁気刺激(TMS) / 経頭蓋超音波刺激(TUS) / 反応抑制 / 前頭前野 / 大脳基底核 / 実行機能 / TUS / 経頭蓋超音波刺激 / 皮質下領域 / 経頭蓋磁気刺激法(TMS) / ネットワーク / 機能的領域分割 / fMRI / TMS / 神経回路 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、自分自身の行動の抑制を実現する神経回路メカニズムの解明を目的としている。さまざまな脳領域が互いに連関しながら反応抑制を実現しているが、これらの領域の間でどのような神経ネットワークが形成され、またどのような情報処理の流れによって行動の抑制が実現されているかはわかっていない。本研究では、機能的MRI計測とTMS刺激介入実験を行うことにより、ヒトの反応抑制に関わる神経ネットワークを同定し、脳領域がどのようなタイミングで行動の抑制に寄与しているのか、またネットワークにおいて脳領域間でどのように情報処理が流れているのか解明する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、自分自身の行動の抑制(反応抑制)を実現する神経回路メカニズムの解明を目的としている。ヒトの反応抑制に関わる脳領域を機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging [fMRI])を用いて同定し、その脳領域間の神経回路構造を安静時fMRIや拡散MRIにより推定した。さらに、脳領域の因果性や経路内での情報の流れを検証するために、経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation [TMS])や経頭蓋超音波刺激(transcranial ultrasound stimulation [TUS])での介入により進めてきた。右下前頭皮質(特に後部腹側部)が反応抑制の実行に関与していることは知られているが、その前段階である視覚情報の入力から感覚情報の統合までの経路についてはよくわかっていなかった。そこで、fMRIと拡散MRIを駆使することで、感覚情報の統合を行う部位として島皮質前背側部を同定した。さらにTUSによる介入により、この部位の反応抑制への因果性を示した。また、下前頭皮質内のサブ領域への入力形式を明らかにした。以上の結果をまとめた論文を投稿中である(Osada et al., in revision)。 また、TUSは、大脳皮質のみならず脳深部領域に対しても可逆的に介入できる手法であり、新たな非侵入脳刺激法として広く注目を集めている。その可能性や臨床応用への展望について論じた総説論文を発表した(Osada and Konishi, Psychiatry and Clinical Neurosciences, 2024)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fMRIや拡散MRIによるイメージング法での計測、TMSやTUSによる非侵襲的介入を組み合わせ、反応抑制を実現する神経回路メカニズムの全脳レベルでの解明に向けて研究を進めてきている。具体的には、視覚情報の入力から感覚情報の統合を経て、右下前頭皮質での実行処理を行う経路を、fMRIおよび拡散MRIにより明らかにした。一次視覚野での視覚情報は、島皮質前背側部を経て、下前頭皮質後部腹側部に至ることがわかった。また、島皮質前背側部は脳深部に位置していることから、脳深部への非侵入的介入が可能なTUSを適用することで、反応抑制への因果性を明らかにした。これらにより、島皮質前背側部は、感覚情報の統合を行う場として機能していることが示唆された。さらに、島皮質前背側部から下前頭皮質のサブ領域への情報の流れをTMSとTUSを駆使することで明らかにした。以上の結果は、学術論文として投稿中である(Osada et al., in revision)。 また、TUSの持つ非侵襲的脳刺激法としての大きな可能性や臨床応用の展望についての総説論文を発表し(Osada and Konishi, Psychiatry and Clinical Neurosciences, 2024)、TUS研究を大きく進めている。 上記のイメージング手法や非侵襲的介入手法を用いた研究を進めるとともに、MRIを用いてヒト視交叉上核の日内変動による活動の変化についても報告した(Oka et al., Journal of Neuroscience, 2024)。このようにイメージング手法や、TMS・TUSの非侵襲的介入手法のそれぞれの利点をおおいに生かすことで、研究の幅を広げ、全脳レベルでの情報処理回路の解明を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
fMRIおよびTMSやTUSによる非侵襲的介入手法を組み合わせた実験を引き続き行い、大脳皮質領域間の回路だけでなく、大脳皮質-皮質下領域での神経回路も同定し、反応抑制を実現する情報処理過程を明らかにしていく。これらの成果をまとめ、学術雑誌への原著論文の投稿・発表を予定している。また、得られた成果は、プレスリリースやSNSへの投稿などを通じて、積極的に社会に発信していく。
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