研究課題/領域番号 |
21K07258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田中 慎吾 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30597951)
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研究分担者 |
川嵜 圭祐 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60511178)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 心の理論 / 脳内他者 / ECoG / 電気生理学 / ニホンザル / 化学遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、比較的認知機能の発達した実験動物であるニホンザルを用いて、インタラクティブな実験課題遂行中の神経活動をECoG(皮質脳波)電極を用いて長期間・高時空間解像度で記録する。これにより、他者の行動をシミュレートする脳領野と適応的行動選択に関連する脳領野の間における情報伝達様式について検証するとともに、その脳領域の神経活動および領域間で伝達される信号を電気刺激や化学遺伝学的手法によって操作し、他の脳領野や動物の行動への影響を検証することで、脳内他者シミュレーションを利用した適応的行動選択に対する神経ネットワークの因果的機能を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
ヒトのような複雑な社会構造を形成するためには、「心の理論」と呼ばれる、自己との相互作用によって変化する他者の心や行動を推測する能力が重要となる。しかしながら、他者の心や行動を推測することができれば自分の行動が決定できるわけではなく、自己と他者の関係や周辺環境に応じて適応的に行動を選択する必要があるが、それを実現する神経回路網についてはいまだ未解明である。本研究では、インタラクティブな実験課題遂行中の神経活動を長期間、高時空間解像度で記録することで、脳内他者シミュレーションを利用した適応的行動選択を実現する神経ネットワークについて検証する。さらに、その神経ネットワークを操作し、他の脳領野や被検体の行動への影響について検証することで、その因果的機能を明らかにすることを目指す。 令和4年度は、インタラクティブ課題遂行中のニホンザルの行動データの解析を行った。その結果、コンピュータを相手に課題を行っている際よりも、ヒトを対戦相手として課題を行っている際の方が、より対戦相手の行動を予測できることが分かった。このニホンザルに対して、ECoG電極のインプラントを行った。前頭前野外側部(LPFC)、前頭前野内側部(MPFC)、上側頭溝(STS)にそれぞれ64chの電極をインプラントした。また、新たに一頭のニホンザルに対して、インタラクティブ課題を遂行するための訓練を開始した。 令和5年度は、再度インタラクティブ課題の訓練を終えたニホンザルにECoG電極をインプラントし、ECoG信号の記録を開始する計画である。ECoG信号を解析することで、適応的行動選択を実現する神経ネットワークを同定し、さらに電気刺激実験や化学遺伝学実験を合わせて行うことで、適応的行動選択を実現する神経ネットワークの因果的役割について検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、比較的認知機能の発達した実験動物であるニホンザルを用いて、インタラクティブな実験課題遂行中の神経活動を長期間、高時空間解像度で記録することで、脳内他者シミュレーションを利用した適応的行動選択を実現する神経ネットワークについて検証するとともに、その神経ネットワークを操作し他の脳領野や被検体の行動への影響について検証することで、脳内他者シミュレーションを利用した適応的行動選択に対する神経ネットワークの因果的機能を明らかにすることを目的とする。 これまでに、本研究のために開発した課題制御記録システムを用いて、三頭のニホンザルに対して、報酬指示選択課題を遂行するための訓練を施した。報酬指示選択課題では、2つの役割(選択・指示)、2つの利害関係(対戦・協力)、2つの対戦相手の性格(正直・不正直)の組み合わせから、8種の課題条件が存在する。二頭のニホンザルについては、ヒトもしくはコンピュータを対戦相手とするインタラクティブ課題中の行動特性について検証した。その結果、ヒトを対戦相手とする方が、コンピュータを相手とする場合と比較して、より相手の行動を予測していることが明らかとなった。また、ECoG信号の記録に向けて、意思決定や他者行動に関連する脳領野である前頭前野外側部(LPFC)、前頭前野内側部(MPFC)、上側頭溝(STS)それぞれに対して、64chの電極点を持つECoG電極を設計し、開発した。さらに、一頭のニホンザルに対して、ECoG電極のインプラント手術を行い、前頭前野や上側頭溝の広範囲から神経信号が記録できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、一頭のニホンザルに対し、報酬指示選択課題の訓練を施す。対戦相手と対面しない条件で課題条件の切り替わりに応じた最適行動の切り替えが可能となった後、ヒトを対戦相手とする課題訓練を施す。訓練完了後、ヒトもしくはコンピュータを対戦相手とするインタラクティブ課題中の行動特性について検証する。 同時に、訓練を終えたニホンザルの前頭前野外側部(LPFC)、前頭前野内側部(MPFC)、上側頭溝(STS)にECoG電極をインプラントする。回復後、報酬指示選択課題遂行中のECoG信号の記録を行い、被検体の役割や対戦相手の行動、利害関係、対戦相手の有無など、課題条件に関連する脳活動を同定するとともに、デコーディング解析を行うことで、それらの情報の時空間分布について検証する。同時に、記録点ペアにおける信号間のコヒーレンスを計算することで、課題条件に関連する皮質間の機能的結合を同定する。さらに、ECoG電極を用いた電気刺激実験を行うことで、構造的接続関係について検証し、機能的結合との比較を行う。 さらに、ECoG信号の解析から同定される意思決定や他者行動に関連する脳部位に対して電気刺激を行うことで、被検体の行動に対する影響を検証し、神経ネットワークの活動と被験体の行動の間の因果関係についても検討する。また、上記の実験により同定される他者の行動をシミュレートする脳部位にDREADDであるhM4Di遺伝子を導入したのち、DREADDの特異的リガンドであるDCZを全身もしくは局所的に注入することで、DREADDが発現した神経細胞の活動を特異的に抑制する。被験体の行動に与える影響を解析し、その脳部位の脳内他者シミュレーションにおける因果的役割について検証する。 最終的に、研究成果の学会発表、論文の準備・投稿を行い、研究をまとめる計画である。
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