研究課題/領域番号 |
21K07266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
安田 正治 関西医科大学, 医学部, 講師 (90744110)
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研究分担者 |
川合 謙介 自治医科大学, 医学部, 教授 (70260924)
永安 一樹 京都大学, 薬学研究科, 助教 (00717902)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | サル / 迷走神経 / 情動 / 腕傍核 / 内受容感覚 / 認知 / 自律神経 / 眼球運動 / 外側腕傍核 / 背側縫線核 / 青斑核 |
研究開始時の研究の概要 |
情動変化には動悸、消化管収縮など種々の内臓感覚が伴う。情動と身体内部の感覚入力との関連は、長く議論されてきたが、その詳細な神経回路の理解は未だ不足している。本研究では課題遂行中のサルを用い、内臓感覚の主要な伝達経路である迷走神経の入力を受ける神経細胞を、情動に関与の深い脳幹モノアミン核において同定、その情動表現を解析する。さらに迷走神経刺激による感覚入力信号の変化が神経活動や情動関連行動にどのような変化をもたらすのかを調べ、迷走神経‐モノアミン系神経回路の情動制御の機能的役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、内臓感覚をはじめとする身体内部の感覚入力が、どのような神経機構により情動や認知行動に影響を与えるのかを明らかにすることにある。2021年度は、行動中のサルへの情動を継続的に調節するための行動課題の訓練、行動・自律神経応答の計測を行い、さらに、モノアミン系との入出力関係を持つ脳幹腕傍核の電気生理学的同定、活動記録を行った。2022年度は腕傍核における神経活動記録をさらに推し進め、多くの腕傍核神経細胞が心拍活動のタイミングによってその情動表現を変化させるという現象を見出した。これは、情動と身体感覚との融合が、身体内部感覚の脳内への入力初期において生じている可能性を示唆する。腕傍核において表現される情動情報と認知との関りを明らかにするため、腕傍核神経細胞の情動表現を認知的関与の異なる条件間で比較したところ、認知的関与の低い条件下で活動を上昇させる神経細胞が多数見出された。この結果は、上位脳領域からのフィードバック入力が腕傍核における情動処理に関与することを示唆する。 今後、こうした情動表現を持つ腕傍核の神経細胞が身体の内部感覚入力を受け取るかどうかをより直接的に検証するため、身体内部の感覚、特に内臓感覚の主要な求心性入力経路である迷走神経を電気刺激し、順行性に引き起こされる活動電位を腕傍核において計測することを計画している。2022年度では、一頭のサルに手術を行い、迷走神経刺激用の電極の設置を完了させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで脳幹のマッピング記録を単一細胞外記録によって行い、脳幹領域における情動、認知表現を広範に探索し、顕著な情動表現を示す神経細胞群を上小脳脚周辺部に見出した。結果として研究計画で記録対象としていたモノアミン系領域である青斑核、背側縫線核以外の領域である結合腕傍核からの記録を行った。ただ結合腕傍核は背側縫線核、青斑核と比較して身体内部感覚の脳内入力部のより近くに位置しており、より直接的に情動への身体感覚入力の情動への影響を検証できるという点で、この領域での神経活動計測の意義は大きいと考えられる。また結合腕傍核は背側縫線核セロトニン神経細胞からの入力、黒質緻密部ドーパミン細胞への出力経路を持ち、結合腕傍核を中心とした神経活動解析は、身体と情動の相互作用におけるモノアミン系の働きを明らかにすることに繋がる。 2022年度は、迷走神経由来の内臓感覚信号の有無を検証する手段として、迷走神経刺激電極の埋め込み手術を新たなサルに対して完了しており、身体入力を受ける結合腕傍核神経細胞の同定を行うための設備的準備は整った。 セロトニン細胞選択的に光駆動性のチャネルを発現するベクター注入については、1頭目の組織学的解析を現在行っている。またこれに加え、ネガティブコントロールとして、ウィルス感染を行っていないサルの脳標本を用い、抗体染色が非特異的に生じないことを確認する作業も現在行っている。これらの検証が完了していないため、2頭目のベクター注入には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、迷走神経の電気刺激を行うための刺激電極を埋め込む手術を1頭のサルに対して行った。今後このサルに対しての行動課題訓練を行い、種々の情動条件下で行動課題を行う2頭目の動物モデルを作成する。そして脳幹マッピングにより結合腕傍核を同定し、迷走神経からの入力を受ける腕傍核神経細胞の情動表現を解析する。これにより、身体内部の感覚入力信号と情動信号の融合を示す直接的な証拠の獲得を目指す。さらに、種々の刺激パラメーターを用いた迷走神経刺激を行動課題遂行中のサルに対して行い、情動条件依存的な行動、自律神経応答への影響を解析する。 セロトニン細胞選択的に光駆動性のチャネルを発現するベクター注入については、現在1頭目のサル脳切片の多重染色を行い、ベクター発現の細胞腫特異性の確認を行っている。またウィルス未感染のサルの脳切片に対して染色実験を行い、多重染色の結果が非特異的な結合によるものでないことを明らかにする。仮にセロトニン神経細胞への特異的な発現が充分でなかった場合は、セロトニン受容体の阻害薬/拮抗薬を結合腕傍核に注入し、モノアミン入力による結合腕傍核の情動表現や、情動条件依存的な認知行動への役割を解析する可能性が考えられる。
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