研究課題/領域番号 |
21K07270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
橋本 唯史 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 部長 (30334337)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / FUS / オリゴマー |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症など神経変性疾患では、疾患を特徴づける病因タンパク質が封入体を形成して蓄積する過程で神経細胞死が生じ、病因タンパク質は細胞間を伝播しつつ病変が拡大し、認知症や神経症状を呈する。本研究では筋萎縮性側索硬化症の病因タンパク質FUSに焦点を当て、FUSが液-液相分離を介して多量体化する分子機序を解明すると共に、多量体化FUSが封入体形成、伝播、そして神経変性に与える役割を、新たなマウス・ショウジョウバエモデルを作出して明らかにし、病因タンパク質が封入体を形成して神経細胞障害性を発揮する神経変性疾患の共通発症機序と治療標的を見出す。
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研究実績の概要 |
本研究では、FUSが多量体化して病態形成に与える影響を解明するため、特に以下の3点について研究を行っている。 ①FUSの段階的多量体化機構の分子機序解明 ②FUSの多量体化が封入体形成、及び神経細胞間伝播に与える役割の解明 ③FUSの多量体化がFUSによる神経毒性に与える役割の解明 本年度は①、②について、まずallS、あるいはCK1 delta/epsilonによるリン酸化によってFUSのTBS可溶性が上昇し、高塩緩衝液によって抽出されるFUSの程度が減少することを見出した。ショウジョウバエモデルにおいて、これらはいずれも毒性を軽減することから、FUSと可溶性喪失と神経毒性には連関があることが示唆された。さらに、前年度見出したFUSのアルギニン脱メチル化はFUSの可溶性を低下させたことから、生化学的に可溶性を失ったFUSは多量体化し、細胞間を伝播する可能性が示唆された。また、本年度新たにCyr2タグを用いて青色光依存的なFUS凝集実験系を作出するに至った。③について、ショウジョウバエモデルを用いてCK1delta/epsilonによるFUSのリン酸化を軽減するが、CK1alphaによっては軽減しないことを見出し、論文として発表した (Kishino Y, J Biol Chem, 2022)。さらにAAV9を用いて脊髄運動ニューロンにALS病因タンパク質TDP-43、FUSを発現する実験系を作出した。TDP-43の発現により、rota-rod試験で協調運動機能が低下することを見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の3つの柱それぞれについて、①研究は、FUSの重合体形成と生化学的性質を結びつけることに成功した。また本研究の遂行にかかせないCry2タグ実験系を確立することにも成功し、最終年度に重合体形成に関わる因子の同定が期待され、おおむね順調に進展している。②研究について神経細胞間伝播に関する検討が概ね完了し、現在論文投稿準備中であり、当初の計画以上に進んでいる。③研究についてAAV発現実験系の作出には成功したが、未だ重合体形成の関与が関与するか明らかではなく、やや遅れている。しかし①の検討から生化学的解析法を確立したことから、最終年度に挽回が可能である。これらから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の3つの柱それぞれについて、①研究では、生化学的性質、青色光誘導実験、PLA法を組み合わせ、さらにタンパク質化学的解析も行うことで、多量体形成の分子機序を解明する。②研究では、FUSの神経細胞間伝播に関する知見を論文化する。③研究では、作出したAAV9発現系を生化学的・免疫組織化学的解析を行うとおともに、①の成果から得られた多量体化欠失モデルを用いて毒性との関係を明らかにする。
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