研究課題/領域番号 |
21K07278
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
清水 健史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (60398237)
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研究分担者 |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00305525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オリゴデンドロサイト / ミエリン / リモデリング / 力覚 / RNAシーケンス / 張力センサー / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 力学的因子 |
研究開始時の研究の概要 |
早産児の低酸素虚血により脳性麻痺や認知障害を生じる低酸素虚血性白質障害(NWMI)では、オリゴデンドロサイト(OL)前駆細胞が選択的に傷害される。NWMIモデル動物へのOL細胞移植の研究において、脳内でのOL分化促進が解決すべき課題となっている。発達期における脳内の力学的環境は、移植細胞に影響を及ぼすが、そのメカニズムには未だ不明な点が多い。本研究では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法に基づいた張力センサープローブを導入し、OL細胞で生じる力学的因子を可視化、解析することにより、NWMIモデル脳内へ移植されたOL前駆細胞の分化・成熟を促進する方法を導出し、NMMI治療への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでに、脳内出血モデルラットに対しリハビリテーション(前肢強制使用)を行うと、皮質ー脊髄路から皮質ー赤核路への代償経路が誘導され、運動機能の回復が促進することを報告した。しかしながら、脳障害後のリハビリテーションによって運動調節系の小脳での動的な適応変化が惹起されるか否かは明らかでない。近年、オリゴデンドロサイト (OL) リモデリングが運動学習に関与し、また神経活動の亢進が髄鞘形成を調節していることが示されている。本研究課題では、OLが力学的な因子の影響も受けることを研究してきた。今回、OLリモデリングの観点から小脳の運動調節系の適応変化に着目し、前肢伸長運動による脳障害後リハビリテーションが小脳OLに影響を与えるかどうかを合わせて検討した。 脳障害モデルラットに対し前肢伸長運動のリハビリテーションを脳障害の1~8日後まで行わせると、前肢運動機能の回復が促進されることが示された。また、前肢伸長運動の実施群における小脳核では、 OL新生および CC1陽性の成熟OLが増加しており、OLリモデリングが惹起されていることを見出した。一方で、阻害剤の脳内投与により、小脳におけるOL分化・新生を抑制すると、前肢伸長運動による運動回復効果が減弱することが分かった。これらの結果から、障害された神経機能をリハビリテーションによって再構築する過程で、OLリモデリングが運動機能回復に作用したと考えられる。 また今年度は、蛍光標識した細胞をセルソーターにより精製する条件検討を行い、さらに小脳核に局在する蛍光標識細胞を実体顕微鏡下で確認しながらパンチングアウトする方法も確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、下記3つの研究計画に基づいて実施している。 (1) 張力センサーによりOL細胞で生じる「力」を可視化するシステムを構築する (2) 力学的刺激を負荷できる培養デバイスを確立し、詳細なOL力覚機構を明らかにする (3) 障害を受けた小脳において外的環境の変化に応じてOLリモデリングが惹起されるかどうかを解析する。また、「力」を可視化するライブイメージングを行い、さらに脳障害モデルラット脳内の力学的環境を操作し「力」の作用 を検証する 。その際、OL細胞内シグナルの変化を解析するために、蛍光標識したOLをセルソートし、RNAシーケンスにより網羅的に遺伝子変動をスクリーニングする。 この内、(1)については、既に完遂しており、学術雑誌への掲載も行うことができた。また(2)についても、既に培養デバイスの確立に成功している。(3)については、脳障害後の小脳において、リハビリテーションによって新生OLと成熟OLが増加することを既に見出している。また蛍光標識した細胞をセルソーターにより精製する条件検討を行い、また小脳核に局在する蛍光標識細胞を実体顕微鏡下で確認しながらパンチングアウトする方法も確立した。これらの結果を総合的に判断した結果、進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
力学的因子に応答して活性化されるOL細胞内シグナルを解析する予定である。力学的刺激を負荷できる培養デバイスを使用し、OL細胞内で変動するメカノトランスダクションをマススペクトル解析や生化学的手法により精査する予定である。また、ラット脳内の蛍光標識細胞からRNAを抽出することによりRNAシーケンスを行い、脳障害後のリハビリテーションによるOLリモデリングによって変動する遺伝子を網羅的に解析する予定である。 また、脳障害モデルラットの脳組織内においてOLが感受する「力」の作用を検証するため、張力センサーを遺伝子導入したOL前駆細胞を脳障害モデルラットと健常ラットの脳に移植する予定である。そして、障害モデルの脳スライスを作製した後、張力センサーをライブイメージングし、移植されたOL細胞で惹起される「力」を計測して、健常ラット脳へ移植した場合と比較する計画である。
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