研究課題/領域番号 |
21K07280
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石井 さなえ 杏林大学, 保健学部, 准教授 (40435863)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 鼻腔炎症 / スペクトルフローサイトメトリー / 髄膜免疫系 / 嗅球 / 末梢免疫細胞 / ミクログリア / 神経炎症 / 脳内浸潤 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性鼻腔炎症は精神神経疾患の危険因子となるがその機構は明らかではない。マウスを用いた自身の研究は、鼻腔炎症により嗅覚神経回路に沿って脳組織が損傷することを示唆した。また、鼻腔炎症急性期にはケモカインの発現増加に続いて末梢免疫細胞が髄膜及び嗅球実質に一過性に集積した後、ミクログリアが活性化した。このことから、鼻腔炎症が髄膜免疫系の活性化と末梢免疫細胞の脳内浸潤を惹起し、ミクログリアと相互作用することで脳組織微小環境を変動すると考えた。組織学的解析、サイトカイン一斉定量、qPCRを用いた遺伝子発現解析によりこの仮説を証明し、鼻腔炎症が精神神経疾患を誘導する最初期の分子細胞機構を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
慢性的な鼻腔炎症はうつ病など精神疾患の原因になりうる。その最初期の分子・細胞機構を明らかにするため、鼻腔炎症の急性期に鼻腔、嗅球、髄膜で起こる変化を組織学的、遺伝子発現的に調べた。その結果、鼻腔炎症を起こした12-48時間の間に、末梢炎症細胞が嗅球に浸潤することを見出した。今年度は、①これまでのデータをまとめて発表する、②末梢炎症細胞が髄膜にも浸潤するのかをフローサイトメトリーで確認する、③末梢炎症細胞が嗅球に浸潤する際の分子機構を明らかにする、を目標に研究を行った。①については、論文にまとめ、発表した。②については、共同研究者のミシガン州立大学のローメント博士を訪ね、鼻腔炎症を起こした24時間後の嗅球と髄膜を採取し、16種類の蛍光細胞マーカーを用いたスペクトルフローサイトメトリーを行った。その結果、嗅球における末梢免疫細胞の比率は非常に高くなったが、髄膜における末梢免疫細胞の比率はほとんど変化しなかった。髄膜のサイトカイン発現は大きく変動したことから、活性化した末梢炎症細胞が髄膜空間に浸潤したのではなく、常在している細胞が活性化してサイトカインを発現するようになったのだろうと考えた。③については、ケモカインアンタゴニストやケモカイン中和抗体をもちいて、予想していた浸潤シグナルを阻害する実験を試みた。免疫染色では浸潤末梢免疫細胞が減少したように見えたが、フローサイトメトリーでは末梢炎症細胞の減少は見られず、結果が一致しなかった。様々な工夫を凝らしながら何度も試みたが、免疫染色とフローサイトメトリーの結果のズレが解消できなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鼻腔炎症急性期に末梢炎症細胞が嗅球に浸潤する時間経過とサイトカインの発現変動について、論文にまとめて発表した。また、学会発表を行った。 チャレンジングな課題については結果が得られないものもあった。そして新たな研究課題も見つかった。 以上を総合して、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
アンタゴニストや中和抗体を用いた末梢炎症細胞の嗅球への浸潤阻害は、免疫染色で見ると阻害されているように見えたが、フローサイトメトリーでは全く阻害されないという結果になった。免疫染色とフローサイトメトリーの結果の食い違いが解決できないことから、別の方法を検討することにする。 また、鼻腔炎症に伴う髄膜免疫系の活性化は、鼻腔炎症により嗅球に神経炎症が起こった結果、老廃物や免疫細胞の排出が活発に行われるようになった可能性が考えられる。今後はその可能性についても検討する。
|