研究課題/領域番号 |
21K07293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森 琢磨 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (70545798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | CASK異常症 / 小脳低形成 / 深層学習 / マウス行動解析 / CASK / SIK1 / X染色体不活性化 / 小脳 |
研究開始時の研究の概要 |
CASKヘテロ欠損メスマウスを用いて、X染色体不活性化によるモザイク状のCASK欠損が、小脳神経細胞の生存および小脳神経回路形成に及ぼす影響を電気生理学的・解剖学的に解析する。X染色体にGFPやRFP遺伝子をもつHPRT-GFP/RFPマウスとCASKヘテロ欠損メスマウスを組み合わせることで、CASK遺伝子のX染色体不活性化状態を網羅的に可視化しunbiasedに解析する。
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研究実績の概要 |
従来、CASK異常症の臨床知見を取りまとめた研究は存在していなかった。私はCASKヘテロ欠損マウスをモデルマウスとして研究を進めているが、その機能欠損型遺伝子異常が臨床像のどれくらいの割合を反映しているのかは不明であった。そこで私はこれまでに報告されているCASK異常症臨床像の文献をまとめた。その結果、Gain of Functionと思われるCASK遺伝子異常はほとんど報告されていないこと、機能低下と思われるCASKミスセンス変異は男性で多く報告されていること、女性ではLoss-of-functionであるCASKナンセンス変異がほとんどであることが明らかになった(Mori et al. 2023)。 また、本申請課題で解析する運動機能異常を判定することを目的として、深層学習アルゴリズム、DeepLabCutを用いたビデオラベリングと、SimBAを用いた行動様式の自動分類を行った。そしてこれらのアルゴリズムを組み合わせて構築した行動解析システムをマウス行動の定量的解析に利用した。この行動解析システムは、オープンフィールドテストにおける移動距離などだけでなく、グルーミングや立ち上がり探索行動も自動で判別できることが確認された。さらに、胎児期にニコチンに暴露されたマウスの行動特徴を解析した結果、これらマウスが人で報告されているようなADHD的行動特性だけでなく、ASD的な行動特性も持っていることを明らかにした(Zhou et al. 2024)。 CASKヘテロ欠損メスマウスの小脳の組織解析について、顆粒細胞およびプルキンエ細胞の生存が生後初期のCASK遺伝子発現に依存して調節されていることを明らかにし、2024年7月に開催予定の神経科学学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画で解明する小脳の萎縮が、小脳顆粒細胞のCASK依存的な生存維持機能の有無で決まることを報告したが(Guo et al. 2023)、培養細胞系の実験でありin vivoで小脳萎縮が見られるのかは不明のままであった。そこで本計画では、CASKヘテロノックアウトマウスに、HPRT-GFPマウスを組み合わせることで、CASK発現細胞とCASK欠損細胞を組織学的に解析できるマウスを作成した。そのマウスの小脳組織を解析した結果、CASK遺伝子が欠損した小脳顆粒細胞は、外顆粒層で分裂し、内顆粒層に移動するまでは生存しているが、その後消滅していくことが明らかになった。このことから、培養細胞実験で明らかになった小脳顆粒細胞のCASK遺伝子依存的な生存が確認された。また、小脳を構成するプルキンエ細胞についても、CASK発現細胞だけが生存することが明らかになった。これらの知見は本研究計画で期待していた成果であり、現在までに目的を達成できていると考えている。本研究は学会発表しているものの、論文として発表する準備中である。最終年度はその目標の達成に注力する。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにほぼ全ての実験は完了しており、論文としてまとめ投稿する準備を進めている。令和6年度は、7月に日本神経科学学会にて研究成果を発表する予定であるが、その後論文として本研究成果を投稿する予定である。学会発表時に拝領した意見や、査読者からの意見を反映した実験を追加することで、より精度の高い研究成果を得るよう努力する。
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