研究課題/領域番号 |
21K07305
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 准教授 (70276393)
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研究分担者 |
寿野 良二 関西医科大学, 医学部, 准教授 (60447521)
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | がん性疼痛 / オピオイド / GPCRヘテロマー / 免疫組織化学 / 脊髄 / 後根神経節 / 骨がんモデルマウス / 疼痛行動 / がん疼痛 / マウス / 骨がんモデル / ヘテロマー / オピオイド受容体 / 二量体 / イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
μ/δ二量体の生体内での局在解析や生理学的機能解析は、二量体を可視化するプローブが無いことで、十分ではなかった。本研究は、がん疼痛に焦点を絞り、μ/δ二量体がどこに局在しどのような生理機能を持つかを解明する。μ/δ二量体特異的認識抗体を作製して、がん疼痛発症から完成・維持までの二量体の発現分布を追跡する。同定された二量体発現ニューロンのがん疼痛関連神経回路における生理的機能解析を、申請者が確立したin vivo脊髄標本を用いたバイオイメージング法で行う。μ/δ二量体が関わる除痛の作用機序の基礎を確立することで、疼痛緩和するリガンド創薬の一助となり、がん疼痛治療の臨床応用へとつながる糸口になる。
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研究実績の概要 |
日本では年間約99万9千人が新たにがんと診断され、約38万人ががんで死亡する。世界保健機関(WHO)によると、がん疼痛はがん患者の約80%に影響を与えるとしてがん疼痛管理の改善が必要であると強調しており、患者のQOL (quality of life)にとってがん疼痛の緩和が必要不可欠な臨床課題である。がん疼痛の最も一般的な治療法は、鎮痛剤の投与で、軽度から中等度の疼痛に対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの鎮痛剤が使用されるが、重度の疼痛にはオピオイド鎮痛剤が疼痛緩和に用いられる。モルヒネを含むμオピオイド受容体(MOR)アゴニストは、重度の急性および慢性疼痛を治療するための主要な鎮痛薬の選択肢である。それらは中枢神経系全体で発現するMORに結合する。そのために中枢副作用(せん妄・呼吸抑制・痛覚過敏など)や薬物依存症および鎮痛耐性(薬物が効かなくなる)が発現する。従って、用量を制限する必要があり臨床使用における実質的な障壁となる。オピオイドは、鎮痛耐性や副作用出現の際に他の麻薬に切り替えるオピオイドスイッチングが推奨されており、耐性や副作用を起こしにくいオピオイド受容体リガンドが求められている。 MORが他のGPCRとヘテロマー複合体を形成し、機能的相互作用を介して、従来のオピオイド鎮痛薬よりも副作用が少ない疼痛抑制の創薬の標的として注目されている。それらの中で、MORとδオピオイド受容体(DOR)の二量体(μ/δ二量体)作動薬の、CYM51010が我々の開発したがん性疼痛モデルのハイパーアルゲジアに効果があることを確認したが、MOR作動薬同様トレランスを惹起することを確認した。先行論文では、健常マウスの急性痛に対する鎮痛効果はトレランスを引き起こさないという報告をしていたが、がん性疼痛に関してはそれが当てはまらない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)μ/δ二量体特異的認識抗体作製を寿野が行っているが、二量体を形成して抗原を得ることに難航しまだ作成できていない。そこでDORの細胞外ドメインに特異性を持った抗体を作製し、市販のMOR抗体とPLA法を用いて二量体の局在を追跡することを計画しているが、そのDORの抗体作製にも難航している。世界中で信頼できる抗DOR抗体は作成されていないので、この抗体を得ることは重要であり、現在努力している。 (2)市販の抗MOR抗体を用いてがんモデルのDRGでMORの発現が増加していることは、二量体やDORに先行して明らかにした。 (3)がん疼痛モデルマウスのin vivo標本を用い、一次感覚性ニューロンの活動をDRGで、脊髄における痛み信号の入力・統合を、脊髄後角神経活動をカルシウム動態による安定した記録方法の確立を目指しているが、共同利用研究施設の多光子励起顕微鏡が故障しており、実験再開に待機中の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
μ/δ二量体特異的認識抗体作製では、DORのそれぞれ細胞外ドメインを認識する抗体作製を行い、PLA法によりヘテロマー形成を検討する。抗DOR抗体を作製した後に、μ/δ二量体特異的認識抗体作製作成に必要な抗体認識部位を探り、作製を検討する。 μ/δ二量体の局在分布をがん疼痛の発生から完成・維持まで追跡では、(1)で作製した抗体を用いてPLA法によりμ/δ二量体の局在分布を痛みを伝達する一次感覚神経の細胞体が存在する後根神経節とその中継場所である脊髄後角とで、神経トレーサーのFAST BlueやコレラトキシンBやIB4を用いた末梢神経トレースを組み合わせて詳細な解析を行う。 μ/δ二量体の個体レベルでの機能解析では、共同利用研究施設の多光子励起顕微鏡が修理出来次第、in vivo標本を用いてがん性疼痛の神経活動についての解析を行う。
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