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血球エネルギー代謝解析による認知症早期診断の開発研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K07337
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分52010:内科学一般関連
研究機関愛知医科大学

研究代表者

藤川 誠  愛知医科大学, 医学部, 助教 (90573048)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2022年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワードアルツハイマー病 / ミトコンドリア / ATP合成酵素 / GPD2 / エネルギー代謝 / 呼吸鎖
研究開始時の研究の概要

簡便・低コスト・ハイスループットに細胞のエネルギー代謝活性を測定できるMASCアッセ イ法を用いてアルツハイマー型認知症(AD)を早期に発見する方法の開発を目指す。具体的には、一般健康診断 (一般健診) で得られる全血検体から将来ADを発症するリスクとして血小板のエネルギー代謝活性の異常を検出して、早期の治療介入による認知症発症の遅延・抑制に寄与するために実施する。本研究は血小板ATP合成活性とAD病態の進行との関係について分子メカニズムを解明するとともに、 一般健診の全血検体を用いたAD早期検出法の確立を目指した基礎研究である。

研究実績の概要

アルツハイマー病 (AD) 発症モデルマウスにおいて脳内にアミロイドβ が沈着する以前に、(1) 血球のエネルギー代謝活性が亢進すること、(2) 血球の中でも血小板のGPD2 を介したATP合成活性が亢進すること、(3) GPD2 タンパク質の発現量も増加すること、などを明らかにした。
ADの発症前診断に応用するという目標を達成するために、より簡便な判定方法として、血球を分離することなく、全血の ATP合成活性を直接測定する方法を確立した。その方法を用いて、AD発症前後における野生型および ADモデルマウスから採血し、血球(白血球および血小板)由来のエネルギー代謝活性を測定している。現時点では、サンプルサイズが足りていないので統計的解析を実施していないが、中央値を見る限り、分離した血小板の時と同様の傾向が見られている。
AD発症前に血小板の GPD2 を介した ATP合成活性が亢進するメカニズムを明らかにするため、GPD2タンパク質の発現量をウエスタンブロットで解析したところ、GPD2タンパク質量が有意に増加していることが示された (前年度報告)。そこで、このGPD2タンパク質の増加が遺伝子発現の亢進によるのかタンパク質の安定性などによるのかを確かめるため、GPD2 mRNA の定量解析も試みた。しかし、現時点で qPCR解析に十分な total RNA を安定的に精製することができていない。
また、GPD2がエネルギー代謝に与える影響について検討する過程で、ヒト神経芽細胞腫由来 SH-SY5Y細胞を用いた研究から、GPD2と幹細胞性との関係性についての論文を公表した。GPD2は細胞内のエネルギー代謝様式にとって重要であり、GPD2の発現変化が幹細胞性に影響を与えることから、今後、AD発症前のGPD2の発現および活性の上昇のメカニズムを解明する上で重要な知見を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

AD発症前に血球ATP合成活性が亢進するメカニズムを解明するため、白血病患者由来の前骨芽球 (HL-60) を用いてアミロイドβや呼吸鎖阻害剤を投与して、分子生物学的な解析を行う予定であった。しかし、ATP合成活性が阻害されるとの見込みとは逆に亢進し、白血球ではなく血小板であったため、血小板のモデル系を構築することが容易ではなかった。また、血小板には貪食作用はないので、一部、血小板の前駆状態である巨核球へ分化誘導可能な培養細胞のモデル系があるものの、細胞外からアミロイドβ を投与しても細胞内への影響を見ることは困難であると予測された。
そこで、ADモデルマウスを用いて GPD2 活性亢進のメカニズムを解明するために、全血から密度勾配遠心で血小板を分取して、mRNA の発現解析を試みた。ところが、血小板は核を有さず total RNA 量が微量であるため、1匹のマウスから必要量の RNA を調製することができなかった。これらの理由から、血小板内のGPD2を介したATP合成活性亢進のメカニズムを解明するための遺伝子発現解析が実施できなかった。
次にGPD2 が翻訳後の活性調節を受けるかを調べるため、先に述べた GPD2 のノックダウン細胞に対して異所的に GPD2 を発現させた系を構築した (ただし GPD2 の活性が回復するか否かは次年度に持ち越し)。 GPD2 はグリセロリン酸シャトルとして有名でありながら構造的な解析がなされていないので、カルシウム結合ドメインと推定される領域などへの変異導入を行うための準備を進めた。

今後の研究の推進方策

マウス1匹から血小板由来 GPD2 mRNA の転写量を解析することができなかったので、5~10匹の血液をプールして定量解析することを試みる。GPD2 の発現変化が転写量変化と相関するのか否かを明らかにしたのちに、AD発症前に血球エネルギー代謝活性が亢進する現象に関する論文を国際誌に公表することを目指す。
本課題の申請時、血中に含まれる微量アミロイドβ が白血球の貪食作用により取り込まれることで、血球のエネルギー代謝が影響を受けると想定していた。しかし、貪食作用のない血小板のエネルギー代謝が有意に変化することが明らかとなった。興味深いことに、血小板はアミロイドβ の前駆タンパク質である App を発現していることが知られている。そこで、血小板の細胞内で発現したアミロイドβ が GPD2 の量だけでなく質的な影響を与える可能性についても検証する。そこで、GPD2 の異所的な発現系を構築してアミロイドβ を投与したり、App 遺伝子を過剰発現させたときの GPD2タンパク質の変化を細胞生物学的な in vitro の手法で解析して、AD発症前の GPD2 の質的な影響を解明する手がかりを探索する予定である。
血小板を用いた in vitro の実験系は、マウス大腿骨由来骨芽球から巨核球を単離したり、ヒト白血病由来 K562細胞株の巨核球系細胞への分化誘導を利用した実験を想定している。大腿骨由来骨芽球の場合は本研究で使用している ADモデルマウスを用い、K562株では App (NL-G-F) 遺伝子を異所的に発現させた亜株を作成して巨核球への分化誘導後のエネルギー代謝を調べる。これらの実験系を利用して、App (NL-G-F) 変異体の異所的発現による GPD2 を中心としたミトコンドリア機能の変化を解析する。

報告書

(2件)
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] GPD2: The relationship with cancer and neural stemness2023

    • 著者名/発表者名
      Mikeli Maimaiti、Fujikawa Makoto、Tanabe Tsutomu
    • 雑誌名

      Cells & Development

      巻: 173 ページ: 203824-203824

    • DOI

      10.1016/j.cdev.2022.203824

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] グリセロール リン酸シャトルを担う酵素はがんと神経細胞の幹細胞性に関与している2022

    • 著者名/発表者名
      藤川誠
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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