研究課題/領域番号 |
21K07355
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 日本医療科学大学 |
研究代表者 |
菅原 佳奈子 日本医療科学大学, 保健医療学部, 助教 (00551087)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | セルロース合成酵素 / バイオフィルム / 膜タンパク質 / 複合体タンパク質 / バクテリアセルロース |
研究開始時の研究の概要 |
バイオフィルムは微生物および微生物が産生する菌体外多糖(EPS)などを主成分とする膜状の構造体で、免疫系や抗菌薬から病原菌を守ることから、医療器具表面や体内組織でのバイオフィルム形成は難治性の感染症の原因として問題になっている。有効な薬剤を開発し、バイオフィルム感染症を克服するためには、主成分であるEPSの合成機序と、その合成酵素の機能や構造の情報が必要である。そこで本研究では、EPSの一種であるバクテリアセルロースの合成と排出を触媒するセルロース合成酵素複合体を対象として、その立体構造および複合体を形成するサブユニットの位置関係を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、感染症の難治化の要因であるバイオフィルムの合成機序を明らかにするため、バイオフィルムの主成分であるバクテリアセルロース(BC)の合成機構の解明に取り組んでいる。BCは細菌の細胞膜上に存在するセルロース合成酵素複合体(TC)によって合成されている。本研究ではBC合成機構の中でも特に、(1)合成されたセルロース鎖を菌体外へ排出すると推測されるBcsCサブユニットの立体構造(2)内膜のBcsABによって合成されたセルロース鎖がどのように外膜のBcsCに受け渡され、菌体外へ導かれるのか、の2点に注目して研究を進めている。 まず上記(1)について、BcsCの単離精製のため、TCを構成する主要なサブユニットにタンパク質精製用のアフィニティタグを挿入し、BcsCの精製を行った。 次に(2)について、TCにはBCの合成や輸送においてメインに機能するサブユニットの他に、機能不明のアクセサリーサブユニットが存在しており、これらがBcsABとBcsCの結合に関与する可能性が高いと考えた。そこでアクセサリーサブユニットであるBcsD、Ccp、CMCaseの3つのタンパク質を組換え発現し、これらのタンパク質同士が会合して複合体を形成するかどうかクロマトグラフィーで確認した。その結果、BcsDとCcpの組み合わせで分子質量の大きい複合体の形成が示された。さらに、主要なサブユニットであるBcsABおよびBcsCに対しても組換え発現による会合状態の確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように、本研究は、(1)合成されたセルロース鎖を菌体外へ排出すると推測されるBcsCサブユニットの立体構造、(2)内膜のBcsABによって合成されたセルロース鎖がどのように外膜のBcsCに受け渡され、菌体外へ導かれるのか、の2点を明らかにする。 (1)については進捗が遅れている。研究代表者の所属変更のため、主な研究実施場所である所属大学に膜タンパク質の精製に必須である超遠心機が配備されていない。そのため共同研究先に配備されている超遠心機を使用していたが故障し、更新の目途が立っていない。現在、借用できる施設を当たっているが、タンパク質の精製を一時的に中止せざるを得ず、研究計画全体として遅れを生じている。現在、超遠心機を借用できる施設を当たっている。そこで現在は(2)に関する研究を中心に進めている。内膜に埋め込まれた合成酵素であるBcsABから、外膜に埋め込まれた輸送装置であるBcsCまでセルロースが受け渡される機構を明らかにするため、複数のサブユニットで構成されるTCの、サブユニット間の位置関係をされたまた、セルロース合成酵素のサブユニットに対する抗体の作製に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)BcsCの立体構造の解明については、BcsCの精製のためにアフィニティタグを酢酸菌ゲノムに挿入した。酢酸菌におけるTCの発現量が少ないこと、BcsCが膜タンパク質であるために抽出に界面活性剤が必要であることから、構造解析のための結晶作製に十分な収量を得られていない。そのため、TCを高発現する酢酸菌の培養条件を検討すると共に、できる限り大量に培養して十分な収量を得ることを目指す。 (2)セルロース鎖排出機構の解明については、これまでの成果により免疫沈降による相互作用解析に必要な感度、特異性を持つTCサブユニットの抗体を得られた。また、各サブユニットの免疫沈降条件を確立した。今後は各サブユニットの抗体を用いた免疫沈降により、サブユニットと相互作用するタンパク質の候補を捕捉する。これらの候補タンパク質を抗体を用いて同定する。抗体のないタンパク質(TCサブユニットでないタンパク質)に対しては、アミノ酸シークエンスあるいは質量分析による解析を行う。
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