研究課題/領域番号 |
21K07361
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡崎 仁 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80261973)
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研究分担者 |
池田 敏之 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80322759)
三島 由祐子 杏林大学, 保健学部, 講師 (90815771)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 輸血関連急性肺障害 / 輸血副反応 / CTL2/HNA3 / 輸血関連急性肺傷害 |
研究開始時の研究の概要 |
輸血関連急性肺傷害(TRALI)を対象に、その重症化に中心的な役割を果たすことが想定されるCTL2/HNA3を標的とした分子生物学的なアプローチを用いて、病態解明、診断マーカーの開発、あらたな低減策の構築や特異的治療法開発につながる基礎的な知見を得ようと試みるものである。具体的には、以下の3項目について検討を行う。 1) CTL2/HNA3強制発現系と抗HNA3抗体を用いたin vitro TRALI細胞モデルの構築 2) CTL2/HNA3結合蛋白の検索とCTL2/HNA3細胞膜コンプレックスの解明 3) In vitro TRALI細胞モデルと患者血清を用いたTRALI発症時の活性化分子の検索
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研究実績の概要 |
CTL2/HNA3のQ154R多型(HNA3a/b)をもつレトロウィルス発現系ではCTL2/HNA3の発現量が不十分であったことが判明したため、マウス由来の細胞株ATDC5, NIH3T3にプラスミド発現系を用いてQ154R多型HNA3a/bそれぞれのCTL2/HNA3を強制発現させる高発現クローンの作出に成功した。現在これらに抗CTL2抗体を作用させin vitroのTRALI細胞モデルとしてワークさせるための条件検討を行っているが、市販の抗CTL2抗体にはマウスの内在性CTL2と交差反応するものが多く、高発現細胞特異的かつHNA3a優位にミエロペルオキシダーゼ活性を上昇させる系の確立には、さらなる検証が必要な状況である HL60細胞にC末端Halo-tagおよびMyc-tag付きのCTL2発現プラスミドを一過性に導入して発現を確認したが、導入効率が悪く十分な量のCTL2蛋白を発現させることはできなかった。そこでアデノウィルス発現系を作成しHL60細胞とヒト末梢血由来多形核細胞(好中球を含む分画)に導入し、十分な量の発現系を作成した。この系であらためて大量調製系の検討を行っている。細胞への発現系の作成に手間取ったため、CTL2/HNA3の結合蛋白同定のため、並行して酵母を用いたツーハイブリッドシステムによるライブラリースクリーニングを行った。結果として、特異的に結合する蛋白の同定に成功した。現在CTL2の機能にどのような影響を与えるのか、作成中のin vitro TRALI細胞モデルを用いて検証中である。 輸血副反応患者の残余血清の収集を継続した。症例数・検体量とも限られるため、症例数の蓄積を待って最終年度に解析に移行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTL2/HNA3aとCTL2/HNA3bの安定導入による輸血関連急性肺障害のインビトロ細胞モデル構築については、マウス由来未分化細胞株を用いた汎用性の高いモデルの構築に向けて、プラスミド発現系による高発現系の確立までは進めることができた。現在マウス内在性CTL2と市販の抗ヒトCTL2抗体との交差反応の問題の解決に手間取っているが、複数の抗体を試すとともに後述の通り関連サイトカインを同時に作用させることで、より特異的・効率的な系の構築に努めている。 CTL2/HNA3の相互作用分子について、新規結合蛋白スクリーニングのためのHalo-tag・Myc-tag付の強制発現については、発現量の問題からアデノウィルス発現系への変更を余儀なくされた。代わりに酵母を用いたツーハイブリッドスクリーニングにより、特異的な結合蛋白の情報を得ることができたため、哺乳類細胞での強制発現系など特異的機能の解析のための準備作業まで行った。 輸血副反応患者の残余検体回収作業は予定通り進捗している。 以上より研究の実施についておおむね予定通り順調に進展していると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
マウス由来未分化細胞株を用いた輸血関連急性肺障害(TRALI)のインビトロ細胞モデル構築については高発現細胞株の作出までは進めることができた。マウス内在性CTL2と市販の抗ヒトCTL2抗体との交差反応の問題の解決に手間取っているが、複数の抗体を試すとともにTRALI患者で特異的に上昇することが知られているIL8、TRALIと同様輸血後の肺水腫・呼吸不全を特徴とする輸血後循環過負荷(TACO・近年単なる循環過多ではなくTRALIとは異なった形の免疫反応がベースにあることが指摘)で上昇するIL10を同時に作用させることで、より特異的・効率的な系の構築に努める予定である。 作成したHalo-tag・Myc-tag付のCTL2/HNA3のアデノウィルス強制発現系をHL60細胞株およびヒト末梢血由来多形核細胞に導入し、抗Halo・Myc抗体を用いた免疫沈降を行う。免疫沈降で得られる蛋白の濃度が充分量となるよう条件の検討を行う。条件が確立したらLC-MS/MSによる質量分析を行いpull-down前のlysateの分析結果と比較して沈降蛋白のリストを得る。リストアップされた蛋白に対するin silico解析を行い、CTL2と結合しリガンドとして作用する可能性のある分子や細胞内シグナル伝達系を担いうる下流分子などの相互作用候補遺伝子を絞り込む。 インビトロのTRALI細胞モデルが確立した場合、ライセートを用いてTRALI患者で上昇することが確認されているIL8、TRALI患者で低下し逆にTACO患者で上昇するIL10などのサイトカイン、NFkBシグナル伝達分子の発現やリン酸化その他の活性化を確認する。細胞モデルの解析が終了したら、患者サンプルで活性化蛋白の検証を行い、呼吸不全を伴う輸血副反応患者で特異的に活性化している蛋白がないか検証し、TRALIの特異的診断マーカーの候補を得る。
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