研究課題/領域番号 |
21K07383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
澤木 正孝 愛知県がんセンター(研究所), がん予防研究分野, 研究員 (20402597)
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研究分担者 |
平 成人 川崎医科大学, 医学部, 教授 (50467734)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ケモブレイン / がん薬物療法 / 認知機能 / 高齢者機能評価 / 遺伝子多型 / 意思決定支援 / 高齢者 / 老年医学 / がん / 抗がん薬 |
研究開始時の研究の概要 |
ケモブレインは、がん治療による認知機能変化であり古くは抗がん薬投与後に生じた認知機能低下を意味したが、手術やホルモン治療などでも生じることがわかってきた。原因は特定されていない。一方、認知機能の変化は治療選択の意思決定に重要な因子である。研究代表者らは先行研究で治療開始早期でも認知機能低下の割合が約30%にみられることを発表した。そこで本研究では新規分子標的薬及び抗がん薬によるケモブレインの臨床的特徴や分子機構を解明し予測モデルを開発、どのような患者及び治療に発症するのか、その影響を軽減するために何ができるかを明らかにするための観察研究を計画した。高齢者治療最適化に向けた意思決定支援策となる。
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研究実績の概要 |
ケモブレインとは、がん薬物治療中もしくはその後に、記憶力や思考力、集中力など認知機能が低下する症状のことを指し、解明が進んでいない病態である。高齢のがん患者が増加するなか、治療前にその予測が可能となれば、個々の治療最適化につながり、治療を受け入れるか否かの意思決定支援策の一助となる。そこで本研究では、高齢がん患者に投与する抗がん薬および新規分子標的薬に起因するケモブレインについて、その特徴や分子機構を解明し、予測モデルを開発することを目的とした。 臨床研究「高齢乳がん患者の認知機能に関する多施設共同前向き観察研究. 代表者 澤木正孝, UMIN000049563」を開始した。意義は、どのような患者及びがん治療薬にケモブレインが起因するのか、その影響を軽減するために何ができるかが明らかになれば、高齢がん患者の治療前における意思決定支援につなげられ、治療を行う場合でも認知機能に関する憂いが少なく治療を受けられるようになることである。 認知機能の低下については、治療薬や合併症などの環境因子の他、遺伝的要因も考慮する必要がある。アルツハイマー型認知症の発症リスク関連遺伝子としてApoE、TREM2、SHARPIN、TYK2、SORL1、nAChRが報告されているが、これら遺伝子多型とケモブレインとの関連は検討されていない。そこで本研究では附随研究として、「高齢乳がん患者の認知機能低下に対する遺伝子多型に基づく個別化薬物療法を目指した研究(責任医師 澤木正孝, UMIN000050415」を開始した。意義は、認知機能検査に加えて遺伝子多型を調査することで、これらがケモブレインの予測因子となるかを明らかにすることである。適切な個別化医療を確立するうえで有用な情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、前向き観察研究「高齢者総合的機能評価スクリーニングツール開発のための、高齢乳がん患者を対象とした多施設共同前向き観察研究, UMIN000037454」を開始した。個々の高齢者の背景となる身体機能、併存症、栄養状態、精神状態、社会背景等からなる高齢者機能評価を行うため、背景因子と治療因子を組み合わせた研究解析が可能となる点に独自性がある。ケモブレインの原因は複数であり、抗がん薬だけではなく鎮痛剤などの支持療法や糖尿病、甲状腺、うつ病、不安感、栄養不足などの加齢による変化や併存症などが重なっている。そこで本研究では、治癒切除を行った高齢者乳がんの方を全て含めた。令和5年3月現在、約800例と症例登録は順調に進んでいる。 令和4年度は、「高齢乳がん患者の認知機能に関する多施設共同前向き観察研究. 代表機関 愛知県がんセンター, 代表者 澤木正孝, UMIN000049563」を開始した。登録を進めている。本研究では、ベースラインの認知機能検査値、治療中、治療後の値を経時的に検証し、治療群間の推移の比較を行うことにより、高齢者機能評価との関連をみながら、治療によるケモブレインの予測と対応を可能とする。さらに本研究では附随研究として、「高齢乳がん患者の認知機能低下に対する遺伝子多型に基づく個別化薬物療法を目指した研究. 責任医師 澤木正孝, UMIN000050415」を開始した。登録を進めている。本研究の意義は、認知機能検査に加えて遺伝子多型を調査することで、これらがケモブレインの予測因子となるかを明らかにすることである。適切な個別化医療を確立するうえで有用な情報となる。副次的な目的として、老年医学に関わる医療従事者との共同診療の普及を推進するため、老年医学の専門家と本研究について定期的に情報共有をした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、前向き観察研究「高齢者総合的機能評価スクリーニングツール開発のための、高齢乳がん患者を対象とした多施設共同前向き観察研究. UMIN000037454」、「高齢乳がん患者の認知機能に関する多施設共同前向き観察研究. UMIN000049563」、「高齢乳がん患者の認知機能低下に対する遺伝子多型に基づく個別化薬物療法を目指した研究. UMIN000050415」の登録を完了し、解析を行う。 調査で収集した治療前後の高齢者機能評価であるGeriatric-8、RESPECTモデル及び認知機能の評価指標である以下のデータを使用する。 A) MMSE-J (Mini-Mental State Examination-Japanese), B) MoCA-J (Instruction manual of Japanese version of Montreal Cognitive Assessment-Japanese), C) 日本語版Geriatric depression scale 15 (GDS15), D) せん妄評価CAM (The Confusion Assessment Method) E) 脳血管障害及び骨折(主に下肢、腰椎)のイベント調査, F) 内服薬の記録 主要評価項目である認知機能発症について解析を行う。解析は測定した遺伝子多型の影響と各スコアについて単変量で解析を行うことに加えて、その他認知機能低下に影響を及ぼす可能性のある要因(化学療法剤・内分泌療法剤・分子標的薬を含めた乳がん薬物療法、社会背景、併存症ならびに併存症治療薬、合併症)を含めた多変量解析を行う。副次評価項目である認知機能の変化(MMSE-J及びMoCA-Jスコア)、前頭葉機能(MoCA-J)、抑うつ(GDS15)への影響についても解析する。国際誌にて公表する。
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