研究課題/領域番号 |
21K07440
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
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研究分担者 |
土井 宏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326035)
竹内 英之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30362213)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | CANVAS / RNA foci / RAN translation / リピート病 / 病態解析 |
研究開始時の研究の概要 |
Cerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome(CANVAS)において、病的リピート(AAGGG)n, (ACAGG)n、非病的リピート(AAAAG)nのRNA発現モデル、タンパク質発現モデルを構築し、疾患特異的RNA結合タンパク質の同定、RANTについての解析を通じ、イントロンの病的リピートが引き起こす病態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome(CANVAS)は小脳失調、末梢神経由来の感覚障害、前庭神経障害を三主徴とする常染色体潜性(劣性)遺伝性疾患で、近年、RFC1イントロン領域のAAGGGまたはACAGGリピート配列の両アレル性異常伸長により発症することが報告されている。本年度は、遺伝学的に確定診断されたCANVASの病理学的特徴を評価した。両アレル性AAGGGリピートの異常伸長を有し、典型的な三主徴を呈した86歳女性および両アレル性ACAGGリピートの異常伸長を有し、三主徴に加え臨床的に運動神経障害を認めた83歳女性の2剖検例を対象とし、脳、脊髄、後根神経節、末梢神経を含めた病理学的検討を行った。両症例に共通する所見として、Purkinje細胞の消失、後索の変性、腓腹神経の大小有髄線維の消失、大腿神経の小線維を主体とする有髄線維の消失を認めた。また遺伝学的診断されたCANVAS症例としては初めて後根神経節の神経細胞の喪失とNageotte結節が確認された。前庭神経核の変性はAAGGGリピートを持つ症例でより顕著である一方、クラーク柱と下オリーブ核の変性はACAGGリピートを持つ症例でより重度であるなど、一部の神経細胞においては、両症例間で障害部位の差が認められた。もっとも顕著な相違点として、ACAGGリピートを持つ症例でのみ前根の萎縮と前角運動神経細胞の消失が観察された。また、疾患特異的RNA結合タンパク質解析、RANT産生ペプチドの凝集性の検討のためのベクター作成をすべて終了し、解析に取りかかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特にAAGGGおよびACAGGリピートという異なるリピート伸長を有する剖検例を解析できたことは,今年度の予想以上の成果であった.今後の新たな解析においても,剖検例は重要な検証材料になると考えている.また,in vitroの実験についても,基本的な準備は,ほぼ終了することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果により、AAGGGおよびACAGGリピート伸長例の病理学的所見が明らかとなり、両者に違いがみられることが明らかとなった。さらに、この剖検例を用い、昨年度に明らかにした培養細胞での実験でのRNA foci形成が、実際にヒトでも認められるかどうかを検証していく。また、すでに開始している病態関連RNA結合タンパク質の検索に加え、repeat-associated non-AUG translation (RANT) を誘発することで産生されるポリペプチドリピートタンパク質(PPRs)についての実験を進めていく。(GFP or Halo)- ((AAGGG)n/(CCCTT)n、(ACAGG)n/ CCTGT)n)、(AAAAG)n(対照)を発現させた細胞から産生されるHalo-PPRsを精製し、K2HPO4/KH2PO4バッファーに溶解し、分子クラウダーとしてのポリエチレングリコールなどを加えることにより、in vitroでliquid-liquid phase separation (LLPS)発生の有無を検討する。次に、HeLa細胞を用いPPRsの細胞内局在を詳細に検討する。さらに、核小体自体もLLPSにより生じるmembrane-less organelleであり、NPM1とrRNAの相互作用によりdropletを形成しているが、これに対してPPRsが濃度に応じてこのdropletを破壊していくかどうかをin vitroで検証することで、CANVASにおける核小体機能障害を示したい。
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