研究課題
基盤研究(C)
これまで、若年女性に好発する中枢神経系の自己免疫性疾患あである多発性硬化症(MS)の発症リスクに関連する遺伝子領域は常染色体上に限られていたが、解析手法の発展により最近X染色体上のCD40LG遺伝子領域も関与していることが示された。CD40LGは、CD40のリガンドで、両者の相互作用はB細胞の増殖や分化、免疫グロブリン産生に重要である。MSが女性に多いのは、X染色体上に位置しCD40-CD40LGシグナルに関わるCD40LG遺伝子の作用が女性においてより強固であるためである、という仮説に基づき、遺伝子発現解析とヒト白血球抗原(HLA)との関連解析を行う。
多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)は、若年女性に好発する、中枢神経系の自己免疫性脱髄性疾患である。発症には、喫煙等の環境要因の他、遺伝的要因も関与することが知られている。昨今の国際的なMSの遺伝学的研究の発展により、ゲノム上の200以上の遺伝子領域がMSの発症に関わっていることが明らかになった。これまで、解析の難しさから、対象は常染色体上の一塩基多型(SNP)に限られることが多かった。しかし、解析手法やソフトウェアの発展に伴い、性染色体上のSNPも解析可能となり、2019年には、X染色体上のSNP、rs2807267もMSの発症に関わる遺伝子領域のタグSNPとして報告された。rs2807267は、X染色体長腕に位置し、その約64kbテロメア側にはCD40LGが位置する。ImmunoBaseデータベースによると、rs2807267が周囲のどの遺伝子の機能と関連しているのかスコアリングし推定したところ、CD40LGは最も関連が強いと想定される遺伝子の一つであった。CD40LGは、CD40のリガンドであり、CD154とも呼ばれる。CD40-CD40LG相互作用はB細胞の増殖や分化、免疫グロブリン産生に重要であることが知られている。まず、MSのゲノムワイド関連解析データよりX染色体上のSNPデータの確認を行ったところ、既存のSNP解析データには欧米白人でMSの発症と関連のあったSNPは含まれておらず、中等度の連鎖不平衡にあるSNPのみ含まれていた。そこで、当該SNPについてのジェノタイピングを予定している。また、同SNP周辺領域のメチル化の状況、CD40LGの遺伝子発現についても検討を行う予定である。
3: やや遅れている
研究対象となるサンプルの抽出、研究手法の確立にやや時間を要している。
既存のデータを活用しつつ、研究分担者と共に定期ミーティングを行い、進めていく予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 8件)
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