研究課題/領域番号 |
21K07485
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
野元 謙作 獨協医科大学, 医学部, 講師 (30786976)
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研究分担者 |
神作 憲司 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60399318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | うつ病 / 慢性ストレス / マウス / 神経活動記録 / コルチコステロン / セルフケア行動 / BMI / 神経回路 |
研究開始時の研究の概要 |
うつ病の生涯罹患率は高く、現代ストレス社会において、うつ病は克服すべきコモンディジーズである。うつ病の病態生理としては、分子レベルの知見が蓄積されているが、神経回路レベルの機序解明は遅れていた。そこで、本研究では「ストレスにより、どのように神経ネットワークが破綻し、うつ病に至るのか」という問いを立てた。具体的には、うつ病関連神経回路からの縦断的多領域同時神経活動計測とクローズドループ光遺伝学的操作を組み合わせることにより、正常状態から抑うつ状態に至るうつ病神経ネットワークの破綻の機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
うつ病モデルマウス作成のため、コルチコステロン慢性投与法を使用した。具体的には、実験群にはコルチコステロン(0.1 mg/ml)を飲水(1%エタノール溶液)に混ぜて、3週間投与、対照群には溶媒である1%エタノール溶液を3週間投与した。この手法により、尾懸垂試験やショ糖選好試験で評価されるうつ状態指数が悪くなることが知られている。 うつ状態に特異的な神経活動パターンを見つけるため、ドーパミン細胞特異的にCreを発現するDAT-IRES-Cre系統マウスを使用した(DAT, ドーパミントランスポーター遺伝子)。ドーパミン細胞よりオプトタギング技術による神経活動記録を試みたが、目的の細胞を記録できる確率が低く、効率が期待したものに達しないため、別のより成功率の方法に転換することを決定した。 可能な選択肢として、局所電位かファイバーフォトメトリーという選択があった。局所電位の手技自体は簡単なものの細胞種特異的な記録ができないため、細胞種特異的な神経活動記録を可能とするファイバーフォトメトリーを使用することにし、急遽、計測系の構築を行った。方法としては、同じくDAT-IRES-Cre系統マウスを用い、腹側被蓋野にCre依存的にGCaMP6fを発現できるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを注入し、同じ場所にファイバーカニューラを刺入する。 2023年度末までに、計測系の構築は終了し、計測実験を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BMI制御によるうつ症状改善のため、ドーパミン細胞からのオプトタギング技術による神経活動計測を行っていたが、手技の難易度が高く、目的の細胞を記録できる確率が低く、効率が期待したものに達しなかったため、ファイバーフォトメトリー法に転換することを決定した。急遽、ファイバーフォトメトリー法に必要な物品を購入し、計測系の構築を行ったため、当初の計画より遅延があった。ただし、同じ系統の遺伝子改変マウスを使用できたことから、遅延を最小限にしたと考え、やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次の2つの目標を立てて、研究を推進させる。a) ファイバーフォトメトリーによる中脳ドーパミン細胞からの神経活動記録の確立、b) 中脳ドーパミン細胞の報酬予期応答に基づく弁別アルゴリズムの開発 a) ファイバーフォトメトリーによる中脳ドーパミン細胞からの神経活動記録の確立:ドーパミン細胞に特異的な分子マーカーであるドーパミントランスポーター(DAT)遺伝子にCreがノックインされている遺伝子改変マウスDAT-IRES-Cre系統を用いる。このマウスとCre/loxPシステムを使って、蛍光カルシウムセンサーGCaMPを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを黒質あるいは腹側被蓋野に注入し、DAT陽性であるドーパミン細胞にGCaMPを発現させる。古典的条件づけ行動課題を遂行させ、その時の神経活動を記録する。 b) 中脳ドーパミン細胞の報酬予期応答に基づく弁別アルゴリズムの開発:うつ病モデルマウスでは、スクロース選好性が低下することが知られており、スクロースの報酬価値が低減していると考えられる。中脳ドーパミン細胞は、外界の刺激に対する報酬予測誤差を計算し、主観的報酬期待を反映する。そこで、正常マウスとうつ病モデルマウスにおいて、水とスクロース溶液への報酬予期応答を計測する。具体的には、それぞれの液体に連合した音刺激への応答を計測し、それぞれの液体に対応する応答の分布を作成する。その後、ドーパミン神経の報酬予期応答に基づいて、正常マウスとうつ病モデルマウスを弁別するアルゴリズムを開発する。
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