研究課題/領域番号 |
21K07499
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
谷井 久志 三重大学, 保健管理センター, 教授 (40346200)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | パニック症 / 不相称性 / 遺伝子多型 / 拡散テンソル画像 / FreeSurfer解析 / ライフイベント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は以下の3点にまとめることができる。①パニック症の脳機能や心理検査指標、遺伝的要因や環境因子を不相称性の観点から整理する。②パニック症の表現型について、疾患特異的な症状経過や重症度に関与する諸因子を検討する。③脳画像の非対称性や性差・遺伝子型間の表現型の差異を統合する形で不相称性の定量化を行い、パニック症における不相称性の関与を明らかにする。以上のパニック症における疾患特有の特徴を明らかにすることによって発症機序や予防的因子の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
(1) パニック症とライフイベントの関連の検討:パニック症における抑うつ不安関連の検査や人格検査と遺伝的特性の関与について検討した。シグマ1受容体遺伝子多型とライフイベントの有無との間でNEO-PI-Rの信頼性(A1)と達成追求(C4)について有意な相互作用を認めた。シグマ1受容体はパニック症の治療薬の一つであるフルボキサミンの特異的な作用点であり、パニック症とライフイベントの関係について遺伝的因子が関与する可能性が示唆された。 (2) FreeSurfer を用いた脳皮質構造の検討:パニック症患者と健常対照被験者のMRI T1画像をから脳皮質構造の各部位の左右の非対称性指数を算出して、パニック症と健常者を比較検討した。その結果、小脳白質において、パニック症では体積が健常対照者に比べ、有意に小さい傾向があった。小脳は、恐怖や不安などの刺激に応答して適切な行動を調節する働きがあると推測され、パニック症では小脳白質の活性が低下することにより、この調節不全を引き起こす可能性が考えられた。先行研究で恐怖と右側小脳虫部の関連性の知見があるが、本研究との関連が示唆された。 (3)遺伝的因子の関与についての検討:パニック症における合併症(双極性障害、うつ病や広場恐怖症)の有無における遺伝的関与について検討した。その結果、BDNF遺伝子多型については、TCIの新規性追求と併存する双極性障害(BPD)との間に有意な交互作用がみられた。TCIの下位尺度の交互作用のうち、衝動性は双極性障害と高い相関を示した。BDNF多型のVal/Val群では双極性障害の併発時に衝動性が低く、Metキャリア群では高いことが示された。先行研究において衝動性が双極性障害の中間表現型であることが示されているが、パニック症と双極性障害の併存で衝動性が関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプルサイズとしては健常者、パニック症ともに約600例以上があり、その各々について不安感受性などの心理特性や遺伝子解析によるデータの蓄積が行なわれている。また約40例についてはMRIテンソル画像解析、FreeSurfer解析と遺伝子解析の双方を施行し、不相称性に関する検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
パニック症の発症に関わる心理社会的因子や発症後の脳内ネットワーク障害(拡散テンソル画像)や前頭葉機能異常(NIRS研究)、特にその非対称性に影響を与える遺伝的因子として各種の遺伝子多型との関連性を検討する。また遺伝的要因と心理指標との関連について因子分析なども援用することによってパニック症に関連する疾患関連要因(脆弱因子)を見出していきたい。 拡散テンソル解析、および構造画像解析としてFreeSurferによる解析を継続的に行う。本研究においてはパニック症の脳機能の不相称性に着目し、非対称性指数などを援用して定量化を行い、局所的な連関の障害とともに脳構造に疾患が与える影響についてライフイベントなどの環境因子と遺伝的因子の相互作用を含めて検討する。
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