研究課題/領域番号 |
21K07534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
児玉 亨 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (20195746)
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研究分担者 |
宮川 卓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 副参事研究員 (20512263)
嶋多 美穂子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, ゲノム医科学プロジェクト 特任研究員 (50792727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 睡眠 / 眠気 / 特発性過眠症 / オレキシン / ナルコレプシー / バイオバンク / 関連解析 / 遺伝要因 / 過眠症 / フェノムワイド関連解析 / ゲノム / 変異 |
研究開始時の研究の概要 |
日本人の過眠症の睡眠表現型に影響を与えている日本人特異的な変異を同定することを目的とする。これまで異質性の高い過眠症のサブタイプを変異という分子レベルで解明することは誰も達成できていないが、特定の表現型フェノタイプに着目したフェノムワイド関連解析(PheWAS)はこれを可能とすると考えた。これに成功すれば、将来的にゲノム情報に基づいて、それぞれの分子基盤を有する個人に対して、適切な診断を行うことが可能となる。
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研究実績の概要 |
特発性過眠症のエクソーム解析及びゲノムワイド関連解析を実施し、特発性過眠症の関連変異としてオレキシン前駆体遺伝子のクリベージサイトに位置するアミノ酸置換を伴う変異(p.Lys68Arg)を同定した。患者群におけるオレキシン前駆体遺伝子の本変異のマイナーアリル頻度(MAF)は1.67%であるのに対し、健常者群での本変異のMAFは0.32%であり、オッズ比5.36、P値2.7×10-8と有意な関連を示した。この変異の機能的な影響を検討するため、変異体と野生型のオレキシン前駆体ペプチドを用いて、切断酵素のPC1/3及びPC2による切断活性を評価した。その結果、変異体はほとんど切断されないことを確認した。切断されなかったオレキシン前駆体の受容体結合活性をin vitroで検討した結果、薬理学的活性が低いことも確かめた。 そこで、東北メディカルメガバンク機構より分譲を受けた変異情報(3.5KJPNv2及びSNPアレイ)及び調査票(生活)情報の睡眠情報等を用いた解析により、本変異の特発性過眠症リスクアリルを有する健常者の睡眠表現型に、特徴が存在するか調査した。具体的には全ゲノムリファレンスパネル(シークエンス)の3.5KJPNv2より得られた遺伝子型情報(対象症例数:1,519例)及びSNPアレイより得られた遺伝子型情報(対象症例数:14,348例)を用いて、本変異(p.Lys68Arg)と調査票(生活)情報の睡眠情報等に関連性が認められるか統計解析を実施した。結果として3.5KJPNv2及びSNPアレイの両方のセットにおいて、本変異と有意な相関を示す睡眠表現型は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東北メディカルメガバンク機構より分譲されたデータを活用し、特発性過眠症と関連したオレキシン前駆体遺伝子の変異(p.Lys68Arg)が、一般集団の被験者の睡眠表現型と関連するかを検討した。前述したように本変異との有意な相関は確認されなかった。しかし3.5KJPNv2における本変異のMAFは0.3%、 SNPアレイにおける本変異のMAFは0.04%と大きな頻度差が観察された。解析データの中で、3.5KJPNv2とSNPアレイの両方で本変異がタイピングされている症例がいるが、3.5KJPNv2とSNPアレイでタイピングの結果が不一致な症例が存在することを確認した。SNPアレイでは、本変異は直接タイピングされておらず、Imputationでの推定遺伝子型となる。これらのことから、本変異のImputationが正確でない可能性が考えられ、SNPアレイの本変異の解析結果は採用できないと判断した。また3.5KJPNv2の結果は、シークエンスされたものであることから、タイピング結果の信頼性が高いと考えられる。しかし、本変異はレアな変異であり、今回の統計解析を実施するための統計学上の十分なサンプルサイズを有していないと判断した。本変異の一般集団における評価ができなかったことから、研究はやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
特発性過眠症と有意な関連を示したオレキシン前駆体遺伝子の変異(p.Lys68Arg)は、一般集団においても確認される変異である。そのため、本変異が健常者の睡眠表現型に影響を与えているか評価する必要がある。研究代表者及び研究分担者の所属プロジェクトにおいても、健常者より客観的及び主観的睡眠データとDNAを取得していることから、今後これらを用いて評価することを考えている。その他の手段として、Imputation の本変異の遺伝子型の推定に問題があることを鑑みて、東北メディカルメガバンク機構よりDNAの分譲を受け、直接本変異の遺伝子型のタイピングをTaqman法等にて実施することも考えている。 また現時点で、オレキシン前駆体遺伝子及びオレキシン受容体遺伝子の変異スクリーニングは、前述の特発性過眠症及びナルコレプシータイプ1に関しては実施済みである。しかし、代表的な中枢性過眠症の一つであるナルコレプシータイプ2に関して、この変異スクリーニングは実施していないため、今後行う必要があると考えられる。そしてナルコレプシータイプ2と関連する変異が同定された場合も、東北メディカルメガバンク機構より分譲されたデータを活用し、健常者の睡眠表現型との関連を評価する。
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