研究実績の概要 |
これまでの研究から、神経発達症と関連するゲノムコピー数バリアント(NDD-CNV)が多数報告されている。R4年度は、双極性障害(BD)、統合失調症(SCZ)、自閉スペクトラム症(ASD)の3疾患について、NDD-CNVとの関連性を遺伝統計学的に調べた。まず、既報の知見をもとに神経発達症と関連する307領域(265のリスク遺伝子と42のCNV領域)を選択し、このゲノム領域に存在し、American College of Medical Geneticsの基準でpathogenicあるいはlikely pathogenicと判断されるCNVを抽出して、各疾患との関連性を評価した。本解析で使用したCNVデータは、BD患者1818例、SCZ患者3014例、ASD患者1205例および健常者2671例(CONT)において検出した頻度1%以下の稀なCNVである。解析の結果、NDD-CNVは、BD、SCZ,ASD、CONTにおいて4.6%,6.9%,6.7%,1.8%の頻度で認められ、3疾患のいずれとも有意な関連を示した (BD: オッズ比 = 2.9, SCZ: オッズ比 = 3.7, ASD: オッズ比 = 4.2, P値 < 1 × 10-4)。 個々のNDD-CNVとの関連では、12のCNVが3疾患のいずれかと名目上の関連を示した。具体的には、SCZと関連したCNVあるいは遺伝子は、22q11.2欠失、1q21.1欠失、47,XXX/47,XXY, DLG2,NRXN1, MACROD2であった。一方、ASDと関連したものは、CNTN6、16p11.2重複、22q11.2重複、BDと関連した遺伝子はPCDH15, ASTN2, DLG2であった。
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