研究課題/領域番号 |
21K07561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
大宝 和博 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員研究員 (20452146)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 転移性脳腫瘍 / 定位放射線照射 / 定位放射線治療 / 生物学的等価線量 / 高精度放射線治療 / 光子線 / 緩和医療 |
研究開始時の研究の概要 |
新規照射法(暫定候補案)の妥当性を既治療例の深層学習を含む包括的解析により検証し、必要な修正を加えた治療プロトコルを確立し、多施設第2相臨床試験で有用性を検証する。 既治療例の経時的画像所見に基づき標的体積の構成要素を細分化し、腫瘍壊死(1-2年以上の病変縮小~寛解相当維持)に関連する線量体積因子を生物学的等価線量(BED)として解析する。安全基準(耐容線量)確立のため、症候性脳壊死発生5%未満となる線量分割数別、脳の局在別の線量体積指標を求める。解析結果に基づき、暫定案の改善点の抽出、病変径・体積・性状・病理組織に応じて個別化された至適線量分割数、線量分布の確立、治療プロトコルを確立する。
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研究実績の概要 |
脳転移に対する定位照射単独適用例に関して、1)各施設(研究協力施設)の実際の方法の現状と2)過去5年間に報告された文献上の方法を調査した。標的定義に関し、治療計画用画像取得は治療計画CT(単純)に加え1)MRI造影T1のみ、2)T2強調像も取得、3)造影CTも取得など施設間差異が顕著だった。特にT2(あるいはFLAIR)をルーチンに取得し造影T1と対比し造影効果の程度(弱い vs 溢出顕著)を評価する必要性が示唆された。CT・MRI画像統合の精度について治療計画システム間でばらつきを認めた。統合関心領域の回転調整やMRIの歪み評価と補正(非剛体統合)が必要性が示唆された。標的定義(造影病変に付加するマージン0~2 mm)、線量分割数、標的線量不均一性(標的辺縁を中心の何%等線量でカバーするか)についての施設間差異も顕著で、照射法によって標的境界から内側にかけての線量勾配に有意差があり、肉眼的腫瘍(GTV)の辺縁線量に影響することが明らかとなった。 5病変以上(~10前後)の多発性に対し、定位照射単独の積極的適用と全脳照射先行の優先と施設間で対応に大きな差異を認めた。大きな症候性病変を有する例に対し、全脳照射後、早期に定位照射を追加(boost)する場合と1-2か月待って最大奏功時に追加を検討する場合、再増大時に救済治療として実施する場合と定位照射の位置づけに大きさ差異を認めた。全脳照射にboostで定位照射を追加する場合、辺縁線量30%減では累積の生物学的等価線量(BED)でばらつきが大きくBEDに基づく一貫性のある定位照射線量設定の必要性が示唆された。また線量分布自体は定位単独と同様の施設が大半であったが、肉眼的病変(GTV)境界でより急峻な線量勾配となる異なる治療計画(GTV線量がより不均一)が有利なことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想通り、定位照射の治療計画法(治療計画画像取得、標的定義、線量処方、線量分割、線量分布デザイン、ビーム配置、画像取得から照射開始までに要する日数)の施設間差異は顕著で、ばらつきが大きく、ひとつの病態に対して処方線量が同じでも実際には多様な治療が行われている実態が明らかとなった。ばらつきのなかに効果、安全性の観点で優劣の存在は明らかであり、優れた方法を見極める必要性が強く示唆され、本研究を進める意義が改めて再認識された。優れた方法を見出すためには、これまで一般的な治療成績の評価基準では不十分であり、新たな視点、基準の必要性が明らかとなった。1)短期の最大奏功度、症状改善度、安全性の評価と2)1年以上初期奏功が持続するか、脳壊死が治療介入を要さない程度か、観察期間に分けて異なる基準のもと評価する必要性が示唆された。 本研究の基盤となる線量処方・線量分布のデザインはこれまで2種類の装置による異なる照射技術で短期治療成績を評価したが、初年度は3機種目での評価として汎用性の高い異なるリニアック装置を用いた回転型強度変調法による再現性評価を行い概ね良好な結果を得た。特に単一照射中心設定による10病変前後までの複数病変を同時に照射する技術を採用し大幅な治療時間の短縮、患者負担軽減を実現できた。1年余りの短期治療経過は最大奏功、安全性、効果持続性いずれも標準的な治療成績を十分上回るもので、本方針の妥当性が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
標的定義に関し計画用体積(PTV)の規定法は、GTVに対し0~3 mmマージン付加と施設間差異が顕著なため、造影効果の染み出しが顕著でない定型例では造影病変を基準(GTV)と定め、その内外2 mmの領域の線量をBED(一般的なLQモデルでα/β比10)で見直す(標的辺縁の線量勾配のBED再評価)。さらに標的中心付近の線量を含め4つの階層で、治療装置・照射法の差異を問わない共通の評価基盤として治療成績との対比を進める。半年以上の画像評価が可能な症例は決して十分ではないため、1)短期の最大奏功度、症状改善度、安全性の評価と2)1年以上初期奏功が持続するか、脳壊死が治療介入を要さない程度か、観察期間に分けて異なる基準のもと評価を進める。 定位照射単独では限界のある症例(新規病変出現率高い、髄液播種リスク高いなど)において全脳照射先行では腫瘍縮小が緩徐なため症状改善に時間がかかり、むしろ腫瘍変性の進行で周囲脳浮腫が悪化し、神経症状が悪化する例も少なくなかった。従来は、全脳照射終了後に早期に定位照射による追加照射を行ってきたが、早期の十分な腫瘍縮小による症状改善、治療期間短縮など負担軽減のために強度変調法を活用し、分割定位照射を主体に全脳照射を同時に行う強度変調定位照射法の実現可能性、確立に向けて基礎的検討とともに臨床応用を進める。これまで多数で大型病変を含む場合35 Gy以上の全脳照射が多用されたきたが、晩期毒性(神経認知機能低下、白質脳症)リスクが高くなる。そのため併用する全脳照射線量は病態により25~30 Gy程度までにとどめ長期の神経機能温存にも配慮する。また頭蓋外組織(中耳、耳下腺、皮膚等)線量軽減を同時にはかり急性期毒性の軽減をはかる。
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