研究課題/領域番号 |
21K07569
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉浦 敬 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40322747)
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研究分担者 |
上村 清央 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30593652)
中條 正典 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (60727171)
熊澤 誠志 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (50363354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | MRI / 脳腫瘍 / 拡散強調画像 / 細胞形態 / 拡散異方性 |
研究開始時の研究の概要 |
腫瘍細胞の形態は、腫瘍の病理組織画像上の基本的な特徴であり、腫瘍の振る舞いや遺伝子変異とも関連する重要な情報であるが、従来の放射線画像診断法では、腫瘍細胞の形態を捉えることはできなかった。本研究ではまず、先進的なMRIであるdouble diffusion encoding(DDE)法を用いて、腫瘍細胞形態の評価が可能であることを、シミュレーションや病理画像との比較により明らかにする。その上で、DDE法の画像データから推定された腫瘍細胞形態の、脳腫瘍の鑑別診断や予後の推定、遺伝子変異の推定におけるバイオマーカとしての有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
細胞形態を反映し得る拡散強調画像法として、double diffusion encoding(DDE)法のパルスシーケンスを臨床用3T MRI装置に実装し、脳腫瘍の鑑別診断における有用性を、さらに検討した。中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、small round cell tumorの病理を示し、小さな円形の細胞が密に増生する。一方、膠芽腫は不整形の細胞からなり、これらの細胞形態の特徴の違いをmicroFAに基づいて両者を鑑別できるとの仮説を立てた。病理学的に診断された55症例(平均年齢 68.1 ± 12.4 歳)の膠芽腫と13症例(平均年齢 70.4 ± 10.7 歳)のPCNSLをDDE-MRIを用いて撮影し、腫瘍内の充実成分における平均ADC、平均FAおよび平均microFAを比較した。その結果、PCNSLのADCは膠芽腫より有意に低値であった(0.915 ± 0.154 vs. 1.232 ± 0.273 ; P < 0.001)。FAは両者に有意差を認めなかった(0.217 ± 0.160 vs. 0.161 ± 0.084; P = 0.44)が、一方、microFAは、PCNSLが膠芽腫より有意に高値であった(0.512 ± 0.143 vs 0.415 ± 0.157; P < 0.045)。2つの腫瘍を区別する診断能をROC解析で評価した結果、ADC、FA、microFAのarea under the ROC curve(AUC)は、それぞれ0.837、0.570、0.680であった。以上の結果から、DDE-MRIから得られるmicroFAのPCNSLと膠芽腫の鑑別における役割は限られていると考えられた。PCNSLと膠芽腫は、病理学的に細胞形態が異なるが、DDEによるmicroFAでの鑑別が難しかったのは、細胞外の拡散の環境の影響が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床用MRI装置に、double diffusion encoding(DDE)のパルスシーケンスを導入し、解析ソフトウエアの準備を整えた。そのうえで、臨床脳腫瘍患者の画像データを蓄積し、脳腫瘍の解析を行うことができ、初年度は膠芽腫と髄膜腫、2年目となる今年度は膠芽腫と中枢神経原発悪性リンパ腫での比較を行うことができた。今年度の結果から、microFAは細胞形態だけを反映するわけではなく、細胞外の拡散環境にも影響を受けることが考えられたため、今後さらに撮影法・解析法の工夫が必要になる。
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今後の研究の推進方策 |
脳腫瘍患者の画像データをさらに収集して、様々な脳腫瘍におけるmicroFAの測定と比較を行っていく。その結果を病理像における脳腫瘍細胞形態との比較を行い、microFAが腫瘍細胞の形態をどの程度忠実に反映するのかを明らかにしていく。今年度の結果から、より細胞外の拡散環境が結果に影響を与えることが分かってきた。より細胞内にフォーカスできる撮影法の検討も行っていく。さらに、脳腫瘍の鑑別診断や予後の推定におけるmicroFAの有用性についても検討していく予定である。
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