研究課題
基盤研究(C)
腫瘍細胞の形態は、腫瘍の病理組織画像上の基本的な特徴であり、腫瘍の振る舞いや遺伝子変異とも関連する重要な情報であるが、従来の放射線画像診断法では、腫瘍細胞の形態を捉えることはできなかった。本研究ではまず、先進的なMRIであるdouble diffusion encoding(DDE)法を用いて、腫瘍細胞形態の評価が可能であることを、シミュレーションや病理画像との比較により明らかにする。その上で、DDE法の画像データから推定された腫瘍細胞形態の、脳腫瘍の鑑別診断や予後の推定、遺伝子変異の推定におけるバイオマーカとしての有用性を明らかにする。
細胞形態の評価を目指し、先進的な拡散強調MRIであるdouble diffusion encoding(DDE)法の臨床MRI装置への実装・最適化を行い、データ解析環境を確立した。また、脳腫瘍の微小構造の特徴づけと鑑別診断における有用性を検討した。病理学的に細長い細胞から成る髄膜腫では、細胞形態が多形性を示す膠芽腫に比べ有意に高いmicroFAを認め、DDEによるmicroFAが腫瘍細胞の形態を反映する可能性が示された。転移性脳腫瘍と膠芽腫の鑑別における有用性も示された。一方、中枢神経原発悪性リンパ腫と膠芽腫の鑑別における有用性は示されず、さらなる検討と技術の改善が必要と結論された。
本研究は、腫瘍細胞の形態という、これまで注目されなかった腫瘍の特徴に着目し、先進的な拡散強調MRIの技術を用いて非侵襲的に評価することで、新たなバイオマーカ―として利用できる可能性を示した、非常に新規性の高い研究である。脳腫瘍は、依然として難治な疾患であり、診断・治療技術の進歩が望まれている。本研究では、脳腫瘍の鑑別診断における有用性を示したが、今後さらに研究を進め、治療効果や予後予測などへの応用が確立できれば、さらに大きな社会的な意義を持つ。
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