研究課題/領域番号 |
21K07572
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
吉岡 邦浩 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70210648)
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研究分担者 |
折居 誠 岩手医科大学, 医学部, 助教 (70508986)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | Adamkiewicz動脈 / 大動脈瘤 / CT / エックス線CT / 脊髄 |
研究開始時の研究の概要 |
胸部下行大動脈瘤の手術において、術後対麻痺は重篤な合併症の一つである。 それを回避するための対策の一つとして、CTを用いたAdamkiewicz動脈の術前診断が推奨されている。 しかし、その診断精度は約50%に過ぎず、その描出や評価には熟練や手間が必要で、これが実臨床で実施する場合の大きな妨げとなっている。 そこで、本研究では人工知能の技術を用いて、Adamkiewicz動脈のCT診断を支援する方法を開発し、もって術後対麻痺の回避に貢献する。
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研究実績の概要 |
・胸腹部大動脈瘤手術における術後対麻痺は重篤な合併症であるが、3~20%程度の頻度で発生している。その回避には術前のCTによるAdamkiewicz動脈の同定が有用であることが知られており、診療ガイドラインでもその実施が推奨されている。しかし、CTによるAdamkiewicz動脈の描出や評価には専門的な知識や熟練が必要であり、このことがAdamkiewicz動脈の術前評価を困難にすると同時にその普及の障害となっている。本研究の目的は、AI(artificial intelligence)の技術を用いて、非専門家や初心者であっても可能なAdamkiewicz動脈の診断を支援するシステムを開発することである。 ・臨床的にAdamkiewicz動脈の術前評価の適応となった大動脈瘤を持つ症例に対して超高精細CTを用いて撮影し、側副血行路を含めたAdamkiewicz動脈の評価を行った。Adamkiewicz動脈の診断は先行研究に倣いCPR(Curved planar reformation)画像での連続性の視覚的な4段階評価を採用した。 ・上記によりAdamkiewicz動脈が描出されていると診断された症例を対象として、Adamkiewicz動脈および前根髄質静脈のsegmentationを行いAI(深層学習)用の教師データを作成した。それをAIに学習させて検証用のデータでAdamkiewicz動脈を特定可能か調査した。 ・この作業をくり返し、教師データを増やすことで診断精度の向上を目指す。最終的にはAdamkiewicz動脈と静脈を正しく判別することでAdamkiewicz動脈を正しく診断し、次の段階としてCPR画像作成を支援する機能も持たせることを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・胸腹部大動脈瘤もしくは胸部大動脈瘤で手術が予定された30症例に対してCT撮影を行った。そして、上述したCPRの4段階の視覚評価にて上位2段階でAdamkiewicz動脈が明瞭に描出されていると判断されたのは22例であった。尚、この視覚評価は放射線診断専門医の資格をもち、30年以上の臨床経験を有する医師が行った。もし判断に迷う場合には、10年以上の経験を有する診療放射線技師との合議により判定した。 ・その22例に対して3D Slicer image computed platformを用いて、Adamkiewicz動脈と鑑別診断の対象となる前根髄質静脈のセグメンテーションを熟練者が用手的に行った。その結果、Adamkiewicz動脈は22例、前根髄質静脈は20例で画像データが得られた。 ・AIは医用画像の学習の代表的なネットワークである3D U-netを使用した。Adamkiewicz動脈周辺の領域抽出アルゴリズムを試作して評価を行った。また、動脈と静脈の判別方法として経路探索(Dijkstra法)を用いた検討も行った。 ・22例のうち17例を教師データとして学習させた。残る5例を検証症例としてAIの初期段階での診断の評価に用いた。 ・その結果、5例のうち1例であるがAdamkiewicz動脈を正しくセグメンテーションできた。この結果から、精度は高くないもののAdamkiewicz動脈の特徴的な領域(ヘアピンカーブ)をAIが学習できる可能性が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
・現時点では診断率が20%と充分ではないので、Adamkiewicz動脈のAIの教師データを追加して学習させることで診断精度の向上をはかりたい。具体的には上述した4段階評価で上位2段階の画像データを用いて、Adamkiewicz動脈と前根髄質静のセグメンテーションを熟練者が行って、それをAIに学習させる。新たに13例を追加して合計30症例での教師データの学習を当面の目標とする。胸腹部大動脈瘤あるいは胸部大動脈瘤の手術症例は年20例程度であるので、13例の新たな募集は困難である場合も想定される。その場合には過去に手術した症例のデータが利用できないか検討する。 ・2022年度の初期検証で使用した5例を用いて診断精度を再度評価する。診断精度が満足できるレベルに達していない場合は教師データをさらに増やす。この際、上述したように過去のデータの使用も考慮する。その場合でも、教師データが50例となったところで今後の方針を再検討する。診断精度は当面は60%以上を目標とする。また、AI学習の工夫の一つとして、脊柱管の抽出により骨構造と血管の区別を加えて学習させる手法も考慮する。また、検証用のデータの追加も検討する。 ・これと平行してCPR画像作成の支援方法も検討する。 ・これまでの研究成果を学会や論文等で発表し情報を公開する。
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