研究課題/領域番号 |
21K07607
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高橋 昌哉 順天堂大学, 保健医療学部, 教授 (80898982)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | MRI分子イメージング / 化学交換飽和移動 / ミエリンマップ / CEST / Ultra-short TE / Myelin Mapping / Metabolic imaging / Ultra-short TE (UTE) / Myelin mapping |
研究開始時の研究の概要 |
プロトン(H1) MRIによる髄鞘マッピングの報告はあるが、髄鞘の構成成分に直接関連するH1は横緩和(T2, T2*)が非常に短く通常の撮像法では本来検出が困難である。本研究では、我々がこれまで開発してきた短いT2,T2*を持つH1を検出可能なMRI法と組織の特定代謝物情報を検出可能なMR分子イメージング法を組み合わせ、より髄鞘の状態に選択的で鋭敏な新たな定量マルチパラメトリック髄鞘マッピング法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究計画では、何れも一般臨床では確立していないUTE法と、現在世界中で注目される手法の一つである分子・代謝イメージング法(CEST法)を組み合わせた世界でも殆ど報告のない新規MRI手法の開発と、原理上本手法でしか観測できないT2値が極端に短い髄鞘の代謝機能を定量評価しintegrityを診断することを目的としている。研究初年度では、組み合わせる二つの手法とも既存のMRI装置では実施できなかったが装置メーカーとの共同研究も含め、それぞれの手法を開発、MRI信号の取得に成功した。その後手法毎に試験管(ファントム)を用い、CESTで観察可能と報告のある代謝物のCEST信号に与える要因を各々の周波数のchemical shiftを示す分子内の1Hを持つ物質のT1、pHを調製、水溶液で定量することに成功した。UTE-CEST法でも、生体内で各々周波数で示す分子内の1Hを持つ上記物質の信号の取得が可能となった。CEST法では、preparation pulseの印加時間、強度を変化させ撮像しMTR asymmetryによりCEST信号を定量評価した。 これらのファントムを用いた実験により、定量性を高めるべくMRI信号の取得法・解析法の改良を行った。これと同時に2つの手法を組み合わせる本来の目標であるUTE-CEST法の技術的開発を進め稼働を実現した。この手法の定量性評価のため複雑な構造の脳内の髄鞘への応用の前に髄鞘同様T2値が極端に短かく、よりサイズが大きく均一なアキレス腱を対象に研究を進めた結果、健常人においてUTE-CSTによりこれまで不可能であった腱のMRI信号を取得・代謝解析が可能となった。これらの実績により、脳内の髄鞘および腱を構成する成分の疾病・傷病における病態変化の検出・評価の可能性が世界で初めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように順天堂大学では、当初CEST法が稼働するMRI装置がなかったため、2つのMRI装置メーカー (シーメンス、キヤノン)との共同研究契約の締結から始め、まずMRI信号取得までの技術開発、さらにその信号を用いた解析法、定量法の開発に予定よりも時間を要したことが最大の遅れの原因だと考えている。漸くデータ取得・定量性の至適条件を行うことができたことからのno cost extensionにより本年度の研究継続が可能となったことから、臨床データの取得を進め開発した本手法の臨床的有用性を検証する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、短いT2、T2*を持つH1を検出可能なMRI法(Ultra-short TE: UTE)と組織の特定代謝物情報を検出可能な新規MR分子イメージング法である化学交換飽和移動 (chemical exchange saturation transfer: CEST)を組み合わせ、より髄鞘の状態に選択的で鋭敏な新たな定量マルチパラメトリックMRI法を開発することである。髄鞘からのCEST信号解析は、その空間分解能が小さいため、先ず初めにクレアチンの信号、グルコースの信号を対象に、より大きな筋肉、また髄鞘と似たT2*値を持つ腱・靱帯で生体組織での定量性の確認を行う。preparation pulseの印加時間・強度による変化の割合は物質の特性、また試験管内とは異なるため生体での最適化も行う。化学交換時間の速度の計測の重要性と、それらの結果を基に、脳内CEST信号の条件による変化を補正法・解析法を開発研究を進めている。現在、これまで世界で報告の殆ど無い腱での信号を取得に成功しているので、これを使った代謝機能の測定を始める。
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