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X線および炭素線が水中に生じる高濃度過酸化水素クラスターの状態および反応性

研究課題

研究課題/領域番号 21K07634
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分52040:放射線科学関連
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

松本 謙一郎  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, グループリーダー (10297046)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード重粒子線 / 高濃度過酸化水素クラスター / 間接効果 / 酸化傷害 / 炭素線 / X線 / 酸素非依存的過酸化水素生成 / 酸素 / 過酸化水素クラスター / 炭素イオン線 / レドックス反応
研究開始時の研究の概要

放射線の間接効果の主要因は、水由来の活性種の中でも特に酸化反応性の高いヒドロキシルラジカル(OHラジカル)と考えられており、反応性の低い過酸化水素(H2O2)は重要視されていなかった。しかしながら、極めて密なOHラジカルの生成に伴って高濃度H2O2クラスターの生成が確認された。濃度の高いH2O2は酸化力も高く、細胞内に生成した場合には、生物影響の引き金となる可能性が高い。しかもこの状態は、比較的長時間、存在すると予想できる。そこで本研究では、X線および炭素線が水中に生じる高濃度H2O2クラスターの状態の詳細を調べるとともに、その反応性について検討し、生物影響への関与を検証する。

研究実績の概要

本研究は、X線および炭素線が水中に生じる高濃度過酸化水素(H2O2)クラスターの状態の詳細を調べるとともに、その反応性について検討し、生物影響への関与を検証する。放射線の生物影響は主に、水の放射線分解により生じる活性種により生じる(間接効果)と考えられ、その主要因は、水由来の活性種の中でも特に酸化反応性の高いヒドロキシルラジカル(・OH)と考えられてきた。一方、比較的反応性の低いH2O2は、これまであまり重要視されていなかった。しかしながら、極めて密な・OHの生成に伴って高濃度のH2O2がクラスター状に生成することが確認され、その反応性が憂慮される。濃度の高いH2O2は酸化力も高く、そのような状態が細胞内に生成した場合には、その周囲の物質への酸化的障害の引き金となる可能性が高い。しかもこの状態は、拡散して濃度が薄まるか、あるいは集団として何かと反応してしまうかするまで、比較的長時間、存在すると予想できる。そのため、この高濃度H2O2クラスターが放射線生物影響の要因となっている可能性がある。
2021年度は、炭素線が大気下および低酸素条件下で水中に生じる過酸化水素クラスターの状態について調べた。
2022年度は、H2O2が濃度に依存してDNA切断活性を示すこと、および低酸素条件でそれが増強されることを明らかにした。
2023年度は、高濃度H2O2クラスター生成に対する抗酸化物質あるいは抗酸化酵素の影響の評価を試みた。しかしながら重粒子線照射施設のマシンタイムが大幅に削減され、充分なデータを得ることができなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2021年度は、炭素線が大気下および低酸素条件下で水中に生じる過酸化水素クラスター間距離を測定した。X線が大気条件下で生じるH2O2クラスター間距離は40~50 nmと評価されたが、炭素線の場合はこれよりも短く、18~20 nmであった。低酸素条件下では、X線の場合も炭素線の場合もH2O2クラスター間距離は同程度で、80~100 nmと評価された。溶存酸素がH2O2クラスターの生成状態を変化させることが分かった。炭素線のLETが増大するに伴い、クラスターの数が減少することが予想された。
2022年度は、H2O2が濃度に依存してDNA切断活性を示すこと、および低酸素条件でそれが増強されることを明らかにした。大気条件下ではH2O2は、10 mM以上の濃度でDNA切断活性を示したが、低酸素条件下では1 mMのH2O2でもDNA切断活性が見られた。また各濃度のH2O2のDNA切断活性は大気条件よりも低酸素条件で増加した。X線および炭素線による線量当たりのDNA切断量は、LETの増加とともに減少したが、カウント(あるいは照射時間)当たりの切断量に直すと80 keV/μm辺りのLETで最大となった。またX線および炭素線によるDNA切断量も低酸素条件で増加しており、高濃度H2O2クラスターの関与を裏付ける知見を得た。
2023年度は、高濃度H2O2クラスター生成に対する抗酸化物質あるいは抗酸化酵素の影響を調べる予定であったが、電気料金の高騰に伴い重粒子線照射施設のマシンタイムが大幅に削減され、充分なデータを得ることができず、結論を得るに至らなかった。

今後の研究の推進方策

高濃度過酸化水素クラスター間距離の評価結果について再現性を確かめる。高濃度過酸化水素中での酸素の挙動を明らかにする。放射線によるDNA切断とH2O2のDNA切断の制御を試み、反応の共通点を探る。抗酸化物質、あるいは抗酸化酵素の共存下で同様の実験を行い、これらが高濃度H2O2クラスターの生成間隔あるいは量に影響を及ぼすか否かを調べる。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Effects of selenium deficiency on biological results of X-ray and carbon-ion beam irradiation in mice2023

    • 著者名/発表者名
      Ueno Megumi、Shibata Sayaka、Nakanishi Ikuo、Aoki Ichio、Yamada Ken-ichi、Matsumoto Ken-ichiro
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition

      巻: 72 号: 2 ページ: 107-116

    • DOI

      10.3164/jcbn.22-57

    • ISSN
      0912-0009, 1880-5086
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Importance of Locations of Iron Ions to Elicit Cytotoxicity Induced by a Fenton-Type Reaction2022

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Kintaro、Shoji Yoshimi、Sekine-Suzuki Emiko、Ueno Megumi、Matsumoto Ken-ichiro、Nakanishi Ikuo、Fukui Koji
    • 雑誌名

      Cancers

      巻: 14 号: 15 ページ: 3642-3642

    • DOI

      10.3390/cancers14153642

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Simplifying quantitative measurement of free radical species using an X-band EPR spectrometer2022

    • 著者名/発表者名
      Makino Yusuke、Ueno Megumi、Shoji Yoshimi、Nyui Minako、Nakanishi Ikuo、Fukui Koji、Matsumoto Ken-ichiro
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition

      巻: 70 号: 3 ページ: 213-221

    • DOI

      10.3164/jcbn.21-83

    • NAID

      130008134392

    • ISSN
      0912-0009, 1880-5086
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 重粒子(炭素)線が水中に生成する高濃度過酸化水素クラスターの初期状態の解析2023

    • 著者名/発表者名
      松本謙一郎, 上野恵美, 荘司好美, 伊藤紘, 中西郁夫
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Initial Molecular Geometry of Radiation-Induced Reactive Species in Water2021

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Ken-ichiro、Ueno Megumi、Shoji Yoshimi、Nakanishi Ikuo
    • 学会等名
      The Society for Redox Biology and Medicine's 28th Annual Conference (SfRBM 2021)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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